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「損得」と「イベント」から推測する消費増税

2016年4月19日(火)

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消費増税の行方はどうなるのか。8%のまま(再延期)か、予定通り10%へ引き上げか。

 2015年10月から17年4月に一度延期された、8%から10%への消費税率の引き上げの件について今回は考察する。

 景気条項が外されたこともあり、数か月ほど前までは2017年4月の増税実施がコンセンサスだった。しかしその後、景気悪化を背景に、再延期の可能性に含みを持たせる方向へと安倍首相の発言内容が変化しており、「7月ダブル選挙シナリオ」とリンクして市場の関心事の1つになっている。

 この増税をそのまま実施する場合と再延期する場合について「損得比較表」(図1)を作成してみた。

■図1:10%への消費増税 予定通り実施vs.先送り「損得比較表」
「予定通り実施」の場合 「先送り(再延期)」の場合

増税先送りのための条件をどう解釈するか
安倍首相が増税先送りの条件として述べている「リーマンショックや東日本大震災のような重大な事態」「世界経済の収縮」は、いずれも発生していない。

「リーマンショック」当時と異なり、グローバルな金融システムは総じて安定している。

また、「世界経済の収縮」は世界経済のマイナス成長を意味すると解釈できるが、IMF(国際通貨基金)の世界経済見通しは2016年も2017年も、前年比+3%台となっている。
安倍首相は訪米中、4月1日夜の同行記者団との懇談で、「重大な事態があった際に引き上げを延期するかどうかは、専門的見地からの分析を踏まえ、政治判断で決定する」とも述べた。

上記は、経済情勢の厳密な解釈論ではなく、最終的には政治判断が優先するという首相の考えを述べたものだろう。

「国際金融経済分析会合」におけるスティグリッツ教授らの助言や世界経済下振れリスクの大きさで、先送りの根拠は十分とする見方もある。

連立与党の公明党が置かれた立場
「増税先送りは、公明党の選挙戦略を直撃することになる。与党協議を経てようやく勝ち取った軽減税率導入が共に見送りとなり、参院選での最大のアピール材料が『消えうせてしまう』(ベテラン)からだ」(4月4日 時事)

「首相の判断次第では、参院選公約の新たな目玉探しや、広報戦略の見直しを迫られる可能性もある」(4月3日 読売)
「消費税率引き上げの再延期についても衆参同日選とセットとの見方が大勢を占める中で、反対と言わざるを得ないが、実情は微妙に変わりつつある」「公明支持者には低所得層や中小企業経営者も多く、景気の腰折れリスクには敏感だ。ある公明幹部は『予定通り引き上げ、と言い続けるのも苦しい状況になってきた』と本音を漏らす」(4月5日 日経)

消費税法改正の必要性
不要。 秋の臨時国会での法改正が必要になる。安倍首相は「引き上げ延期には法改正が必要だ。その制約要件の中で適時適切に判断していく」と発言。

打ち出される経済対策の規模
経済対策の規模は、増税先送りの場合よりも大きくなる可能性が高い。取り沙汰されているのは所得税の定率減税(前例は、1999年からの所得税の20%相当、個人住民税の15%相当の税額控除<金額に上限あり>。2006年に控除割合を半減し、2007年に廃止)。 経済対策の規模は、予定通りに増税実施の場合よりも小さくなる可能性が高い。

社会保障充実の財源
基本的に問題なし。消費税は社会保障財源化されており、年金・医療・介護・少子化対策に充てられる。 まとまった金額で代替財源を見出すのは困難とみられ、社会保障充実を先送りしない場合、国債の増発に頼る可能性が高い。借金依存がさらに進むほか、財政健全化の目標年次(2020年度までのプライマリーバランス黒字化)は、先送りが避けられないとみられる。

小売店や飲食店の準備期間
小売店や飲食店などが軽減税率導入のための準備(システムの改修や新たな経理方式の導入など)をする期間が短く、間に合わないケースも考えられる。 例えば1年といった期限を定めて延期する場合、準備期間が十分確保できるので、左記の問題は生じない。一方、期限を定めずに凍結する場合、小売業者などによる準備作業が宙に浮いてしまうという望ましくない事態が生じる。

野党からの攻撃
消費増税では民進党内部および野党間で足並みが揃っていないため、政府・与党が被るダメージは小さい。 消費増税先送りは「アベノミクスの失敗」を示しているとして、野党が政府・与党を攻めやすくなる。
(出所)各種報道から筆者作成

コメント8件コメント/レビュー

自民党の幹部議員からも消費税増税は毅然として行うなどとの声が出てますが
少し景気が回復基調になると消費税増税で芽を潰す政策運営は、いいかげんやめて欲しいです。
本気で自民党が消費税増税実行を掲げて選挙に突入したら、景気対策予算がセットだろうと
なんだろうと
生まれて初めて自民党以外に投票する気でいます。(2016/05/23 16:54)

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「「損得」と「イベント」から推測する消費増税」の著者

上野 泰也

上野 泰也(うえの・やすなり)

みずほ証券チーフMエコノミスト

会計検査院、富士銀行(現みずほ銀行)、富士証券を経て、2000年10月からみずほ証券チーフマーケットエコノミスト。迅速で的確な経済・マーケットの分析・予測で、市場のプロから高い評価を得ている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

自民党の幹部議員からも消費税増税は毅然として行うなどとの声が出てますが
少し景気が回復基調になると消費税増税で芽を潰す政策運営は、いいかげんやめて欲しいです。
本気で自民党が消費税増税実行を掲げて選挙に突入したら、景気対策予算がセットだろうと
なんだろうと
生まれて初めて自民党以外に投票する気でいます。(2016/05/23 16:54)

感想など


・国の最高責任者としての立場に加え、プライドの高い安倍首相が「消費税の再増税を先送りするか、しないかという重大な判断を」(政治的な)損得勘定などで決めることは、そもそもあり得ないと思う。

・筆者は――政治評論家気取りで、つまらない政治論評をする暇があるなら、エコノミストとして、――今後承認され執行されるであろう財政政策に関して、望ましい対象、分野や内容、見込まれる費用対効果や財源を手当する手段や方法などを分析・研究して読者に解説してみたらどだろか。(2016/04/20 10:46)

よく見たら、損得表ではなくて条件表のようなものですね。
損得表で考えるのであれば、給与所得者・小規模事業者・中小企業・大企業・海外株主などで、誰が得をし、誰が損をするのかを表現するべきでした。
いずれにしても、この状況下での消費税増税はGDPを押下げ税収の減少にも繋がり(消費税増税の1997年以降から税収は減少している)、最終的には一部の事業者などを除いて誰の得にもならない結果に落ち着くと思われます。
2014年の消費税増税の際も同じコメントを残しましたが、(現状での)消費税増税は財政再建の一助にならないどころかマイナスの効果をもたらしますし、所得と消費を停滞させて日本人を不幸にすることが分かっているので反対します。
2014年の消費税増税後の様々なマイナス点を分析しておきながら同じ過ちを犯すことに警鐘を鳴らさないエコノミストは、エコノミストと名乗るのをやめたほうが良いと思います。
財政出動は単年、消費税は継続してしまうという重要なポイントを外していることも問題ですね【あん肝】(2016/04/20 10:08)

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