• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

協業の成功と失敗を分ける要素は何か?

日独協業の勝算 韓独協業の失敗

2016年7月14日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 日本の産業界、とりわけ自動車業界、電機業界、電池業界、化学業界等々、これまでは海外の企業との協業や合弁設立などに関して、決して積極的ではなかったように思う。これは、相手と組まなくても独自で事業展開ができてきたというようにも表現できる。

 しかし、例えば業界としては強みをもっている自動車業界でも、上記の点で大きな変化が出ている。電動化や自動運転などビジネスモデルが多岐にわたる、あるいはこれまで以上にコストを下げなくてはならないなど多くの課題が出てきていることが背景にある。

 従って国境を越えた協業は今後ますます増加するはずだ。またそのように取り組まないとガラパゴス化して事業拡大ができにくくなるリスクも懸念される。

 一方で、海外企業との協業は文化や考え方の相違からうまく進まないケースもあり、日本国内間での協業に比べたら、ハードルは数段高いと言える。うまく進めるようにするためには、失敗の事例などをレビューして考えることが必要だ。

 韓国企業とドイツ企業の協業事例で言えば、いろいろあるものの、まずは筆者が直接関わった事例を通じて考えてみたい。所属していた韓国サムスンSDIと自動車業界の大手ティア1である独ボッシュとの車載用電池事業が、それにあたる。

 足かけ2年ほどのケーススタディを実施後に、サムスンSDIとボッシュとの合弁会社が「SBリモーティブ」としてスタートしたのは2008年6月のことだった。

 サムスンSDIにて行われた発足式には筆者も出席した。もっとも、このような合弁会社を設立しなくても、本来は電池メーカーであるサムスンSDIがボッシュのビジネスモデルまで展開できるティア1になることの方が非常に重要な形式であったので、筆者としては協業に関して当時のCEOに反対意見を述べた覚えがある。

 しかし、自動車産業分野への進出は、サムスングループの中でも限られたビジネスしかなかったこと、リチウムイオン電池(LIB)もモバイル用のビジネスは力強く展開していたものの、車載用LIBは2003年頃からの研究開発を進めたばかりだったので、ほとんどの幹部役員が自動車業界の中でのビジネスモードを全く理解できていなかったことなどから、協業という形になった。

 ボッシュにしてみればLIB本体の事業がなく、またサムスンSDIにとってはボッシュを通じて、特に欧州自動車業界に組み入るという相互補完的な関係だ。そのために、このような協業を始めることになったという背景があった。この部分については以前の本コラムでも紹介したが、そこからWin-Winを標榜したビジネスモデルを展開していった。

 しかし、それから4年後の2012年、両社は合弁事業を解消した。その4年間で何が起きたか、そして何故、合弁を解消しなければならなかったか、一つの教訓であり教材でもある。今後の合弁事業を検討する場合に参考になるものと思う。

合弁事業の落とし穴

 両社は協業を成功させるべく、相互に駐在員を送り込んだ。サムスンSDIからはドイツのボッシュへ若手管理職を派遣、一方、ボッシュからは役員を含めて数名が韓国へ赴任。両社は相互交流で認識し合い、それぞれの役割でビジネスモデルを高い次元に展開しようと試みていた。

 ところが、2年も過ぎたころには、ぎくしゃくとした関係が露呈するに至った。ボッシュの駐在員は、サムスンSDIのパイロットプラントで車載用LIBの開発から生産技術、そして生産システムの隅々まで観察し、分析していた。他方、サムスンSDIのドイツ駐在員は、ボッシュの開発現場に足を踏み入れることが制限され、与えられた事務室で業務を行うといったスタイルで、双方の居場所は対等という位置づけではなかった。

コメント1件コメント/レビュー

ボッシュとサムスンSDIの提携失敗の話は、SUZUKIとVWのいざこざを思い起こさせますし、風立ちぬにもそんなシーンがありました。元から一方に悪意(ギブ無しでテイクだけを画策する)があったと片づければ事は簡単なのですが、同じドイツ企業でも協働できている例もある事を鑑みるに、提携を進める中で(上層部から現場に至るまでのスケールが大きい企業の場合は特に)実際の事業の開始に先立って両社の全社に渡り、提携の在るべき姿について十分なコンセンサスを形成しておく必要性を感じます。関連部門の一部にでも、提携の意義とあるべき形が共有されていないと、そこで下される判断や行われる業務の形が提携の全体をゆがめる影響を与え、小さなほころびが、やがて提携全体を崩してしまいかねないと危惧します。文化の異なる企業同士が歩調を合わせるにあたっては、予期せぬ食い違いが多かれ少なかれ生まれます。二人三脚では、どう歩調を合わせて加速するか双方が工夫・努力する事が欠かせません。成功すれば成果は大きいですが、失敗すればお互いの足を引っ張るので、相互の善意に期待するだけでなく、現実的な事前準備が欠かせないと感じます。(2016/07/14 10:53)

「技術経営――日本の強み・韓国の強み」のバックナンバー

一覧

「協業の成功と失敗を分ける要素は何か?」の著者

佐藤 登

佐藤 登(さとう・のぼる)

名古屋大学客員教授

1978年、本田技研工業に入社、車体の腐食防食技術の開発に従事。90年に本田技術研究所の基礎研究部門へ異動、電気自動車用の電池開発部門を築く。2004年、サムスンSDI常務に就任。2013年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ボッシュとサムスンSDIの提携失敗の話は、SUZUKIとVWのいざこざを思い起こさせますし、風立ちぬにもそんなシーンがありました。元から一方に悪意(ギブ無しでテイクだけを画策する)があったと片づければ事は簡単なのですが、同じドイツ企業でも協働できている例もある事を鑑みるに、提携を進める中で(上層部から現場に至るまでのスケールが大きい企業の場合は特に)実際の事業の開始に先立って両社の全社に渡り、提携の在るべき姿について十分なコンセンサスを形成しておく必要性を感じます。関連部門の一部にでも、提携の意義とあるべき形が共有されていないと、そこで下される判断や行われる業務の形が提携の全体をゆがめる影響を与え、小さなほころびが、やがて提携全体を崩してしまいかねないと危惧します。文化の異なる企業同士が歩調を合わせるにあたっては、予期せぬ食い違いが多かれ少なかれ生まれます。二人三脚では、どう歩調を合わせて加速するか双方が工夫・努力する事が欠かせません。成功すれば成果は大きいですが、失敗すればお互いの足を引っ張るので、相互の善意に期待するだけでなく、現実的な事前準備が欠かせないと感じます。(2016/07/14 10:53)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

テスラのような会社と一緒にできないのなら、パナソニックはイノベーションを起こせないだろう。

津賀 一宏 パナソニック社長