5店舗で店長1人、でも“ブラック”じゃない

西松屋で見た「働き方改革」の好循環

 日本全体で「働き方改革」が叫ばれる昨今。「早く帰れ」「残業するな」「というか休め」。突然、会社が打ち出し始めた方針に、違和感を覚える人も少なくないだろう。仕事の絶対量が減らないのに、「働き方改革」と連呼するだけで、現実を変えていくのは難しいのではないか――。

 そう思っていた矢先、ベビー・子供用品最大手の西松屋チェーンを取材する機会があった。同社は年間数十店のペースで出店を続け、23年連続で増収を見込んでいる。

 聞けば「1人の店長に、最大5店舗の管理を任せている」という。小売りや外食チェーンでは、少しでも売り上げを伸ばすためにあれやこれやと業務内容を広げている。折からの人手不足と相まって、現場責任者である店長が「労働力の調整弁」として過重労働に陥ってしまうケースも少なくない。

 西松屋も、店内で唯一の正社員である店長が、早朝から深夜まで働き続けるような厳しい労働環境の“ブラック企業”なのだろうか。そんな見方に対し、1人で5店舗を受け持つ名倉拓郎店長はさらりと反論する。「午前10時前に出勤して、夕飯を家で食べられる時間帯には帰っていますよ」。

西松屋埼玉春日部店(撮影:竹井俊晴、以下同)

 なぜそんなことができるのか。西松屋の店長は「やるべきこと」と「やらなくていいこと」が明確に線引きされている。「やらなくていいこと」の代表がレジ打ちや商品発注、掃除などだ。店内作業は基本的にパート・アルバイト従業員に任せる。商品発注は売れ行きのデータなどを基に、兵庫県姫路市にある本社が決める。

 「やるべきこと」は従業員への作業指示書の作成や勤怠管理など。さらに、この「やるべきこと」を可能な限り減らすべく、日々検討を続けている。そうした改善を積み重ねた結果、例え5店舗に店長が1人しかいなくても、何の問題もなく運営することができるのだ。

 西松屋の店内には、いい意味での脱力感が漂っている。まず、あまり混んでいない。同社は店舗運営を徹底して標準化しており、イレギュラーの発生を可能な限り避ける。実は「お客さんが多すぎる」のも、同社としては避けたい事態だ。レジ打ちの時間が長くなったり、納品数が増えて品出しに時間がかかったりすれば、必然的に現場にそのしわ寄せがいくからだ。

書類1種類減らし、年7883時間を削減

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著者プロフィール

杉原 淳一

杉原 淳一

日経ビジネス記者

2005年、日本経済新聞社に入社し、大阪経済部に配属。2009年に東京に異動し、経済部で銀行や農林水産省、財務省、金融庁などを担当。2015年4月から日経ビジネスで金融機関を中心に取材している。

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