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ドラマ「陸王」で読み解く不正連鎖の真因

「モラル低下」「品質への甘え」で片付けてはいけない

2017年12月5日(火)

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一連の不祥事を「十把一絡げ」にするメディア

 この後も、似たような不正が次々と明らかになった。復習の意味も込めて、一連の不祥事を下記に並べてみる。

●ここ数カ月で明らかになったメーカーの不正(発覚時のみ)
9月29日 日産自動車が国内6工場で社内の認定を受けていない社員らが完成検査を行っていたと発表(日経記事
10月8日 神戸製鋼所が顧客が求める品質基準を満たしていない部品を出荷していたと発表(日経記事
10月27日SUBARU(スバル)が同社の群馬製作所(群馬県太田市)で完成検査員の資格を持たない従業員が検査工程に携わっていたと発表(日経記事
11月23日三菱マテリアルの子会社3社で品質データを改ざんする不正が発覚(日経記事)。翌日に記者会見を実施(
11月28日東レが子会社の「東レハイブリッドコード」で製品データの改ざんがあったと発表(日経記事

 ここでは同じ表に並べているが、実際には2種類の不正に分かれる。「自動車メーカーが資格のない検査員に国が定めた完成検査を実施させていた」「素材メーカーが自社製品の品質に関わるデータを改ざんしていた」の2つだ。

 1社が起こした問題なのであれば、話は簡単だ。徹底的に不正が起きた理由を洗い出し、改善すればいい。だが、今回の不正は困ったことに、互いの現場に交流がないはずの複数社、しかも競合企業でほぼ同じ時期(発表の時期という意味ではなく、実際に不正が現場で起きていた時期)に同様の問題が起きている。だからどうしてもメディアは、十把一絡げに「現場のモラルが低下している」「品質に対する甘えだ」と処理してしまいたくなる。記者もメディアの一員だから、その気持ちはよく分かる。

 確かにその要素はあったかもしれないが、「真因」として考えた場合、記者にはどうしてもそれらが問題の本質であるようには思えなかった。3年前に「日経ビジネス」に異動になる前は技術誌「日経ものづくり」で7年間、その前の経営誌「日経ベンチャー(現・日経トップリーダー)」でも7年近く、製造業の現場を取材し続けてきた。カイゼンにはまり、企業のカイゼン活動に紛れてアイデアを出し、カイゼンの実務(その場で物の置き方や作業手順などを変えること)をしたこともある。ちゃんと数えてはいないが、現場に足を踏み入れた会社は優に100は超えると思う。

 当然、実際のモノ作りに関わっている方々に比べたらヒヨッコだが、記者という職業の性質上、自動車部品や装置といった組立系はもちろん、化学や鉄鋼といったプロセス系まで幅広い現場を見てきたという自負はある。長年の取材活動の中で、製造業に関わるたくさんの仲間たち(勝手にそう思っているだけだが)もできた。

 そんな仲間を近距離で見ていていつも思うのは、「真面目だな」ということ。過剰なまでに品質に対する意識が高い。モラルが下がっているようにも、品質を軽視しているようにも見えなかった。

 だとすれば一体、何が真因なのか。OBの取材時にはあたふたしてしまったので、改めてじっくり考えてみた。

コメント57件コメント/レビュー

この記事の内容に賛同することをお知らせしつつ,思ったよりも同様のご意見の方々が多くて安心しました.

池松さんの記事は,日経ものづくりの頃の,家族ぐるみでのカイゼンがおもしろくて記憶に残ってますが,文中にもあったとおり,現場をよく知る方だと承知しています.

また,文末の「あうんの呼吸」擁護に否定的なご意見も多いですが,私も現場で育った製造エンジニアなので,「あうんの呼吸」擁護にも同意です.もちろん,契約や検査はきちんとしたうえですが.

「あうんの呼吸」的な部分が,日本の製造業の強みであり,海外メーカーではまねできない競争力と思うので,活用し,伸ばしていく部分だと思っています.
_/_/_/(2017/12/15 12:48)

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「ドラマ「陸王」で読み解く不正連鎖の真因」の著者

池松 由香

池松 由香(いけまつ・ゆか)

日経ビジネス記者

北米毎日新聞社(米国サンフランシスコ)で5年間、記者を務めた後、帰国。日経E-BIZ、日経ベンチャー(現・日経トップリーダー)、日経ものづくりの記者を経て、2014年10月から日経ビジネス記者。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

この記事の内容に賛同することをお知らせしつつ,思ったよりも同様のご意見の方々が多くて安心しました.

池松さんの記事は,日経ものづくりの頃の,家族ぐるみでのカイゼンがおもしろくて記憶に残ってますが,文中にもあったとおり,現場をよく知る方だと承知しています.

また,文末の「あうんの呼吸」擁護に否定的なご意見も多いですが,私も現場で育った製造エンジニアなので,「あうんの呼吸」擁護にも同意です.もちろん,契約や検査はきちんとしたうえですが.

「あうんの呼吸」的な部分が,日本の製造業の強みであり,海外メーカーではまねできない競争力と思うので,活用し,伸ばしていく部分だと思っています.
_/_/_/(2017/12/15 12:48)

▼ ちょっと本文の内容とはずれますが、現場力と品質保証力はやや落ちている面も確かにあると思います。ただそれだけだと彼らがちと可哀想、それ以上に現在の技術レベルに現場も技術者も上層部もついて行けてないことが大きいと思います。▼ 例えばテレビひとつ取っても、今の時代は電気的知識だけでなく、高度な化学知識も必要となっています。発光素子なんかは、20世紀には一握りの研究者しか知らなかったことです。それが今世の中に出回ろうとしている。ではこれについて、正しくリスクマネジメントできる検査員はどれだけいるのか? またこれの動作原理を理解できる技術者はどうか?▼ 世の中の技術はどんどん複雑になってくるのに、それに対応できる人材育成が全く追いついてない。なぜなら全体がわかる人がほとんどいないから。難しいことを要点を外さず簡単に教えることができる人は尚のこといない。だから旧態然のことしか教えられず、レベルが上がっていかない。▼ 品質管理部門は確かにお金を生み出さない部署、だから社内のエースを投入できないのでしょうが、野球だってクローザーの重要性は先発投手のそれと変わりませんし、サッカーもキーパーがいないとゼロで抑えることは不可能です。品質部門は言葉だけでなく待遇もしっかり考えて育てていかないと、似た事態はまだまだ起きると思います。▼ 日本はモノづくりならまだ高いレベルにありますが、技術開発力は徐々に下がってきていると思ってます。そして残念なことにモノづくりはAI、IoTによりコモディティ化し、それらを使いこなす技術力、複数の分野の知識を駆使して新しいモノを創り上げる開発力が益々重要になるでしょう。(2017/12/11 09:34)

本文で述べられていた様に、確かに建前の品質つまり仕様値・合格値と、本音の品質という過剰品質の問題はあるかも知れません。

それともう一つ気になるのは、従来そのメーカーで製造されていた適合値の製品が造れなくなった、または造りにくくなった、即ち歩留まりが悪くなったという懸念はないのでしょうか? 
製造技術や製造機器のメンテナンス技術の維持・向上の点で、これまでの技術力や技能面のマンパワーが低下している可能性もあります。
直接的には検査体制の問題ですが、その本質にリストラや、経営改善によるコストダウン、ISOなどの諸規格対応などが生産ラインに働く社員を圧迫して疲弊させ、製造技術に影響を及ぼしていないでしょうか。企業の技術面も含めてご評価下されば幸甚です。 以上(2017/12/08 10:34)

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三品 和広 神戸大学教授