• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

「多少つらくても若返りを止めない」

富士重工業 吉永泰之社長(下)

2015年10月9日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

富士重工業の吉永泰之社長(写真:木内正隆、以下同)

 富士重工業の社長、吉永泰之は、経営企画の仕事が長いのだが、「現場育ち」を自任している。入社して5年間、工場勤務と自動車セールマンを経験しており、「あれがものを考える原点になっています」と語る。

 入社した1977年は石油ショックの後で、事務系の大卒採用は9人しかいなかった。全員、まず工場に入る。半年は生産現場で実習である。それから工場の総務や経理などに配属される。

フォークリフトで部品を運び続ける日々

 吉永は当時エンジンやトランスミッションを生産していた東京の三鷹製作所に入った。組み立てラインでの実習は、受け持つ工程が毎日変わった。「日替わりで初めての仕事をやるのですから大変でした」と振り返る。9月30日、10月からの正式な配属先の辞令をもらった。

 「生産部工務課」である。どんな仕事か尋ねたら、「フォークリフトの運転手をやってくれ」である。想像もしたことのない仕事で、「いやあ、びっくりしました」と言う。早速、免許を取って、1年半、毎日フォークリフトでトラックから部品を降ろして、生産ラインに運び続けた。

 「入社試験の成績が悪かったのですか」と失礼な質問をしてみた。「入社試験の成績はあまり悪くなかったのですが。当時、三鷹製作所では2年ごとに大卒の新入社員に、フォークリフトの運転手をさせていたのです」

 「もし私1人だったら、落ちこぼれでしょうけど、私の1代前は専務になっているので、今ではエリートコースということになっています。これ冗談ですが」と笑う。「おそらく所長さんの発想だと思います。慧眼ですね」と、吉永は思っている。事務系の大卒でも、長い目で見て貴重な経験になるとの狙いが込められていたのだろう。

現場を経験して「得をしています」

 現場の人とも親しくなる。今も心に刻み込んでいるある中年工員の言葉がある。「オレは中学しか出ていない。毎日、ピストンリングを組み付ける仕事をする、しがない工員だけど、息子を大学に行かせた。吉永君が偉くなっても、現場でこういう仕事をして頑張っている奴が、この会社を支えていることを覚えておいてくれよ」。

 「あのおじさんが言う『偉い人』とは課長のことだと思いますが、会社を支えているのは現場の人たちだということを一瞬たりとも忘れません。工場にいても管理業務だけでは、本当の現場はよくわからないでしょう」。吉永は三鷹製作所の計らいに感謝している。

 今も工場に行くと、若かりし頃フォークリフトを運転していただけに、「懐かしい」そうだ。生産現場の社員たちの中に、自然に入って行ける。彼らの気持ちも皮膚感覚で理解できる。「現場を実際に経験して、得をしています」と言う。

「森一夫が見た リーダーシップの源泉」のバックナンバー

一覧

「「多少つらくても若返りを止めない」」の著者

森 一夫

森 一夫(もり・かずお)

ジャーナリスト

1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、特別編集委員兼論説委員を歴任。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本の経営者は、経験を積んだ事業なら 失敗しないと思い込む傾向がある。

三品 和広 神戸大学教授