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「走るコンビニ」現場で見た光景

高齢者以外にも需要あり。ただ準備は大変そう

2017年9月5日(火)

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 8月上旬、ある平日の午前。神奈川県川崎市にあるサービス付き高齢者住宅の玄関口で、その「コンビニ」は開店の瞬間を迎えようとしていた。

 ダイハツ工業の軽トラックをカスタマイズした専用車両が停まり、店員が荷台のドアを開く。食品から日用品まで300〜400種類の商品をのせて地域に繰り出す、ローソンの移動販売車だ。日経ビジネス本誌に記事を書くにあたり、取材させてもらった。

高齢者住宅に停まるローソンの移動販売車。館内放送をオープンの合図に、入居者の高齢者らが続々表に出てくる(8月上旬、神奈川県川崎市、以下ローソン関連の写真はすべて同じ)

 「コンビニが到着しました。お買い求めの方は、表までどうぞ」

 館内放送をオープンの合図に、まず姿をみせたのは入居者のおばあちゃんたち。しばらくしてからおじいちゃん勢も加わった。まず右側、次に後ろ側、左側……。車両に沿ってゆっくりと歩きながら、少しずつ、商品を買い物カゴに入れていく。

商品を手にとって迷う女性。店舗と違って、店員と会話を交わす余裕がある

 84歳の女性が購入したのはトイレットペーパーと、床掃除に使う花王「クイックルワイパー」に取り付けるシート。話を聞いてみると「前は近所のお店まで歩いて買い物に出かけていたのだけれど、大きい道路を渡るのが大変で……」。

 90歳の男性はパンと牛乳、バナナにトマトをカゴに入れた。「まあ正直、品ぞろえはスーパーのほうが良いな。けど、やっぱりここまで来てくれると便利だから。それにまあ、必要なものは大体いつも決まっているしな」

移動販売用に持ち出す商品は300〜400種類。店舗の約10分の1という品ぞろえだ。冷凍、冷蔵、常温と全て専用ケースを備えている。

客単価は店舗より高め

 棚から商品を取り、カゴに入れ、財布を取り出して支払いする……。

 当たり前の動作をしているだけだが、利用者の顔は総じて明るい。移動販売車が同施設の玄関口で「開店」していたのはわずか20分ほど。だが13人が購入し、売上高は1万4000円にのぼった。つまり客単価は1080円。ローソン全店舗の平均客単価は608円(2017年2月期)なので、営業視点でみても、なかなかの上客が集まっていることになる。

お金のやりとりは高齢者が何十年と繰り返してきた当たり前の動作。ここに生きがいを見出している人もいるのでは、と思った
手が空いた店員はササっと商品の陳列を整える。店舗で働いているときと変わらない所作だ。

 この地域で移動販売車が走り始めたのは2016年12月。運営を担うフランチャイズ加盟店、ローソン上麻生六丁目店の鴨志田直樹店長は「特に熱心にお買い求めいただくのは女性です」と話す。男性よりも女性の方が、食品や日用品を買うという行為が長年の習慣として体に染み付いているからだろう。

 お店に足を運ばなくてもモノは買える。たとえばカタログ通販やインターネット通販で注文し、部屋まで届けてもらう選択肢もある。あるいはもっとシンプルに、家族に頼んで好きなものを買って来てもらうこともできるだろう。

 だが「自分で商品を手にとり、カゴに入れ、財布を取り出して支払いを済ませる」という原始的ともいえる動作には、自分が元気に生きていることを再確認させてくれる、生きがいのようなものを感じる高齢者もいるのではないか。

 自動車の運転に代表されるように、あるいは食事や排泄行為もそうだが、高齢者は自分がかつて当たり前にこなしていた行為を出来なくなっていく現実に戸惑い、苛立ち、落ち込むと聞く。記者にとっては祖父母世代にあたる昭和ヒト桁生まれのおじいちゃん・おばあちゃんたちと話していると、移動販売車での購入には単なる「モノを買う」を超えた意味があるように感じられた。

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「「走るコンビニ」現場で見た光景」の著者

藤村 広平

藤村 広平(ふじむら・こうへい)

日経ビジネス記者

早稲田大学国際教養学部卒業、日本経済新聞社に入社。整理部勤務、総合商社インド拠点でのインターン研修などを経て、企業報道部で自動車業界を担当。2016年春から日経ビジネス編集部。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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夢の実現にあたっては強く「念ずる」。そうした心構えを支えにビジネスの世界の荒波を渡ってきました。

後藤 忠治 セントラルスポーツ会長