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焦点が定まらない「働き方改革」は前途多難

安倍首相は「人口動態に全く懸念なし」と明言

2017年3月21日(火)

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「残業代ゼロ」横行の懸念から、今も導入に至らず

 ただ、上記の方針を貫徹しようとする場合、現実には問題点がいくつもある。たとえば、①「成果」を公平かつ客観的に評価して給与の大小に結びつける仕組みを作ることはどこまで可能か、②制度が悪用されて「残業代ゼロ」が横行してしまう労働者が不利益を被ることにならないか、といった点である。この②のリスクをもっぱら前面に出して、労働組合の側は「ホワイトカラー・エグゼンプション」に強く反対している。

 2014年6月の成長戦略に「成果で評価される働き方改革」が盛り込まれるなど、時間ではなく成果により評価する「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入を目指す政府の取り組みは、現在に至るまで続いている。

 この間、2013年には、少子化対策の一環で「働き方改革」が注目された。政府の有識者会議「少子化危機突破タスクフォース」は同年5月の提言で、出生率回復に向けた「3本の矢」として、子育て支援、結婚・妊娠・出産支援に加え、働き方改革を挙げた。これをうけて、政府は6月に「少子化危機突破のための緊急対策」を決定。具体的には、子どもが3歳になるまで育児休暇取得や短時間勤務をしやすくするよう企業に働きかけることなどがうたわれた。

そして現在の最大のテーマは、残業時間の法定上限見直し

 そして現在、「働き方改革」の最大のテーマになっているのは、周知の通り、残業時間の法定上限見直しである。政府は年720時間(月平均60時間)を基本的な上限とし、繁忙期は例外として「月100時間未満」まで認める労働基準法改正案を年内に国会に提出して、2019年度にも残業の上限規制を導入する構えである。

 安倍首相は2016年3月25日、第6回一億総活躍国民会議で、「働き方改革」について、次のように発言した。

 第一に、長時間労働の是正であります。長時間労働は、仕事と子育てなどの家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因や女性の活躍を阻む原因となっています。戦後の高度経済成長期以来浸透してきた『睡眠時間が少ないことを自慢し、超多忙なことが生産的だ』といった価値観でありますが、これは段々ですが、そうでもない、生産性もないという雰囲気が、この3年間で大分変わり始めているのではないかと思います。私はまだ若いサラリーマンの頃、こういう価値観があって、8時くらいに帰ろうとするともう帰るの、という雰囲気があったわけですが、企業側に聞いたところ、政府が全体の労働時間の抑制や働き方を変えていくことについて、旗振り役を期待しているかということについて期待している人が90%ということは、皆帰るのだったら帰りたいということに変わり始めている。やっとそういう雰囲気に変わり始めたので、ここは、正に我々が更に背中を押していくことが大切であろうと思います。

官邸のウェブサイト 2016年3月25日「一億総活躍国民会議」

 そして、同年6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」には、次のくだりがある。

(長時間労働の是正)

 長時間労働は、仕事と子育てなどの家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参画を阻む原因となっている。戦後の高度経済成長期以来浸透してきた「睡眠時間が少ないことを自慢し、超多忙なことが生産的だ」といった価値観が、この3年間で変わり始めている。長時間労働の是正は、労働の質を高めることにより、多様なライフスタイルを可能にし、ひいては生産性の向上につながる。今こそ、長時間労働の是正に向けて背中を押していくことが重要である。

官邸のウェブサイト内PDF資料「働き方改革に関する総理発言・閣議決定」

コメント3件コメント/レビュー

何度も申し上げるようですが、人口動態と経済活動には相関関係はあっても、産業革命以前のように比例するようなものではありません。
むしろ生産性の向上のために資金を投じる、要するに「投資」によって経済活動の規模が決まるといっても過言ではありませんが、長引くデフレによって、それが停滞していることが日本の問題の真因でしょう。
働き方改革も呼び声だけであることは否めませんが、生産性の向上により、労働時間を短縮させる方向を目指すことは個人的には正しいことであると認識しています。
犯罪率の増加やフリーライディング、従業員の実質賃金の低下の要因となる可能性の高い外国人労働者の受け入れを叫ぶ上野さんの主張にはどうしても納得がいかないのですが・・・
多忙につき簡略的に【あん肝】(2017/03/21 23:25)

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「焦点が定まらない「働き方改革」は前途多難」の著者

上野 泰也

上野 泰也(うえの・やすなり)

みずほ証券チーフMエコノミスト

会計検査院、富士銀行(現みずほ銀行)、富士証券を経て、2000年10月からみずほ証券チーフマーケットエコノミスト。迅速で的確な経済・マーケットの分析・予測で、市場のプロから高い評価を得ている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

何度も申し上げるようですが、人口動態と経済活動には相関関係はあっても、産業革命以前のように比例するようなものではありません。
むしろ生産性の向上のために資金を投じる、要するに「投資」によって経済活動の規模が決まるといっても過言ではありませんが、長引くデフレによって、それが停滞していることが日本の問題の真因でしょう。
働き方改革も呼び声だけであることは否めませんが、生産性の向上により、労働時間を短縮させる方向を目指すことは個人的には正しいことであると認識しています。
犯罪率の増加やフリーライディング、従業員の実質賃金の低下の要因となる可能性の高い外国人労働者の受け入れを叫ぶ上野さんの主張にはどうしても納得がいかないのですが・・・
多忙につき簡略的に【あん肝】(2017/03/21 23:25)

安倍内閣の「働き方改革」は「一億総活躍」や「女性登用」とスローガンやキャッチコピーは響きが良いが、実際の制度は企業に都合の良いことだけが推進されている。民営の企業にとって、男女の区別なく優秀な人材を優先的に登用し、仕事に見合った処遇(ポジションや給与)を与える事は、決して損にはならない。然し、多くの企業の社内文化として「身を粉にして働く」姿勢やサービス残業も厭わない人材を重く評価する価値観が根底に流れている。自分は米系の会社でサラリーマン生活のほとんどを過ごしたので、「Pay for performance」には全く抵抗がない。ゴーンによる日産改革を実行した後、彼の10億円の年収は「多過ぎるのでは?」と言う議論があった。数千万円の年収で1兆円近い売上を上げる会社を破綻させるのと、10億円払って発展させる二者択一があれば、誰でも後者を選ぶはずなのに、何で議論になるのか?自分の給料と比べて「多過ぎる」という感覚なのだろうか。そこら辺は日本人でありながら理解に苦しむ。自分より若い女性が地位も給料も自分より上である事が我慢出来ないのかも知れない。私自身、結婚してから2年前に妻と別居して遠く離れた故郷で一人暮らしの97歳の母の面倒を見るために別居するまで、食事の用意は朝寝坊の妻故に、朝、パンをトーストしてハムやチーズ、野菜を挟んで食べるくらいの事は毎日の様にやっていたが、本格的な「料理」はした事がなかった。それが今は、朝昼晩と日に三度の食事を全て惣菜も買わずに対応している。市販の惣菜は甘い味付けが多く、口に合わない事もあるが、妻との別居で節約しなければならないという背景が、気分としてその様にさせている。40年振りに帰郷してからすでに2年半が過ぎ、家事に飽きて来たが、他のことで憂さ晴らしをしたりして、何とか保っている。私は現在68歳、もう直ぐ70歳の年金暮らしだ。ましてや、自分の子供達の様な若い世代には「家事、子育ては女の仕事」と信じている男は多くはないだろう。そういった新しい価値観からすると安倍内閣は口先では格好良いことを言うが、実際の政策は「口ほどにもない」ものばかりで、改革は遅々として進まない。アメリカは女性や黒人(マイノリティー)の登用のために罰則付きの数値目標を制度化したことで女性や黒人の地位を高めて来た。(2017/03/21 08:33)

残業時間の規制をする前に、労働時間の厳格な管理をすべきです。
日本の中小企業のどれほどが雇用者の労働時間を管理できているでしょうか?
総労働時間の管理も出来ていない、管理する気も無い雇用者が大勢いるのに、
残業時間など管理できるはずがありません。
管理者、雇用者として、本来の義務を果たさせるべきです。(2017/03/21 03:16)

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