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遅すぎたディスプレー産業のオールジャパン

スピード感はグローバル競争の原動力

2016年9月8日(木)

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 8月10日のコラム「ソニー、日産の電池事業撤退の裏にあるもの」では、電池業界再編劇が展開されつつも統合対象社の様々な思惑が重なり、結果として再編劇は途中で幕を閉じたことを、当時者としてかかわった立場から執筆した。

 その延長上に、ソニーは村田製作所へ電池事業を売却、一方の日産自動車はNECとの共同出資会社であるオートモーティブエナジーサプライ(AESC)を切り離し、国内外で売却先を検討中とのこと。両社は結局、別々の路線で事業を手放すことになる。

 この電池業界の再編劇の前には、ディスプレー産業での業界再編が実現した。産業革新機構が主導し2000億円を出資して、2011年8月に、ソニー、東芝、日立製作所の中小型液晶ディスプレー事業が集結し、新生ジャパンディスプレイとして発足した。

 しかし、この統合も実現はしたものの時間を要した。というのも、3社間での覇権争いが原因とも言われ、スピード感のない中で、統合合意まで1年半の歳月を要したことになる。

 韓国のサムスングループにおけるサムスンSDIとサムスン電子のグループ再編によって形づくられたサムスンディスプレーが形成されるまでは、JDIが業界で最大規模となった。ただ大きく違ったことは、再編実現に至るまでの所要時間、すなわちスピード感に大きな差があったことだ。

 JDIが事業再編から事業化でもたつく間に、韓国のサムスングループとLGグループはスピード感をもって開発、投資、事業化、事業拡大と果敢に勝負に出た。その結果、両社は現在、力強いビジネスを展開しているのは紛れもない事実である。さらには、韓国勢だけでなく中国勢も同様に市場攻略を虎視眈々と狙っている。

付加価値を創るビジネスモデル

 韓国勢は日本勢の後追いで物真似のビジネスと揶揄する向きもあるが、この事業の中枢となる有機EL(エレクトロルミネセンス)に関しては、その論理は全く当てはまらない。

 サムスンディスプレーが形成される前から、グループ企業であるサムスンSDIが開発から事業化を執り行った。研究開発の陣頭指揮をとったのは、筆者がサムスンSDIで研究開発戦略を一緒に練ったジョン・ホギュン副社長であった。事業化は2007年に実現され、業界に旋風を巻き起こした。

 2007年と言えば、「有機ELの事業化はコスト高になるため液晶事業に対抗して勝ち目はない」と日本勢が判断したころだ。その結果、ほとんどの日本勢が有機ELの事業化を断念した。有機ELに関わっていた開発陣は居場所を失い、多くの人材が海外を含めて転籍した。

 ところが、韓国勢はコスト高のハンディよりも、有機ELの自発光機能でバックライト光源が不要になることでの薄型化の実現、画像の鮮明度、低電力消費のメリットを付加価値として開発訴求した。すなわち、マイナス面よりプラス面に重点を置いて、ビジネスチャンスと考え展開したのである。

 この段階で、日本勢は韓国勢の進め方に驚き、焦りを感じたはずだ。モバイル用ではサムスンSDIのみが事業化できたことから、先行利益を得る形で付加価値を高めてビジネスを展開できた。そして、事業化から2年ほどで収益を出せるようになったのも、スピード感ある経営判断があったからだ。

 2016年には21%のスマホが有機ELを搭載する見通しで、その中でサムスン電子のスマホでは70%に達する予測という。さらに、19年には全体で40%まで拡大するだろうとのこと。

 16年1Q時点でのサムスンディスプレーの有機EL出荷数は、前年同期比63%増の約8700万枚となったようだ。出荷先内訳では、サムスン電子が73.7%、中国のOPPOが6.9%、同VIVOが6.7%、同Huaweiが2.8%等となっている模様だ。

 それだけに、サムスンディスプレーの有機ELのスマホ各社への供給が逼迫しているとのことで、もはやモバイル用では有機ELの存在は絶大であり、完全に普及段階に突入した。

 一方のLGディスプレーはモバイル用では後れをとったものの、大型パネル事業で巻き返し、有機ELテレビを業界初で実現した。そして今も、ビジネスを積極的に拡大中だ。

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「遅すぎたディスプレー産業のオールジャパン」の著者

佐藤 登

佐藤 登(さとう・のぼる)

名古屋大学客員教授

1978年、本田技研工業に入社、車体の腐食防食技術の開発に従事。90年に本田技術研究所の基礎研究部門へ異動、電気自動車用の電池開発部門を築く。2004年、サムスンSDI常務に就任。2013年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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