「上場ゴール」「生ける屍」となるよりも…

「起業家は上場を目指す」はもはや常識ではない

 7~8月、インターネット業界で注目を集める企業の新規株式公開(IPO)に関する観測が相次いでメディアを賑わせた。個人間取引のフリーマーケットアプリで大きな存在感を誇るメルカリ(東京都港区)、フィンテック領域で急成長するマネーフォワード(東京都港区)が年内に上場する見通しであると、日本経済新聞などが報じたのだ。

 特にメルカリについては、企業価値が10億ドル(約1100億円)を超える未上場企業(ユニコーン)の代表格とされることから、投資家の関心もひときわ高い。ネット上には公募価格などに関するツイッターのつぶやきが溢れ、業界関係者の間では上場の時期や上場審査についての噂が飛び交った。

 新たな会社を立ち上げて世の中にない製品やサービスを生み出し、顧客を開拓して売り上げを伸ばす。そして株式を上場して多額の資金を集めるとともに社会的な信用を高める。IPOを目指す起業家のこうした目標は、昔も今も不変のものと捉えられがちだ。経営者にとって上場の日は一世一代の「ハレ」の日であり、企業のさらなる成長には欠かせない要素であると。

 ただ、最近スタートアップや起業家への取材を繰り返す中で、記者はこうした「常識」はもはや過去のものではないかと感じる機会が多くなった。もちろん、上場を目指すスタートアップは依然として多く、上に述べたような価値があるのも確か。メルカリのように脚光を浴びる企業が上場すれば、社会的な影響力も大きい。しかし一方で、全く異なる発想をも持つ経営者が増えているのもまた事実である。

「株主対応は面倒だ」

 「株式上場にはメリットを感じない。現時点で上場する気は全くない」

 こう公言する有力ネット企業の経営者がいる。人材サービスやネットメディアを手掛けるレバレジーズ(東京都渋谷区)の岩槻知秀社長だ。

 IT(情報技術)エンジニアのフリーランスと企業をつなぐサービスなどで業容を拡大し、急成長している。グループ全体の2017年3月期の売上高は前の期比4割増の195億円、社員数は600人を超える。本社オフィスはディー・エヌ・エー(DeNA)も入居する渋谷ヒカリエで、国内外に13の拠点を持つ。

 サントリーホールディングスのような伝統的な同族経営の大企業は別として、レバレジーズのような成長企業であればIPOを目指すのは当然。こうした感想は以前であれば当たり前のことだったろう。だが、岩槻氏は2014年、自身のブログで「上場しない理由について」と題した記事をアップし(こちら)、業界関係者を驚かせた。その真意を、本人は次のように語る。

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著者プロフィール

河野 祥平

河野 祥平

日経ビジネス編集記者

2006年日本経済新聞社入社。社会部、消費産業部などで警視庁、ネット業界などを担当。直近では企業報道部でビール・清涼飲料業界を取材。2015年4月から日経ビジネス。

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