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燃費不正事件を未然に防止する今後の抑止力

三菱自動車とスズキの不正事件が引き金に

2016年5月26日(木)

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 一連の三菱自動車の燃費不正事件が明るみになり、業界への波紋は大きさを増している。既に、相川社長は経営責任を取る形で辞任を表明した。決められた走行条件でのデータを取得せずに、有利な走行抵抗を採択し机上計算で算出した数値を申告したわけだが、本来表示されるべき燃費とは10~15%の乖離があったとされている。

 これまでの調査では、当初の燃費目標であった26.4km/Lから29.2km/Lまで、5回にわたる上方修正、そして目標燃費必達に向けた経営陣からの強い要求、それを受けての開発部門の部長級社員からの不正につながる直接の指示があったと報道された。

 一方、国内での販売にも大きく影響し、新車販売が落ち込んでいるのはもちろん、中古車市場でも対象車種で20~30%価格下落が起こっているという。ここで下げ止まりするかどうかは、国土交通省が実施する燃費再測定の結果次第で影響を受ける可能性があるだろう。

 さらに、国が定めた規定と異なる方法で燃費を計測していたプラグインハイブリッド(PHV)「アウトランダー」でも不正が見つかり、電動車両(xEV)領域まで拡大した。こうなると、どこまでが法的に適合していてどこまでが適合していないのかの不信感はぬぐえない感がある。

 そして今度は、スズキの不正問題が発覚した。前回のコラム「虚偽の科学や技術はコンプライアンス欠如が原因」(5月12日)を執筆した後のことだった。実際の燃費測定を国が指定する方法とは異なる形で設定し、燃費が良くなるような計測手段を用いた。軽自動車の雄として、ダイハツを追いかける同社だけに、自動車業界での大きな問題と発展し、消費者への影響も拡大している。

 2010年以降の軽自動車16車種、他社供給分11車種の計27車種、約210万台が対象となっている。国が定めている「楕行法」の実走試験ではなく、個別のデータを組み合わせての不正だったとされている。燃費誤差に関しては最大5%程度とスズキは説明しているが、そのデータに関しても今後の検証が急がれる。

 一方、米国ではゼネラル・モーターズ(GM)もSUV(多目的スポーツ車)の3車種で燃費不正表示をしていたことが、つい最近明らかにされ、数値的には0.9km/Lの違いがあるとされた。それによって、消費者への損害賠償を最大10万円にすると決定した。現時点での総額は110億円程度と予想されている。

 今後、正しい燃費表示に修正すると言っているが、それで収拾がつくかどうかは定かではなく、集団訴訟のような形に発展すれば事態は急速に悪化する。

 過去には2012年11月、米国環境保護局(EPA)が、韓国の現代自動車と傘下の起亜自動車を、米国において燃費を誇大表示しているとして訴えた。約90万台が対象となり、制裁金は当時のレートで114億円程度に及ぶ巨額の賠償責任を課せられた。訴訟社会の米国で不正を起こせば、想像以上の負担が経営を圧迫するという典型的な事例であった。

 しかし今回、GMで上記問題が発覚したことは、現代自動車の事件を他山の石として生かせなかったことになる。

 昨秋は、独フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル排ガスと二酸化炭素排出不正事件が世界に大きな衝撃を与えた。ともかく、日韓欧米の自動車各社が近年、このような不正事件を引き起こしたことになる。

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「燃費不正事件を未然に防止する今後の抑止力」の著者

佐藤 登

佐藤 登(さとう・のぼる)

名古屋大学客員教授

1978年、本田技研工業に入社、車体の腐食防食技術の開発に従事。90年に本田技術研究所の基礎研究部門へ異動、電気自動車用の電池開発部門を築く。2004年、サムスンSDI常務に就任。2013年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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