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夢見る力を奪われた子供たち

子供の貧困、企業はどう向き合う

2016年9月20日(火)

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 以前、選挙の記事を手がけた際、一人の大学生に出会った。仮に名前をAくんとしよう。記事は、7月の参議院選挙で新たに選挙権を獲得する18歳と19歳に焦点を当てたもの。色々な方からの紹介を経て、参院選前1週間にわたり7人の男女を紹介した。その中の一人が、Aくんだった。

 取材では、18歳、19歳の彼らに、選挙権を得るということにどういう気持ちを抱いているか、どういう行動を取ろうとしているか、を教えてもらった。その一人として登場してもらったAくんが、インタビューの中盤、突然、スッキリとした声で、何の迷いもなく発言した。

「僕は施設育ちで、親とは絶縁状態なんです」

 Aくんが児童施設にいたことは、Aくんを紹介してもらった方から聞いていた。一方で、取材の内容は選挙についてのことなので、ことさら彼の家庭環境や施設のことについて聞くつもりはなかった。というより、今思い出せば、なるべく育った環境については触れないように意識していたかもしれない。

 彼は小さな頃に児童施設に入り、一度は家庭に戻るものの、また施設に戻ったという現役大学生だ。「よく小さい頃、選挙で近くの小学校体育館に家族で行く、とか聞いたことありますが、僕にはそういう経験は一切ないですね」。

 彼には夢もあった。ジャーナリストになりたいのだという。撮影を任せたカメラマンが「東京に遊びに行った際は、是非染原さんの職場に遊びに行きたいと言っていましたよ」と教えてくれた。

 Aくんを紹介してくれたのは、そうした児童施設の子供たちを支援するNPO法人ブリッジフォースマイルの職員だった。彼女は言う。「Aくんのように、大学に進学し、着実に進級している例は稀です。ましてや、しっかり夢を語れるという人も」。

児童施設退所後の大学進学率は2割

 今、日本には、虐待、貧困、病気などを理由に、親と暮らせず児童養護施設で生活する2~18歳の子どもが3万人以上、施設の数は全国で約600ある。警察庁によれば、今年上半期に虐待の疑いがあるとして児童相談所に通告した児童数は2万4511人。半期で2万人を超えたのは初めてで、前年同期比42.3%増加となったという。より一般の人の意識が高まり、今まで見えていなかった「潜在虐待層」が見える化した側面もあるだろうが、児童施設への入所数は今後増加することも考えられる。

 公立小中学校の児童生徒のうち、経済的に困窮している家庭に学用品代などを補助する就学援助についても、増加が続く。2013年度は、15.42%と、対前年から0.22ポイント減少し、1995年度の調査開始以来初めての減少となったが、その割合は6人に1人で、高止まりの傾向だ。

 子供の貧困は日に日に問題の深刻化が増している。

 Aくんのように大学に進学し、順調に生活をできている子供はほんの一握りだ。児童施設は18歳までに出所する必要があり、施設を出たあとは、自身で生計を立てていく必要がある。ブリッジフォースマイルによれば、施設退所者の大学への進学率は約2割。そのうち、進学後にドロップアウトする割合が3割であることを考えれば、実質の進学率は2割に満たないと考えてよいだろう。「生活を自分で回しながら、勉強、アルバイト、すべてを一人で行うのは想像以上に難しい。進学前に、心と頭とお金の周到な準備が必要」なのだという。サポートや自身の努力で大学生活を送り続けているAくんは「貴重な存在」だという。

 ブリッジフォースマイルでは、施設にいる間に職業体験をできる機会や、自立のための知識やスキルを身に付けるセミナーなどを提供する。そのサポートの一つに「カナエール」というスピーチコンテストがある。退所後に大学進学などを希望する子供に進学後のサポートと奨学金を提供するプログラムだ。奨学金は、1人あたり、一時金30万円と、卒業まで月々3万円の給付。スピーチコンテストは、書類審査などを経て限られた数十名のみが一般客の前で自分の夢を語る。書類審査を通過し、スピーチコンテストまで厳しいトレーニングを経て、スピーチを行う。ある種の課題をクリアした子供に対して、奨学金とサポートを提供するというものだ。

 子供は、スピーチを行う過程で自分の夢を考え、それを実現する方法を探るという意味で、奨学金以上の意味があるという。

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「夢見る力を奪われた子供たち」の著者

染原 睦美

染原 睦美(そめはら・むつみ)

日経ビジネス記者

日経パソコン、日経ウーマンオンラインを経て、2013年4月から日経ビジネス記者。IT担当などを経て、日用品・化粧品担当。趣味は洗濯、昼酒、ピクニック。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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