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東芝事件に見る経営側の圧力、ホンダとサムスンの事例

圧力が適切か不適切かは中身の問題

2015年8月6日(木)

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 東芝の経営陣が多数引責辞任した事件は社会的にも大きな波紋を呼んでいる。経営トップ自らが社員に直接圧力をかけたことが経営陣の大辞任を招いたものだが、経営側からの圧力は企業を問わず大なり小なりあるのは事実だ。

 7月21日の日本経済新聞の1面のトップ見出しには、「東芝、組織的に利益操作」と報道されていた。2008年度から14年度の4~12月期まで、利益操作が1562億円あったとされてる。その結果として歴代社長の3人を始め、多くの役員が辞任するという前代未聞の内容である。

 東芝のケースは、これまであまり例を見ないほどの事件である。当時、指示を受けた部下の対応もそれぞれであったろう。不服に思いつつも従わざるを得ずに相当なストレスを感じていた幹部も多かったことだろう。

 強い圧力を不服と思い、上層部に進言した者も中にはいただろうが、いたとしたら更迭されていたことだろう。大方は、その圧力に屈して従い、本心にそむかざるを得ない立場をとることになったはずだ。

 企業のコンプライアンスをリードする立場の経営トップが、コンプライアンスを破壊する立場に回ったことを鑑みれば、企業コンプライアンスはどこに存在するのだろうか。今回は、上層部からの圧力について、ホンダとサムスンに在籍していた時代を振り返って考えてみたい。

「技術論議に上下関係はない」を実践した本田宗一郎

 東芝の件は事件とされる内容だが、事件とは言えないまでも、様々な圧力によって生じる問題や歪はいろいろな企業にある。

 以前在籍していたホンダ。最近では、Fitハイブリッド車での5回にわたる前代未聞のリコールが記憶に新しい。開発機種のラッシュで販売時期の厳守を強いた圧力が原因ともされている。600万台体制を目指した経営側の強い締め付けが、大元になっていたと言えるかもしれない。

 また、経営トップの話ではないから質は違うものの、研究開発の現場においても圧力はあって、それは社員に影響を与えた。プライドと面子を意識するあまり、部下や他人の意見を聞かない、部下の自由な動きを規制するなど、枚挙に暇がない。そんな上司がいれば、社員は萎縮する一方だ。

 そんな状況でも強者はいる。例えば、創業者・本田宗一郎との考えがかみ合わず、数カ月にわたって出社拒否をした元社長(1983年~1990年)の久米是志。空冷エンジンを主張する本田宗一郎に対し、水冷エンジンを主張した真っ向対決だった。

 本田宗一郎の意向に従順な姿勢を示した部下もいたであろう。創業者の意向に沿わないなら、「出て行け」と言われても不思議ではない時代だ。

 そんな中、本田宗一郎が偉かった点は、反対意見にも耳を傾け熟考し、最後は「若い人に任せる」と部下を信じたところだ。やがて水冷エンジンは花を咲かせ、本田宗一郎も部下に任せた自身の最終判断が正しかったことを実感する。

 本田宗一郎が残した「技術論議に上下関係はない」という言葉は、こういう彼の実体験に基づいたものである。しかし、そういう名言がホンダの開発現場の隅々まで浸透しているのだろうか。残念ながら答えは「ノー」と言わざるを得ない。

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「東芝事件に見る経営側の圧力、ホンダとサムスンの事例」の著者

佐藤 登

佐藤 登(さとう・のぼる)

名古屋大学客員教授

1978年、本田技研工業に入社、車体の腐食防食技術の開発に従事。90年に本田技術研究所の基礎研究部門へ異動、電気自動車用の電池開発部門を築く。2004年、サムスンSDI常務に就任。2013年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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