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なぜ中国人は日本のアニメに心奪われるのか

明治大学法学部・加藤 徹 教授に聞く【前編】

2016年3月8日(火)

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 私はこれまで、日本ではニュースとして報道されることがあまりない中国人の日常生活や考え方などを、細々とコラムに書いてきた。とくに若者を取材していて飛び出してくるのは、彼らの驚くほどの“日本アニメ愛”だ。日本オタクだけでなく、幅広い層の一般中国人に日本文化が受け入れられていることを感じてきた。その背景には一体、何があるのか――。そんなことを考えていた折、明治大学・加藤徹教授の授業「東アジア芸術論」を見学する機会を得、講義の中で話された中国と日本のつながりについて深い感銘を受けた。加藤教授は中国の京劇が専門で、日中の比較文化や芸術、サブカルチャーに詳しい。改めて加藤教授にロングインタビューを行い、「中国人の日本アニメ愛」【前編】と「日本に受け入れられた中国文化」【後編】についてお話をうかがった。

(聞き手:中島恵)

加藤先生の授業は本当におもしろく、ためになることばかりで、四半世紀以上中国と付き合ってきた私でも初めて知ることが多く、目からウロコでした。授業の途中で先生がアコーディオンに似た楽器(コンサーティーナ)を演奏したことにびっくり(笑)。授業の面白さはもちろんのこと、プラスアルファの余白の部分もとても楽しかったです。

加藤徹(かとう・とおる)氏
明治大学法学部教授。1963年、東京都生まれ。東京大学文学部、同大学院で中国文学を専攻。北京大学に留学。広島大学助教授などを経て、2007年から現職。専攻は京劇史。著書に『京劇―「政治の国」の俳優群像』(中公叢書)『西太后』(中央公論新社)『貝と羊の中国人』(新潮社)などがある。

加藤:いやいや。私の授業から余計なものをのぞいたら、なんにも残りませんから(笑)

「東アジア芸術論」は加藤先生が所属する法学部ではなく、国際日本学部の授業なのですね。

加藤:そうなんです。国際日本学部は2008年に新設された明治大学の新しい学部で、東京のJR中野駅近くの中野キャンパスにあります。外国人留学生も比較的多いです。中島さんの新刊のタイトルにもあった「爆買い」ではありませんけど、最近は「爆学」というか「爆留学」というか、留学生が非常に増えていますね。

「爆学」っておもしろい表現ですね。

加藤:「爆」なんとかというのはもともとサブカルチャーの用語で、(爆)と書いたりしますが、たとえば井上純一さんの有名なマンガ『中国嫁日記』を読みますと、奥さんが初めて出てくる場面で「月(ゆえ)、爆誕」とか書かれていますね。「月、爆発的に誕生する」という意味らしいんですが。爆笑という表現は昔からありましたが、爆睡は最近あまり聞かなくなりましたね。爆買いも俗語のひとつだと思います。

なるほど。私はオタク用語はさっぱりわからないんですけど、「爆買い」という単語はそういう流れで出てきたのかもしれませんね。ところで、授業の名前から想像して難しい内容なのかと思いきや、先生の授業は身近な例(たとえばラーメンなど)を挙げて説明してくださるので、とてもわかりやすかったです。「下学上達」(身近で容易なことから学んで、だんだん高度で深い道理に通じること)ということから説明されているのですね。

加藤:身近な例だと学生たちもイメージしやすいので。私が単にラーメン好きということもありますけど(笑)。スケールは違っても、物事の本質は同じということがよくあります。たとえば、2008年にアメリカで公開された『ラーメンガール』というユニークな映画があるんですが、アメリカ人女性が日本のラーメンの哲学に感動して来日し、修業をするという内容。ラーメンに見る日本文化とか、おかみさんとアメリカ人女性の文化摩擦などが表現されている。身近な話題に引き寄せて考えるとわかりやすいと思います。

「芸術を文化だと甘く見ると痛い目に遭う」

「芸術は文化ではない」いうことも先生は強調されていますね。

加藤:はい、「芸術を文化だと甘く見ると痛い目に遭う」という意味で(笑)。芸術には政治、経済、文化という3つの視点があります。芸術=文化、というわけではありません。ゴッホの名画『ひまわり』だってバブル経済のときに売買されたし、アラブの金持ちの投資の対象は芸術品だったりします。日中関係が最悪のときには中国の京劇団が来日しづらい雰囲気がありました。アニメやラーメンだって日常的な芸術のひとつ、といえなくはないですね。

そうですね。

加藤:芸術というとモノという誤解がありますが、コトの芸術もいくらでもある。また爆買いの話に戻りますが(笑)、人間は豊かになってくると、モノではなくコト、つまり体験や思い出などを求めるようになる。富裕層の中国人の旅行が、今その段階に入って旅行を楽しんできていますが、まさしくそうなんだと思います。茶道とか演劇とか音楽などもそのひとつです。「立って半畳、寝て1畳、天下取っても2合半」ということわざがありますが、人間というのは、アラブの富豪もホームレスも、享受できるモノの量は大差ないということですね。

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「なぜ中国人は日本のアニメに心奪われるのか」の著者

中島 恵

中島 恵(なかじま・けい)

ジャーナリスト

1967年、山梨県生まれ。1990年、日刊工業新聞社に入社。退職後、香港中文大学に留学。1996年より、中国、台湾、香港、東南アジアのビジネス事情、社会事情などを執筆している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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