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日本の震災避難者対策、改革へ3つの私的提言

阪神淡路、東日本、熊本…教訓で終わらせてはいけない(下)

2016年7月7日(木)

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 今回の熊本地震で既に様々な教訓を学んでいると思うが、今後の日本の災害対策にさらなる努力・準備が必要と思われる点を3つに絞って私見を述べたい。

情報管理…いかに「迅速評価」するか

 1つ目は情報管理。阪神大震災に比べると、情報テクノロジーもインフラも格段に進歩し、災害対策における情報伝達の量・質・スピードは飛躍的に改善している。一方、情報が溢れ、デマや誤情報も飛び交い、必要で正確な情報が被災者や支援者に届かない、または彼らに取捨選択できないことも多い。

 途上国においては、大規模災害で必要な情報がなかなか集まらないため、「迅速評価(Rapid assessment)」と呼ばれる状況調査・ニーズ分析を行うことがある。被災規模はどの程度で、どのような被災者がどれほどいるのか、いかなる支援を必要としているかなど、必要な情報を優先的・選択的に収集し、迅速な支援につなげていくのである。

 途上国政府の執行能力が低い場合には、国連などが主導また支援して、海外から保健医療、食料・栄養、水・衛生、シェルターなど多分野の専門家を集めてチームを編成することもある。

 一般に調査や評価と呼ばれるものは、広域に包括的・系統的・正確に実施しようとすると、準備からレポート作成まで数か月、時には1年以上を要することもある。そこで「迅速性」を求め、包括性や正確さのレベルを落とし、「quick and dirty」、すなわち、大まかでもいいので、必要最低限の情報をとにかく速く収集するのが迅速評価(Rapid Assessment)である。

 それでもそれを計画し、チームを集め、予算や移動手段を確保し、手分けして現地を巡回して情報を収集・分析するには少なくとも数日、時に1週間以上を要する。2008年にミャンマーで14万人の死者を生んだサイクロン災害では、現地の国連機関で災害支援に携わったが、被災したのは大河から小川までが無数に織りなす低湿地のデルタ地帯で、およそ10キロメートル四方がサイクロンで被災した。軍政によって地図作成が制限されていたため、被災した村を探すのにも時間がかかる。車や舟で数日かかっても辿り着けない場所、舟から降りてさらに徒歩や牛車で数時間もかかる場所などもあり、迅速性を求めながらも援助が届くのに3か月以上もかかった村もあった。

 しかし、日本には発展し続ける通信技術があり、多様多彩なツールがある。

 たとえば今回、ドローンは国土地理院が阿蘇大橋の決壊の被災状況を動画撮影しYouTubeで公開され話題になったが、ほかにも熊本城の被害状況の調査、NTT西日本の通信線の被災状況の把握などで活用されたようだ。

 現地からの報告によると、災害直後でもインターネットはほとんど途切れることなく使え、NTTドコモやソフトバンク、KDDIなどによって無料Wi-Fiスポットが開放され、安否確認や人探しのためにLineやFacebookなどのSNS、そしてGoogleなどのWebサイトが大活躍したという。

 Webを見て感心したが、慶大生が中心となって設立した支援グループ「Youth Action for Kumamoto」は、現地に出向かなくとも学生が貢献できる支援活動の好例である。彼らが制作した被災者支援マップは、支援物資や炊き出し、営業中のスーパーや災害トイレ、ボランティアセンターの設置情報、温泉、医療情報やスマホ充電可能な場所などの情報をGoogle Maps上で集約・更新し、SNSで拡散して被災者に届けていった。QRコードを読み取るとスマートフォンから地図を読み込むことができるという。

 さらに、情報通信の革新により、被災者は情報の「受け手」にとどまらず、情報の「送り手」にもなり、被災者自らが支援活動に「参加する」ことが可能になった。

 たとえば、今回の熊本地震では、被災者が避難所で配給された食事内容を毎日写真に撮影してTwitterに流している。

 「避難所生活7日目 まさかこんなに、一週間も避難する事になるとは思ってもいませんでした。今日の朝ごはんです。」とのコメントを添えて送られた写真にはバナナ半分とソーセージ1本。

 この一連のツイートでTVや新聞で報道される情報とのギャップを知った人々は衝撃を受けたというが、私は「これは今後の災害支援を変えるかもしれない」と違った意味で感動した。

 実は、東日本大震災でも避難所の食料事情が劣悪だったので、我々の支援チームは日本栄養士会や地元の栄養士と協働で栄養改善に取り組んだ。しかし、被災地全体で2000か所以上、石巻市だけでもピーク時には250か所以上の避難所があり、避難者の栄養摂取状況の全体像を把握しようとしても相当の時間がかかる。実際、宮城県が実施した避難所の栄養摂取調査は結果が発表されたのが発災1か月後。今回の熊本地震でも、熊本県内に最大855か所の避難所があり、その全容を把握するには時間がかかっただろう。

 また、迅速評価は「Snap Shot」といわれ、ある時点での状況をカメラで写すようなもの。それがどのように改善してきたのか、悪化しているのか、今後どうなるのか、といった経時的変化は伝えない。折角、苦労して情報を集めても、それを分析している間に現場の状況はかわってしまう。

 さらに、避難所の状況を調べても、それ以外の場所で避難生活をしている人もいる。熊本地震でも、行政が定めた指定緊急避難場所や指定避難所以外に避難していた人々、車中泊をしていた人々、日中は自宅にいて夜だけ地震が怖いので避難所に泊まる人々などもいた。

 そのような「見えない」ニーズを把握するため、地域全域をしらみつぶしに廻って被災者の状況やニーズを把握する「ローラー作戦」という方法がある。私も阪神大震災や東日本大震災などでその計画・実施に携わった。しかし、これにはしっかりとした計画と、相当数の人員やロジの確保などが必要で、現場が混乱している時には実施が困難だ。

兵庫県・西宮体育館で医療チームの調整役となった筆者(阪神淡路大震災時)

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「日本の震災避難者対策、改革へ3つの私的提言」の著者

國井 修

國井 修(くにい・おさむ)

「グローバルファンド」戦略・投資・効果局長

国際緊急援助NGO副代表として、ソマリア、カンボジアなどの緊急医療援助に従事。国立国際医療センター、外務省、UNICEFニューヨーク本部、同ミャンマー事務所、同ソマリア支援センターなどを経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師