• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

「世界基準で救う」ために必要なこととは

大西健丞さんと考える「No one left behind」

2017年8月7日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

いかに「救えるメカニズム」を作るか

國井:日本の場合、国際協力に関心をもつ医師や看護師がいても、なかなか実践に移せる機会がない。また海外で経験を積んでも、日本ではそれが評価されず、戦場や被災地での経験があってもその能力が埋もれてしまうんだよね。

大西:ピースウィンズとしては、イラクでの支援活動などで培った仕組みを生かして、日本の地域医療の立て直しにお役に立ちたいと思っています。
 イラクでは、現地の保健省や医師たち、また化学兵器の後遺症に苦しむ人たちの面倒を見ていたリバプール大学などと協力しながら、病院を建てるところまでやりました。その運営ソフトをベースに、日本の地域医療の連携の仕組みだとか、国内外の緊急医療体制の整備だとかをチューンナップしていきたいなと。

國井:いいですね。僕はかつて栃木の山村の診療所で働きながら、年に2回ほどソマリアなどの途上国の医療支援に行くということをやっていたんだけど、自分がいなくなると無医村になるので、代診の医者を探さなきゃならない。北海道から岡山まで、数人の友人に交代で代診に来てもらいました。こんな時には村長に掛け合うんです。「村にも患者さんいっぱいいるけど、ソマリアっていう国は今、緊急状態で子どもがたくさん死んでる。だから10日間だけ休みをください。ちゃんと代診の先生を呼ぶから」って。そしたら、「先生、体に気いつけていって来い」って、餞別までくれました。でも、そのあと、ソマリア緊急支援のプロジェクトを立ち上げて、村にいながら金集めや人集めをするのは簡単じゃない。

大西:それは國井さん個人の力量があるからできたのであって、普通は無理ですよ。

 今、日本には3000くらいの中堅病院がありますが、半分以上は資金ショートのプレッシャーを抱えていると言われています。そして実際に資金がショートしそうな時は月利2%とかで借り入れて、診療報酬が入ってくるまでのタイムラグを埋めている。つまり、病院向けに貸し付けをするビジネスがあるということです。
 だったら、僕らは2%もいらないので、マネーフロー自体を管理して健全化するので一緒にやりませんか、と。我々は診療報酬に頼る病院とは違う資金基盤を持ちながら、運営のノウハウを持っているから、一緒にやるとシナジーが出るはずなんです。
 日本の病院の弱いところを我々がマネジメント面でサポートして、ネットワークを整備すれば、例えば、緊急時にお医者さんをフレキシブルに派遣するとか、あまり人が行かない地域の医療を交代制で担うとか、そういう仕組みを作ることで、先ほどの“経験埋没”みたいなことも解決できるようになるはずです。

國井:面白い。やっぱりメカニズムを作っていかないとね。

大西:そうなんです。例えば、アフリカでは外科医がセスナでサファリを飛び回る「空飛ぶ医療団」がありますが、僕らも日本やアジアをベースにそういう仕組みを作って、できることをもっと広げたいと準備を進めているところです。

 我々は自らを国際協力NGOではなく、グローバルに機能するソーシャル・イノベーション・プラットフォームであると改めて定義しようとしています。もちろん、グローバルな基準でローカルな活動もするし、あるいは、ローカルな活動で培ったものをグローバルに展開もする。とにかくいろいろな分野を手がけながら、新たなシナジーをどんどん生んでいこう、と。

 例えば、アボカドとわさび醤油。

國井:カリフォルニアロールね。

大西:まずアボカドにわさび醤油を付けて食べるということはたぶん日本人は考えられなかった。ベーシックなイノベーションはこの組み合わせに気づいたことで、そこから発展して今や世界中でカリフォルニアロールが食べられている。
 じゃあ我々の活動はどうか。これまでやってきたことに満足して、もっともっとできることがあるのに、それを見逃していないか。いったん常識の枠を外して、いろいろなものを組み合わせて試してみよう。そういうことをやり出したんです。「国際協力NGO」として自分たちを定義している限り、国際協力マーケットの限界に制約されてしまう。だから柔軟に戦略を組み替えて、国内のニーズにも対応するし、今までNGO、NPOがやってなかったところもやっていこうと。

國井:いわゆる国際基準のやり方を持ってきた方がいい場合もあるし、日本ならではのやり方、基準作りということもあるでしょう。

大西:東日本大震災では、まず発生直後のエマージェンシーの時は企業の協力を非常に得られたんです。それはお金をもらったとか物をもらっただけじゃなくて、例えば、ロジの面では引っ越し業者さんが4トントラックを毎日10台以上提供してくれて、必要とする物資をすぐにダイレクトインできて。しかも、ドライバーさんたちが搬送先で写メを撮って報告してくれるので、あらゆるところにトラックが行っていても状況を把握できました。
 日頃から業務報告を徹底している日本の引っ越し業者の強みがあればこそ、あの混乱した中でもスムーズに運営することができた。これからも本業の強みを生かしてコミットしようという企業がどんどん出てきてほしいし、もちろん初めての経験となれば戸惑うことだらけになるでしょうが、そんな時は我々が水先案内人をやればいい話で。
 また、その後の復興期には我々が財団を作って、被災した企業の劣後社債を引き受けて、財務状況を好転させて地銀や信用組合からの融資が受けられるようにしたり。これも先進国ならではの話ですが、自分たちがヘッジの側に回るような、今までやってこなかったことも手掛けました。いずれはこうした経験が、今度は国際協力の中でも生かせるようになればいいなと。

コメント0

「終わりなき戦い」のバックナンバー

一覧

「「世界基準で救う」ために必要なこととは」の著者

國井 修

國井 修(くにい・おさむ)

「グローバルファンド」戦略・投資・効果局長

国際緊急援助NGO副代表として、ソマリア、カンボジアなどの緊急医療援助に従事。国立国際医療センター、外務省、UNICEFニューヨーク本部、同ミャンマー事務所、同ソマリア支援センターなどを経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

短期保有者のいいようにさせたら、中長期で保有したいと考えている株主はどうなるのか。

貝沼 由久 ミネベアミツミ社長