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ボタン、ランドセル…潰れないニッチ店の秘密

顧客にNOと言わない売り方

2016年7月8日(金)

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 最近「何をやっても潰れる立地」を取材した。短期間で店が入れ替わってしまう立地のことだ。読者の皆様も「また店が変わった」と思い浮かべる立地があるだろう。取材するきっかけとなったのが、とある焼肉店。食中毒を起こして閉店した立地に、次もまた焼肉店がオープン。長続きせず閉店したものの、またも新たな焼肉店が開業した。現在もあまり繁盛していないという。

 一般的にこの立地で焼肉店は難しいと思うが、出店者はそう考えないらしい。すでに機器がそろい、初期投資を抑えられるからというのが主な理由のようだ。独立を支援するメントレプレナージャパンの矢田裕基社長は「出店者は自分の腕を過信し『自分ならできる』と考える傾向にある。悪い立地を良いように解釈してしまう事が多い」という。こうしたマーケティング視点の欠如が潰れる立地を生んでいる。

 実はその前に取材していたのが「潰れない店」だった。地方に出かけると、元気がない商店街をよく見かける。車社会となり、幹線道路に大型店ができて消費者の流れが変わり、昔ながらの商店街はシャッターが閉まったままの店が増えている。後継者不足も重なり、廃業に追い込まれる店が少なくない。

 まさに潰れそうな立地にもかかわらず、ガッチリと固定客をつかんでいる店があった。失礼な話ではあるが、その業態を聞いても儲かるとは思えない。むしろ「昔はそんな店もあったが最近見かけない」と懐かしむような業態ばかりだ。ただ生き残る店舗の底力は凄まじく、常連客が全国にいるほどだ。その秘密は大企業が真似できない地道な売り方にあった。

あえておさがりを薦める

 その典型的な店が、石川県白山市にある。フクズミはランドセルや学校制服を専門に扱う。特にランドセルの品ぞろえは豊富で、年間2500個販売している。人口約11万人しかいない都市で驚異的な販売個数だ。福住裕社長は「年間通してランドセルが売れない日はほぼない」という。

 フクズミは全国でも有数の販売量を誇るが、ランドセル業界全体でみるとそう明るい話はない。少子化で顧客となる子供は減り、客単価も上がる要素も少ない。ランドセルを買わずにリュックサックで済ませる子供も増えている。しかもフクズミが商圏とする白山市は典型的な地方都市で有利な点はみられない。それでも成長できているのは、継続して売れる機会を作る販売手法にあった。

 新入生はランドセル以外にも学童品を買い揃える。石川県の多くの公立小学校では制服を採用している。フクズミは制服の売り方が変わっている。

 新1年生には小学3年生でも使えるくらい大きめのサイズを薦めるのだ。そのまま着れば手足の丈が長く不恰好になる。フクズミは綺麗に着こなせるように縫製する。子供が成長すると、糸をほどく。2着売れるところをあえて1着に留めることでお得感を作り出し、保護者から信頼を得るのだ。フクズミはこれらを無料でやってしまう。

 また兄弟がいる家庭には、下の子の制服におさがりを提案する。そのおさがりを1200円で、ボタン交換やクリーニングで新品同様にリフォームしてしまう。その代わり年長の兄弟の分は新品を買ってもらえる。

 おさがりとなる下の子にもシャツや靴、制帽といった小物は新品で揃えてくれることが多い。小物は粗利益も4割以上と高いため、細かく稼ぐのだ。「おさがりは良い文化。裕福な家庭からの依頼も多く、自信をもって薦める。一見損をした売り方のように思えるがそんなことはない」(福住社長)。

 これだけではない。体操服のゼッケンや学校指定の雑巾も販売する。学校指定の雑巾は各校によって微妙な差がある。フクズミはそれらをすべて調べてあり、ぴったりのサイズが買える。新学期が始まる時期にはすぐに売り切れてしまう人気商品だ。「共働き世帯が多くミシンがない家庭も少なくない。子育てを応援するにはきめ細かなサービスが必要」(福住社長)。

 雑巾以外にも、体操服のゼッケンも100円でつける。巾着袋も通学用の靴下も、何でも揃う。学校に必要な用品を買う店として認識されることで、小さな町でも常連客をがっちりつかんでいる。「お客様の視点に立てば需要は掘り起こせる」(福住社長)。ランドセルをいくつも買ってもらう顧客はそういない。1人につきひとつだが、学童品も含めることで購入頻度は増えて常連客を作れるのだ。

左:フクズミの福住裕社長。日本でも屈指のランドセル販売量を誇る
右:面倒な体操着のゼッケン付けや袋作りの名前付けなども請け負う。忙しい共働き世帯に人気商品だ

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「ボタン、ランドセル…潰れないニッチ店の秘密」の著者

西 雄大

西 雄大(にし・たけひろ)

日経ビジネス記者

2002年同志社大学経済学部卒業。同年、日経BP社に入社。日経情報ストラテジー、日本経済新聞社出向、日経コンピュータ編集部を経て、2013年1月から日経ビジネス編集部記者。電機、ネットなどを担当する。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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