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VWが不正に至った3つの問題

ドイツ工業製品への逆風と車両電動化への追い風

2015年10月8日(木)

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 前回のコラムでは、ドイツの工業製品の信頼性、ブランド力、商品競争力をたたえた。しかしその直後に、ドイツの自動車業界の雄の一角をなすフォルクスワーゲン(VW)が、ディーゼル車において不正ソフトを適用したという前代未聞の大事件が発生し、世界を驚かせ、大きな波紋を呼んでいる。

 VWは欧州の自動車市場の25%を握っており、中国市場においても日米欧の自動車各社に先駆けて市場を開拓し、トップクラスの地位を確立している。世界市場においては1000万台超の販売台数をほこり、トヨタ自動車とトップの攻防を繰り広げている。それだけに、深刻な問題となっている。

 現在までの調査によれば、不正は最近ではなく、さかのぼること2005年頃の開発に始まり、08年から適用し始めたとのこと。VW乗用車部門のエンジン開発部門が、苦戦していた米国事業を立て直すために、ディーゼル車の排ガス試験の時だけ排ガス量を減らすソフトを適用する判断をしたという。

 そもそも、米国における窒素酸化物(NOx)排出基準は、欧州の基準より厳しく、開発側には大きな負担となっていた。米国ウエストバージニア大学が実施した実際の路上想定での試験の結果、NOx基準値の35倍を検出したことが分かり、不正ソフトの存在が発覚した。

 14年5月に通報を受けた米国環境保護局(EPA)はVWの調査を始めたものの、VW側の説明に納得せずに、16年発売予定の新車種の認定を承認しなかった。その結果として、VWは不正ソフト適用の事実を認めたという。

 11年には開発現場からソフトウエア適用の違法性に関して、開発部門の技術経営トップに指摘したとのことだが、開発トップであったハインツ・ヤーコブが取り合わなかったと報道されている。

 ところで欧州市場の乗用車のうち、53.1%をディーゼル車が占めるのに対し、米国では1%、日本では1.7%という状況。特に米国は、ガソリン自体がもともと安いので、燃費勝負で消費者マインドをくすぐるには厳しい市場である。すなわち、ディーゼル車の入り込む余地が非常に狭い。

 10年の長きにわたって不正が続いていたことに、怒り心頭の消費者も世界規模で数多いことだろう。対象車は、EA189ディーゼルエンジンを搭載した1100万台規模に達するという。しかし、その台数に対処すればそれで済むというレベルではなく、いろいろな波及問題が浮上する。米国では制裁金が2兆2千億円規模になるとの見込み、さらに集団訴訟事件に発展していく雲行きである。

 これだけの長期間における不正が続いたのは組織ぐるみという感は否めないと、ドイツのマスコミは報道している。

 9月22日のVWの株は、事件発覚後の2日間で40%程度下落したとのこと。VWだけの問題ではなく、今回の事件とは関係のない日本勢の自動車各社の株まで大きく下振れ、その他、自動車部品メーカーの株価下落も引き起こしたほど影響は深刻だ。

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「VWが不正に至った3つの問題」の著者

佐藤 登

佐藤 登(さとう・のぼる)

名古屋大学客員教授

1978年、本田技研工業に入社、車体の腐食防食技術の開発に従事。90年に本田技術研究所の基礎研究部門へ異動、電気自動車用の電池開発部門を築く。2004年、サムスンSDI常務に就任。2013年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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