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東京の電車内で見た“トランプ旋風を生んだもの”

誰もが「テロリストの論理」に縛られ得る怖さ

2016年11月15日(火)

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「この野郎。謝れよ!」
「踏んでねぇよ」
「とぼけんな!」
「やってねぇよ」

 午前9時半。オフィスを目指す記者が乗っていた地下鉄は日比谷駅に停車した。

 うとうとしている記者の耳に、突然、大声で罵り合う2人の男性の声が聞こえてきた。記者が座っていた席の最も近いドアの近くで言い争っている。

 怒りに顔を紅潮させているのは60歳過ぎくらいの男性。どうやら、ホームを歩いていて誰かに足を踏まれたらしい。

 もう一方は20代半ばくらいの男性。身長180cmはありそうな彼は、途方に暮れながら、小柄な初老の男性を見下ろしている。ホームでからまれ、車内に逃れてきたようだ。

「降りろよ!」
「知らねぇよ!」。

 かみ合わない“議論”は1分も続いただろうか。突然、初老の男性が信じられない言葉を発した。

「謝らねぇと、非常停止ボタンを押すぞ」

「え、非常停止ボタン。なんで?」。記者にはその発言の趣旨がすぐには飲み込めなかった。

 さらに突然、争う2人の近くに立っていた男性の乗客3人が初老の男性を取り押さえにかかった。

「え、この人たちは若い男性の仲間なの? すごい偶然」。一瞬そう考えたが、そんなことあるわけがない。

 争う男性2人が乗ってきたドアとは反対側ドアの上部に、非常停止ボタンが設置されている。これを押そうと初老の男性が動き出したため、周囲の乗客が止めに動いたのだった。

 現代人は得てして、騒動には知らぬふりを決め込みがち。だが、公共心は衰えていないようだ。それとも、我が身のため、動かないわけにはいかなかったのか。電車が止まれば約束に遅れるなどの“実害”を受けるだろうから。いずれにしろ、たまたま席に座れてうとうとしていただけの記者にどうこう言う資格はないのだが。

コメント40件コメント/レビュー

他人のせいにすること、被害者ぶることが常套化していると日々感じます。
心に余裕がなさすぎて、「許す」こともできず、「人のせい」にすることでしか心のはけ口が見つからないのかもしれません。自分だけが不幸だと思い、不幸自慢をするほど愚かなことはありません。それをこらえても寛大な心を持てることが、美しい人間なのだということを忘れないようにしたいです。(2016/11/30 00:04)

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「東京の電車内で見た“トランプ旋風を生んだもの”」の著者

森 永輔

森 永輔(もり・えいすけ)

日経ビジネス副編集長

早稲田大学を卒業し、日経BP社に入社。コンピュータ雑誌で記者を務める。2008年から米国に留学し安全保障を学ぶ。国際政策の修士。帰国後、日経ビジネス副編集長。外交と安全保障の分野をカバー。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

他人のせいにすること、被害者ぶることが常套化していると日々感じます。
心に余裕がなさすぎて、「許す」こともできず、「人のせい」にすることでしか心のはけ口が見つからないのかもしれません。自分だけが不幸だと思い、不幸自慢をするほど愚かなことはありません。それをこらえても寛大な心を持てることが、美しい人間なのだということを忘れないようにしたいです。(2016/11/30 00:04)

面白かった。そして,「やがて悲しく」なった。「人の業」を見たし,「歴史の終わり」を感じさせた。記者氏も同じだったのではないだろうか。「世紀末」「末法の世」など不穏な世情下では人は煽られやすいものだ。記事でも指摘されている通り,本当に必要なのは「煽り」ではなく「癒し」だ。
歴史の中でこうした世情下での「煽り」が「魔女狩り」「アカ狩り」「ユダヤ人排斥」などなどと結びついていった。今次の「煽り」は「ポピュリズム」としてとりあえずキレイに表現されている。だが,きれいごとでは済まされない。その先にある世界に幸せは見えない。「歴史の終わり」に相通じる出来事が日にの暮らしの中にまで迫ってきている。残された時間はもうわずかかもしれない。それを目撃した記者氏は「目が覚め」ただけだったのだろうか。私は背筋が寒くなった。(2016/11/18 15:16)

多くのコメントにあるように、自分勝手に非常ベルを鳴らす老害とトランプ勝利とを結びつけるのは無茶苦茶だが、筆者は確信犯であり、悪く言われるのは百も承知であろう。私は割と面白く読んだ。愚かな老人には厳しい処置が必要であって、鉄道会社は損害を求めるべきと思う。(2016/11/16 16:04)

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