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日銀ホームページの英訳がちょっと謎なワケ

2015年12月1日(火)

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(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 リフレ派の官庁エコノミスト出身である原田泰日銀審議委員が11月11日に栃木県金融経済懇談会で披露した挨拶(講演)と記者会見に関するマスコミ各社の報道をざっとさらってみた。雇用が悪化して物価を基調的に上昇させるメカニズムが危うくなればちゅうちょなく追加緩和を行う必要があるとした部分や、現在の段階では追加緩和は必要ではないとした発言、追加緩和の手段はいくらでもあるという主張を前面に出した報道が多かった。

 だが、報道などを通じて世の中の注目をもっと集めてもよかったと筆者が考えるのは、原田委員が講演の中で、「『量的・質的金融緩和』で国債を発行しやすくなり、財政規律が弛緩する」という批判に対し強く反論した部分に見いだされる、以下の発言である。

「しかし、金融政策の目的は、デフレマインドを払拭し、2%物価目標を達成し、それを通じて実体経済を改善、安定化することです」

「そもそも、金融政策で財政規律が弛緩するなら、増税しても同じです。国債を発行しやすくなれば使ってしまうというのなら、私は、増税して収入が増えれば使ってしまうだろうと思います。財政は、政府と議会が責任を持って規律を維持するべきもので、金融政策とは関係がありません」

 この発言にマスコミ各社がニュースバリューをあまり見いださなかった理由を筆者なりに推測すると、以下の3つになる。

事実上は日銀による財政ファイナンス

①「政策の目的があくまで2%の物価目標達成にあるのだから日銀による大規模な国債買い入れは財政ファイナンスではない」という主張は、黒田東彦総裁が常々口にしている話でもあるので、新味が乏しい(ちなみに、債券市場のプロの間では、日銀は事実上財政ファイナンスに手を出しているという見方が大勢である)。

②「量的・質的金融緩和」は事実上アベノミクスの一環として展開されているので、日銀内から政府への強い批判やけん制はもともと出てきようがない(現状追認的なコメントが日銀から出てくるのは当たり前)。

③財政規律は金融政策とは無関係だという原田審議委員による今回の踏み込んだ発言は、就任直前の発言(たとえば朝日新聞デジタルのインタビュー記事など)とほぼ同じなので、改めて報じる必要性が乏しい。

 だが、日銀による大規模な長期国債買い入れは、実態として、財政ファイナンス(中央銀行による国の財政の資金繰り支援)に相当近い状況を日本で作り上げている。そして、ある事柄の適否は、行為者が何を意図しているのか(=当事者の主張)だけでなく、現実に何が起きているのか、何が将来起きる可能性があるのかについても十分に考慮した上で判断していく必要があるというのが、昔から変わらぬ筆者の考えである。

コメント4件コメント/レビュー

リフレ派のはずの安倍総理が、財政再建に固執しているように見えるのが何故なのか疑問だったのですが、本記事や、本記事に対するネットのコメントで推察出来た気がします。
国内には財政再建の強い圧力は無いですが、海外の目が気になるのでしょう。
一点目は財政再建の遅れにより国債の格付けが下がり海外から国内への投資に影響が出ることへの懸念、二点目はパーゼル規制の強化で日本の金融機関が欧州で活動出来なくなる事への懸念。
しかし、現実問題として政府が財政再建の前提としている成長率が達成出来ない事は明らかで、既に詰んでると思うのですが、どうするんでしょうね。
日本は金融的に孤立への道を歩むのでしょうか。(2015/12/01 15:44)

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上野 泰也

上野 泰也(うえの・やすなり)

みずほ証券チーフMエコノミスト

会計検査院、富士銀行(現みずほ銀行)、富士証券を経て、2000年10月からみずほ証券チーフマーケットエコノミスト。迅速で的確な経済・マーケットの分析・予測で、市場のプロから高い評価を得ている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

リフレ派のはずの安倍総理が、財政再建に固執しているように見えるのが何故なのか疑問だったのですが、本記事や、本記事に対するネットのコメントで推察出来た気がします。
国内には財政再建の強い圧力は無いですが、海外の目が気になるのでしょう。
一点目は財政再建の遅れにより国債の格付けが下がり海外から国内への投資に影響が出ることへの懸念、二点目はパーゼル規制の強化で日本の金融機関が欧州で活動出来なくなる事への懸念。
しかし、現実問題として政府が財政再建の前提としている成長率が達成出来ない事は明らかで、既に詰んでると思うのですが、どうするんでしょうね。
日本は金融的に孤立への道を歩むのでしょうか。(2015/12/01 15:44)

デフレの時に財政規律を叫んで財政出動を抑制させ、結果としてデフレを脱却できず税収も伸びず、延々赤字国債を垂れ流させる愚をいつまで続けるつもりなのか。いい加減にしてほしい。(2015/12/01 11:42)

「現状、国債市場は安定していますが、日本銀行による多額の国債買い入れが、内外の投資家から、ひとたび『財政ファイナンス』と受け取られれば、国債市場は不安定化し、長期金利が実態から乖離して上昇する可能性があります」
…でいつになったらこの状況になるのですか?
国の借金1000兆円を超える非常事態(棒)のはずなのに短期国債の利回りがマイナス金利になっていますが・・・
結局、国債を発行して(お金を刷って)も利用されない状況が一番大きな問題なのです。そもそも国債は95%以上が内国債なのですから、英訳で言い訳する必要も本来はないでしょう。
もうこんなくだらない話をしていないで、どうすれば景気浮揚するのか、どうすればお金が循環するのか、真面目に議論してください。
借金返して(生産力の毀損や中産階級の没落で)国が貧乏になってしまっては意味がありません。
経済とは「経世済民 」のことなのですよ。(2015/12/01 11:07)

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三品 和広 神戸大学教授