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見通しが立たない東芝と絶好調サムスンの違い

経営戦略の差がもたらす産業界の命運

2017年7月13日(木)

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サムスンの勢いは増すばかり

 東芝の半導体事業売却の進展が難航している中、サムスン電子の投資攻勢が続く。従来の有力事業であった薄型テレビや携帯電話から、スマホ事業に成長の軸を変えて成功してきた。そして、ここ最近では有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)や半導体事業の好調が目立つ。

 東芝のNANDフラッシュメモリー事業は順調なものの、DRAM事業を持っていないことがサムスンに対する劣勢である。すなわち、サムスン電子の半導体事業の強みはDRAMとNANDフラッシュメモリーの両方を持っていることにある。半導体事業はスーパーサイクル(長期的好況)とも言われ、その大波に上手く乗っているのがサムスン電子である。

 直近のDRAM事業は、サムスン電子の利益を30%程度稼いだとされている(日本経済新聞7月8日付け)。NAND型フラッシュメモリーの容量競争は日進月歩の最中にある。縦軸方向に回路を積層して進化を求める三次元方式の製造技術を推し進めているサムスンに対し、東芝は先端技術と言うが、どこまで対抗できるだろうか?

 事実、7月7日に発表したサムスン電子の2017年4~6月期連結決算によれば、売上高は約6兆円、営業利益は1兆3700億円に達し、前年同期比で72%増だと言う。DRAMもNANDも成長を続けているサムスンのビジネスモデルにとって、追い風が続いている中、NANDメモリー事業の売却でもたついている東芝とは全く状況が異なる。

 DRAMが稼ぎ頭となっている事業ベースに、東芝の得意なNAND事業をも先導しているサムスンの事業構造は、今後も拡大していくと考えられる。売上高、営業利益、営業利益率とも過去最高を記録したと言うから、典型的な攻めの韓国企業のビジネスモデルが浮き彫りされる。特に営業利益率は米アップル、米フェイスブック、米アマゾンを超えて23.3%で、初の20%台超えを遂げたと言う。

 そのサムスンが東芝のもたつきを横目で見ながら、更に大々的な投資戦略を図る。NAND韓国工場に約2兆円の設備投資を行うのだから、東芝事業の先行きとは180度方向性が異なっている。完全に揺さぶりをかけて競合他社を振り落とすというビジネス構図を描いている。

 サムスン電子ほどではないにしても、韓国LG電子も業績は好調だ。LG電子の4~6月期の売上高は1兆4360億円と前年同期比で3.9%増、営業利益は同13.6%増の655億円に達した。生活家電が実質的なけん引役を果たしとのこと。一方、スマホモバイルコミュニケーション部門は、マーケティング費用の支出が増えたことで赤字と報告されている。ともかく、事業構造の改善効果が現れれば、下半期も好業績が期待される。

 こんな議論をすると、「韓国企業は日本の技術を模倣し、あるいは盗んで成長した」と揶揄する日本人の言い分をよく耳にする。賢く考え、研究開発投資や設備投資へと実行に移せれば勝者になれる。

 しかし、フロントランナーがいつまでも先頭を走れるとは限らない。フォロワーはいかにしてフロントランナーを追い越そうとするかを考えるからであり、これは産業界だけではなく、学術界、スポーツ界でも共通する現象だ。今の半導体事業ではサムスン電子の先を走っている企業はないのだから、サムスンがオリジナルな研究開発により事業を先導している構図になっている。それだけ技術力が高いことを意味している。

 また、「東芝の半導体技術が海外へ渡ったら技術流出につながり、一層、日本の産業が悪化する」との発言が日本では横行する。そう言う意見がある中で少し冷静に考えたい。技術流出とは、世界の最先端技術が流出して事業展開に問題を生じると言う定義のように思う。では、東芝のNAND事業は世界の最先端にあるのだろうか? 半導体産業に従事している関係者のひとり、ウィンコンサルタント社長の坂本幸雄氏(元エルピーダメモリ社長)によれば、「東芝はサムスン電子の1年遅れ」だと意見を述べている(日本経済新聞2017年6月27日付け)。それを認めたくない日本人と日本企業の本音をわからなくもないが、基本的には歪んだ考え方のように思う。

 サムスン電子はNAND半導体事業の拠点として中国の西安に生産工場を設立した。それは、最先端半導体製造工場を中国国内に設置しても技術流出防止に関しては自信を持っているからにほかならない。それだけ技術が数段進んでいることで模倣もできないというプライドも働いているだろう。

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「見通しが立たない東芝と絶好調サムスンの違い」の著者

佐藤 登

佐藤 登(さとう・のぼる)

名古屋大学客員教授

1978年、本田技研工業に入社、車体の腐食防食技術の開発に従事。90年に本田技術研究所の基礎研究部門へ異動、電気自動車用の電池開発部門を築く。2004年、サムスンSDI常務に就任。2013年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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