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交通弱者に自動運転は必要か

2016年9月1日(木)

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 「自動運転よりも、乗り合いタクシーを税金でやってくれた方がうれしいねえ」

 自動運転に関する国の検討委員会に参加するある識者は、地方の高齢者へのヒアリングで出た意見に思わず頷いてしまった。

 日本は2020年に無人運転車両を用いた特定地域での輸送サービスの実施を目指している。ヒアリングはこのサービスへの需要を調べる目的があった。

無人輸送運転サービスが当面の具体的目標(警察庁の資料から抜粋)

 無人運転といっても、これは「完全自動運転を意味するレベル4ではなく、レベル2でしかない」(国交省関係者)。遠隔とはいえ監視がつき、ヒトのコントロール下に置かれるためだ。

 日本が加盟するジュネーブ条約は運転手のいない自動車を認めておらず、改正に向けた議論が進められている。今春には運転者は中にいなくてもよいとする解釈も示された。日本が示している未来像はあくまで条約が現状認めている範囲のものだ。2025年をめどとする完全自動運転車の市場化に向けて、弾みをつける狙いがある。

 地域の社会問題にスポットを当てて自動運転の利点をアピールする手法は、自動車産業が大衆車に軸足を置いている日本からすれば当然のことかもしれない。

 しかし、冒頭の高齢者の言葉が示すように当事者のニーズを適格に捉えているかは別の問題だ。もちろん交通弱者にとって、地域の足が充実することは大歓迎だが、それなら親しみ慣れているタクシーの方がよいという訳だ。

 将来的には無人運転輸送が有人タクシーよりもコストが下がり安全性も上がる見通しがあるからこそ、こうした施策が進められるわけだが、「運転手のいる車に乗っている方が安心」という思いがぬぐえない高齢者が多いのも頷ける話だ。

 こうした日本の国民性とも言える志向が自動運転普及の課題になると見る関係者は多い。国交省の関係者も「日本人は4000が2000になっても納得しないだろう」と話す。

 4000とは日本での交通事故による死亡者の概数。仮にこれがレベルを問わず自動運転の普及により実現したとしても「日本人は2000人死者が減ったのではなく、2000人が自動運転にひき殺されたと捉えるのではないか」

 自動車メーカーにとってこれは大きな足かせだ。極論を言えば、自らの技術力により2000人の命を救ったとしても、2000人の死亡に関わる過失犯になってしまう可能性すらあるからだ。「そのため4000を0にする確信ができるまで、自動運転と称して市場投入することにためらいを感じるメーカーも多いはずだ」(国交省関係者)

 こうした自動運転の「社会受容性」の問題は警察庁などの検討委員会でも大きな議論になっている。しかし、どうにもこの委員会が国民に議論を呼び起こすものにはなっていないように思う。

コメント7件コメント/レビュー

「人」の話題がようやく出てきましたね。政府、業界、学会すべてが「人」を軽視しています。"クルマ”は人間の本能本性の一部を実現・表現するものでありながら自動運転については「人」が中心になっていません。これは大変危険な思考です。 国交省経産省が主催した自動運転ビジネス検討会の記録によると「人」について言及されたのはごくわずか=全体を通じて二人の委員が各一言だけ=でした。しかもスルーされたことが伺われます。
マスコミも、技術紹介、覇権争い、売上・利益、安全を云々する以前にもっともっともっと「人」の本能本性から迫ってほしい。
はじめに、、、、
 レベル3以下の自動運転を『自動運転』と呼ぶのはやめましょう。運転支援であるレベル2を自動運転と表現することは「人」軽視の一端です。あくまでの「人」のための自動運転であって欲しい。(2016/09/01 12:36)

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「交通弱者に自動運転は必要か」の著者

寺岡 篤志

寺岡 篤志(てらおか・あつし)

日経ビジネス記者

日本経済新聞で社会部、東日本大震災の専任担当などを経て2016年4月から日経ビジネス記者。自動車、化学などが担当分野。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

「人」の話題がようやく出てきましたね。政府、業界、学会すべてが「人」を軽視しています。"クルマ”は人間の本能本性の一部を実現・表現するものでありながら自動運転については「人」が中心になっていません。これは大変危険な思考です。 国交省経産省が主催した自動運転ビジネス検討会の記録によると「人」について言及されたのはごくわずか=全体を通じて二人の委員が各一言だけ=でした。しかもスルーされたことが伺われます。
マスコミも、技術紹介、覇権争い、売上・利益、安全を云々する以前にもっともっともっと「人」の本能本性から迫ってほしい。
はじめに、、、、
 レベル3以下の自動運転を『自動運転』と呼ぶのはやめましょう。運転支援であるレベル2を自動運転と表現することは「人」軽視の一端です。あくまでの「人」のための自動運転であって欲しい。(2016/09/01 12:36)

「自動運転」は「人手」の排除・コストカットを実現する手段になる。経済的インパクトは大きい。一方で,交通弱者の移動手段に対する需要が巡回タクシーでカバーできるのかという疑問もある。我慢をすればいい,という発想はいただけない。「自動化」が新自由主義的な経済効率追求の手段になるのは目に見えているが,これが「失業」と直結すると「労働基本権」などの「基本的人権」に触れてくる。我々はどんな「夢」を見て,理想を掲げて未来を築いていくのか。「AIカーは無人運転車の夢を見るのか」。技術と社会,理想と現実の摺合せを多角的に考えて多くの人が議論し納得できる未来を期待する。(2016/09/01 11:53)

自動運転技術の話題を読む度に疑問に思うことだが、そもそもこの技術 基本的にはまっすぐな道を長距離走ることが前提で、くねくねした山道を走ることは想定していませんよね? 国道とは名ばかりの酷道と揶揄される片道1車線の過疎地では、安全に都市部にアクセスできる手段さえあれば十分。非常時のブレーキなど運転をアシストする技術は求められていても、万が一の時にブレーキを踏むことができる運転手がいないレベル4の高い技術などはなから求められていないと思います。(2016/09/01 10:47)

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