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踏み出せなかった就活、阻んだ性の悩み

トランスジェンダーの彼女の前に立ちはだかった壁

2017年6月30日(金)

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 首都圏某所にある、LUSH(ラッシュ)店内。甘い香りが漂い、野菜やフルーツ原料のフェイスマスクや、バスグッズなどが並んでいる。ラッシュはイギリス生まれの自然派化粧品ブランド。日本国内には約100店舗ある。

 店内では、若い女性従業員数名が接客をしている。その中に、23歳のAさんはいた。

 「お待たせしました。接客が長引いてしまって申し訳ありません」

 待ち合わせ時刻ぴったりだったが、店舗の入り口で待つ記者に、申し訳なさそうに声をかけてくれた。

 ロングヘアで明るい髪色。流行の太眉に、ぱっちりとした目。今どきの若い女性だ。

ラッシュ店舗の外観

エントリーシートも書けないし、説明会にも行けない

 Aさんは、男性の身体に生まれた。

 中高生の時期から、女性であることへの憧れがあった。男子の制服を着ていたが、髪の毛を伸ばしてボブスタイルに。好きになる対象は男性だった。

 大学に入ると、自分と同じような人に出会った。その頃から、Aさんの見た目も変わっていく。メイクをし、女性の服を着始めた。

 見た目は変化していったが、周りの友人たちは変わらず仲良くしてくれた。Aさんは仲の良い友人たちに、一人ひとりカミングアウトを始めた。「やっと言ってくれたね」「知っていたよ」温かい言葉をかけられ、居場所ができた、と感じた。

 地元の友人や、アルバイト先の友人にもカミングアウトした。皆受け入れてくれた。

 21歳のとき、両親にカミングアウトした。両親が、自分のような人に良い印象をもっていないのは知っていた。母親からは「受け入れられない」と言われた。着けていた女性向けの下着が見当たらなくなった。母親が没収していた。

 大学3年生の冬がきた。周りの友人は就職活動を始めた。しかしAさんはできなかった。

 「エントリーシートが書けないんです」

 Aさんの身体は男性だが、女性として生活している。女性として生きていきたいのに、男性の欄に〇をつけなければならないのがつらかった。

 「説明会にも行けませんでした。男性用のスーツを着るのに抵抗があったんです」

 男性の欄に〇をつけ、男性用のスーツを着て就活する……。その姿を想像すると、一歩踏み出せなかった。

 Aさんが動けずにいる中でも、周りはどんどん動き出す。

 焦りを感じたAさんは、「LGBT 寛容な会社」というキーワードで、インターネット検索してみた。LGBTとは、レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーの頭文字をとった性的マイノリティの総称だ。ヒットしたのは大企業ばかりだったが、その中にラッシュを見つけた。

 調べていくうちに、「WE BELIEVE IN LOVEキャンペーン―LGBT支援宣言―」など積極的なLGBT支援キャンペーンを行っていることが分かった。LGBT社員への支援制度も整っており、同性間のパートナーにも結婚祝い金や結婚休暇を付与すると規定している。取り組みが具体的だと感じた。

コメント5件コメント/レビュー

私は自身の性が中性であると認識している。
身体は女性であるけれど、心は女性でもあり男性でもあるため
性別の選択欄や記入欄は撤廃して欲しいと常々思っている。(2017/07/02 15:53)

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「踏み出せなかった就活、阻んだ性の悩み」の著者

白井 咲貴

白井 咲貴(しらい・さき)

日経ビジネス記者

2017年3月大学卒業、大学では国際政治学を専攻。同年4月、日経BP社に入社。日経ビジネス編集部に配属され、旅行・レジャー・ホテル業界、家具・雑貨専門店を担当している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

私は自身の性が中性であると認識している。
身体は女性であるけれど、心は女性でもあり男性でもあるため
性別の選択欄や記入欄は撤廃して欲しいと常々思っている。(2017/07/02 15:53)

息子(学生)が親しくしている同級生の一人にLGBTの人がいる。見た目
は男性で心は女性のトランスジェンダーで、服装や髪型は男性のまま、言葉使いは女性というタイプだ。
息子の話をきいていると、この人はコミュニケーション能力が高く、穏やかな性格だが正義感が強い、という、LGBTでなければ就職活動等の面接では上位に来そうなタイプである。
しかし、就職活動はうまく進まない。
息子が中学生の時後輩にいたLGBTの人(この人は限定的な相手にしかカミングアウトしていなかった)も人一倍気配りができて、芯がしっかりした人だった。
LGBTの人が皆優秀な人ばかりというつもりは毛頭ないが、彼らの多くはいつも自分と向き合い、他人を見つめ、人のあり方を考え続けており、弱者の痛みを知っている。
こういう人を採用の目からこぼしてしまうのは、企業にとっては潜在的損失というえるのではないかと思う。(2017/06/30 12:02)

男性の身体に生まれて好きになる対象は男性。偏見承知であえて指摘しますが、身体の性と心の性が一致している大多数? 側から見ると、社内や取引先のノーマルな方相手に恋愛トラブルを起こされると庇いきれません(セクハラ対策だけでも大変なのに、確信犯は論外です)し、彼らにパートナーは仕事場と関係ない所で探すだけの覚悟があるのかは知りたいところですね。労働力人口が不足する中、本当にその企業の戦力になるのならば、LGBTでも能力優先で採用されるケースは増えるだろうが、トイレや更衣室の問題だけでなく、長期間働き続けて貰おうと思えば、その方がどんなキャリアやライフスタイルを描いていきたいのか、ノーマルな方以上に強い意思を示してくれないと、雇う側も戸惑うことになるかと思います。(2017/06/30 11:37)

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三品 和広 神戸大学教授