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シャープ問題で考える日本の産業競争力の保ち方

日本勢・韓国勢の巻き返しは可能か?

2016年3月24日(木)

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中小型液晶事業での韓国勢も苦境に

 前回の3月10日のコラムでは、これからがシャープの正念場であることを記述し、決して楽観的な状況ではないことを述べた。その直後に、グローバルな中小型液晶パネル業界における大きなニュースが飛び込んできた。世界のトップメーカーである韓国サムスンディスプレイとLGディスプレイが同時に、既存の液晶パネル工場の一部を閉鎖したこと、そして今後も閉鎖を進めていくことを発表したのだ。

 具体的には、サムスンディスプレイの場合、韓国内の液晶パネルは8ラインあったが、5ラインを2015年内に閉鎖したという。昨年12月に閉鎖した天安(チョナン)の設備は中国企業に売却したともいう。残りの3本のラインのうち1本は、アモルファスシリコン基盤工程から低温シリコン多結晶化(LTPS)工程に転換した模様だ。この結果、液晶パネルの生産ラインは第5世代、第7世代、第8世代の3本へと激減した。

 一方のLGディスプレイは、11本ある液晶パネルラインのうち、1ラインは既に研究用へと転換しており、事実上、生産停止とした。さらに、亀尾(グミ)の2本のラインを2017年から生産を中断すると表明している。その2本とは、1997年に第3.5世代として稼働させたラインと、2000年に第4世代として稼動させたラインに相当する。

 両社の液晶パネルラインが老朽化してきていること、そこに新興勢力の中国企業がここ1~2年の間に技術力と事業力を飛躍的に伸ばし、価格競争力で猛烈に攻勢をかけていることが、韓国のトップ2社を苦境に追い詰めている構図だ。実際に韓国のトップ2社も採算が取れない状況になっているという。

 それだけにとどまらず、中国企業は今後、大型液晶パネルと有機EL(エレクトロルミネセンス)についても事業化を進める計画であり、中小型液晶パネルと同様な状況が訪れると予測される。強力な液晶パネル事業を展開してきた韓国の両社だからこそ、現実は相当深刻である。

 トップメーカーのこのような事業判断は、今後のシャープのビジネスモデルにも強烈な逆風が吹いていることを物語っている。そんな中で、また一段と採算に厳しい鴻海精密工業との現実が襲い掛かっているのではないか。

 シャープに対する鴻海の支援がいささか遅れている。シャープの思惑とは裏腹に、鴻海が出資に対する姿勢を慎重に進めている。このことは、今後のシャープの生き残りを占う指標とも見える。

 買収劇の序幕段階でこのような展開になっているため、先行き不安は否めない。逆に、鴻海のしたたかな交渉力と自信が見えてくる。それだけに、シャープの生き残りをかけた今後の展開に注目が集まる。ブランドの持続的維持、社員の処遇、役員の入れ替え等、待ち構える激変の雲行きを感じるのは、筆者だけではないと思う。

 鴻海との買収契約はいずれ成立するとは思うが、そうなった段階でも上記の韓国勢の液晶パネル生産ラインの操業停止に対し、どのような戦略を展開するのか、その課題は容易ではないと映る。

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「シャープ問題で考える日本の産業競争力の保ち方」の著者

佐藤 登

佐藤 登(さとう・のぼる)

名古屋大学客員教授

1978年、本田技研工業に入社、車体の腐食防食技術の開発に従事。90年に本田技術研究所の基礎研究部門へ異動、電気自動車用の電池開発部門を築く。2004年、サムスンSDI常務に就任。2013年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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