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日銀の「粘り強さ」が想起させる「あの戦争」

日本経済「底力」論と距離がある「前線」の状況

2017年8月8日(火)

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日銀は「物価安定の目標」2%を目指すという短期決戦で失敗しても、勝ち目のすくない戦いを“精神力”で粘り強く続けている。(写真:マリンプレスジャパン/アフロ)

白川前総裁時代、日銀が2%の物価目標を受け入れた理由

 金融市場の外だけでなく、中でも徐々に忘れられようとしているように思えるのだが、白川方明前総裁時代末期の2013年1月22日に日銀が、それまでの日銀の考え方からすれば明らかに非常に高すぎる2%の物価目標を受け入れて政府と共同声明を出したのは、積極的な金融緩和だけで2%を達成できるという金融政策万能論的な見方へと突然切り替えたからではなく、政府および企業の努力によって日本の潜在成長率が上昇するのならば2%は達成可能な水準になっていくという説明はできるという苦渋の判断をしたからだったと、筆者は理解している。実態としては、衆院選で大勝した安倍内閣からの政治圧力に屈したのだが、中央銀行としてそれなりに合理的な説明・理屈付けをしないわけにはいかない。

 7月23日付で退任した佐藤健裕・木内登英両日銀審議委員(当時)は、この時の金融政策決定会合で、「物価安定の目標」2%の導入に反対した。議事要旨によると、その理由は以下の3つだった。

①消費者物価の前年比上昇率2%は、過去20年の間に実現したことが殆どなく、そうした実績に基づく現在の国民の物価観を踏まえると、2%は現時点における「『持続可能な物価の安定』と整合的と判断される物価上昇率」を大きく上回ると考えられること。

②このため、現状、中央銀行が2%という物価上昇率を目標として掲げるだけでは、期待形成に働きかける力もさほど強まらない可能性が高く、これをいきなり目指して政策を運営することは無理があること。

③2%の目標達成には、成長力強化に向けた幅広い主体の取り組みが進む必要があるが、現に取り組みが進み、その効果が確認できる前の段階で2%の目標値を掲げた場合、その実現にかかる不確実性の高さから、金融政策の信認を毀損したり、市場とのコミュニケーションに支障が生じる惧れがあること。

警告通りのことが、その後の4年半で起きた

 その後の4年半で実際に起こったことは、この2人の警告通りのことだったと言えるのではないか。「2%の目標を掲げながら大規模な金融緩和を行いさえすれば、インフレ期待が2%に高まり、実際のインフレ率もそれにキャッチアップするはずだ」というリフレ派の考えに沿った2年間という期限を区切った「短期決戦」は、明らかに失敗した。にもかかわらず、金融緩和を「粘り強く」続けている日銀の姿は、太平洋戦争当時の日本と、筆者にはダブって見えてしまう。

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「日銀の「粘り強さ」が想起させる「あの戦争」」の著者

上野 泰也

上野 泰也(うえの・やすなり)

みずほ証券チーフMエコノミスト

会計検査院、富士銀行(現みずほ銀行)、富士証券を経て、2000年10月からみずほ証券チーフマーケットエコノミスト。迅速で的確な経済・マーケットの分析・予測で、市場のプロから高い評価を得ている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官