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伸び悩む電力自由化に、電力卸取引所の「秘策」

2016年9月30日(金)

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電力の全面自由化が始まって約半年。鳴り物入りで始まった電力自由化だが契約の切り替えは進んでいない。電力を売買できる取引所の利用が低迷していることがない原因の一つ。そこで日本卸電力取引所(JEPX)が、「グロス・ビディング」と呼ばれる制度を導入して、市場を活性化しようと動き始めた。

 今年4月から始まった電力の自由化。家庭向けの電力小売りに自由に企業が参入できるようになり、ガス、石油元売り、通信、そして鉄道会社まで、様々な企業が電力販売に乗り出した。既存電力会社より電気代が安く抑えられていたり、別サービスとセットで契約すると割引が受けられたりと様々なサービスが登場。これを機に電力会社を乗り換えた人も多いだろう。記者の周りでも「契約を切り替えたら電気代が安くなった」という声を聞く。

(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 ただ、実際に契約する電力会社を変えた人は全体から見れば少数のようだ。切り替え件数は7月末時点で約148万件と増加傾向にあるものの全体の約2%程度に過ぎない。切り替えが進まない理由は様々だが、一つの原因は、電力事業の”上流”にありそうだ。

低迷する市場、テコ入れへ

 新規参入した電力会社(新電力)が電力を調達する手段は限られる。  

 地域の電力需要を独占的に賄ってきた大手電力会社は、大規模発電所をあちこちに抱えているため豊富な電力を持つ。これを、基本的には製販一体の垂直統合モデルで家庭に供給してきた。一方で大出力の発電所を持たない新電力は設備投資して自社で新しい発電所を抱えるか、既存の電力会社や発電施設を抱える工場などと相対契約して調達するしかない。いずれにせよ、既存の大手電力会社と比べて確保できる電力の量は限られるため、大々的に事業展開しづらい。

 発電能力がない、もしくは乏しい新電力が足りない電力を補う方法はある。日本唯一の電力取引所、日本卸電力取引所(JEPX)を活用することだ。

 JEPXでは、一定の条件を満たす会員企業が市場で電力を調達したり、販売したりする仕組みを提供している。企業の株式売買を仲介する証券取引所をイメージすると分かりやすい。株を売買したい人はその発行体(企業)と直接取引しなくても、取引所が開設している市場を通じて株を売ったり買ったりできる。電力取引所の仕組みも基本的には同じだ。

 市場に出回る電力の量が増えれば、発電所を持たない新電力が、ここで電力を調達して独自サービスを大規模に展開できるかもしれない。だが新電力のシェアの伸びと同様、JPEXでの取引も活発とは言えない。全面自由化後も取引量は日本全体の電力需要の2~3%しかない。大手電力会社は自社で必要とする電力を製販一体で売っており、余剰分しか市場に放出しないためだ。市場に出回る電力の量が少ないから価格変動も大きくなりがち。JEPXで電力を買うことは、新電力にとっては仕入れをすることと等しい。仕入れ価格が時々で大きく上下するようでは、安定的に事業展開することはできない。

 JEPXも手をこまぬいているわけではない。市場で取引される電力の厚みを増やそうと「グロス・ビディング」と呼ばれる制度の導入を大手電力会社に促し始めた。

 グロス・ビディングとは、大手電力各社がグループ内取引している電力の一定量を市場に放出する仕組みを指す。大手電力会社の発電部門は、作った電力の一部、あるいは全量を従来のように小売部門に直接渡すのではなく、まず市場(JEPX)で売却する。グループ内の小売部門は必要な分を市場から買い戻し、自社の需給を一致させる。英国や北欧諸国では定着している制度で、経済産業省も「市場の流動性や価格指標性の獲得」につながるほか「新規事業者(新電力)への事業機会の提供」が可能になるとして、導入を促している。

 ただ、この方式が実現しても、直ちに新電力の市場調達が円滑になるわけではない。「やろうと思えば、大手電力会社は市場取引を無効化できる」(経産省の電力・ガス取引監視等委員会で委員を務める松村敏弘・東京大学教授)からだ。大手電力の発電部門がタダ同然で市場に電力を売り、それを他社が購入できないような高い価格で小売部門が落札して、両方の部門で損得を相殺すればいい。この場合、市場の取引量は増えても新電力が介在する余地はないため、彼らに事業機会を提供することにはならない。

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「伸び悩む電力自由化に、電力卸取引所の「秘策」」の著者

飯山 辰之介

飯山 辰之介(いいやま・しんのすけ)

日経ビジネス記者

2008年に日経BP社に入社。日経ビジネス編集部で製造業や流通業などを担当。2013年、日本経済新聞社に出向。証券部でネット、ノンバンク関連企業を担当。2015年4月に日経ビジネスに復帰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長