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協業の成功と失敗を分ける要素は何か?

日独協業の勝算 韓独協業の失敗

2016年7月14日(木)

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 日本の産業界、とりわけ自動車業界、電機業界、電池業界、化学業界等々、これまでは海外の企業との協業や合弁設立などに関して、決して積極的ではなかったように思う。これは、相手と組まなくても独自で事業展開ができてきたというようにも表現できる。

 しかし、例えば業界としては強みをもっている自動車業界でも、上記の点で大きな変化が出ている。電動化や自動運転などビジネスモデルが多岐にわたる、あるいはこれまで以上にコストを下げなくてはならないなど多くの課題が出てきていることが背景にある。

 従って国境を越えた協業は今後ますます増加するはずだ。またそのように取り組まないとガラパゴス化して事業拡大ができにくくなるリスクも懸念される。

 一方で、海外企業との協業は文化や考え方の相違からうまく進まないケースもあり、日本国内間での協業に比べたら、ハードルは数段高いと言える。うまく進めるようにするためには、失敗の事例などをレビューして考えることが必要だ。

 韓国企業とドイツ企業の協業事例で言えば、いろいろあるものの、まずは筆者が直接関わった事例を通じて考えてみたい。所属していた韓国サムスンSDIと自動車業界の大手ティア1である独ボッシュとの車載用電池事業が、それにあたる。

 足かけ2年ほどのケーススタディを実施後に、サムスンSDIとボッシュとの合弁会社が「SBリモーティブ」としてスタートしたのは2008年6月のことだった。

 サムスンSDIにて行われた発足式には筆者も出席した。もっとも、このような合弁会社を設立しなくても、本来は電池メーカーであるサムスンSDIがボッシュのビジネスモデルまで展開できるティア1になることの方が非常に重要な形式であったので、筆者としては協業に関して当時のCEOに反対意見を述べた覚えがある。

 しかし、自動車産業分野への進出は、サムスングループの中でも限られたビジネスしかなかったこと、リチウムイオン電池(LIB)もモバイル用のビジネスは力強く展開していたものの、車載用LIBは2003年頃からの研究開発を進めたばかりだったので、ほとんどの幹部役員が自動車業界の中でのビジネスモードを全く理解できていなかったことなどから、協業という形になった。

 ボッシュにしてみればLIB本体の事業がなく、またサムスンSDIにとってはボッシュを通じて、特に欧州自動車業界に組み入るという相互補完的な関係だ。そのために、このような協業を始めることになったという背景があった。この部分については以前の本コラムでも紹介したが、そこからWin-Winを標榜したビジネスモデルを展開していった。

 しかし、それから4年後の2012年、両社は合弁事業を解消した。その4年間で何が起きたか、そして何故、合弁を解消しなければならなかったか、一つの教訓であり教材でもある。今後の合弁事業を検討する場合に参考になるものと思う。

合弁事業の落とし穴

 両社は協業を成功させるべく、相互に駐在員を送り込んだ。サムスンSDIからはドイツのボッシュへ若手管理職を派遣、一方、ボッシュからは役員を含めて数名が韓国へ赴任。両社は相互交流で認識し合い、それぞれの役割でビジネスモデルを高い次元に展開しようと試みていた。

 ところが、2年も過ぎたころには、ぎくしゃくとした関係が露呈するに至った。ボッシュの駐在員は、サムスンSDIのパイロットプラントで車載用LIBの開発から生産技術、そして生産システムの隅々まで観察し、分析していた。他方、サムスンSDIのドイツ駐在員は、ボッシュの開発現場に足を踏み入れることが制限され、与えられた事務室で業務を行うといったスタイルで、双方の居場所は対等という位置づけではなかった。

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「協業の成功と失敗を分ける要素は何か?」の著者

佐藤 登

佐藤 登(さとう・のぼる)

名古屋大学客員教授

1978年、本田技研工業に入社、車体の腐食防食技術の開発に従事。90年に本田技術研究所の基礎研究部門へ異動、電気自動車用の電池開発部門を築く。2004年、サムスンSDI常務に就任。2013年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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