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次期大統領を生んだ「トランピズム」の正体

「白人中間労働者層」の危機感を呼び覚ました異端者

2016年11月14日(月)

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オバマ大統領と会談するトランプ氏(左)(写真:AP/アフロ)

本命とみられたヒラリー・クリントン民主党大統領候補が、大方の予想に反して敗れてしまいました。相手は政治の門外漢、ドナルド・トランプ共和党候補。この「トランプ現象」「トランピズム」は何なのでしょうか。

高濱:米国の識者の間でも「トランピズム」の定義づけをめぐって意見が分かれています。一過性のポピュリズム(大衆迎合主義)だとか、いやもっと根の深い社会現象だ、とか。

 ただ、識者の間では一つの共通認識があります。

 トランプ氏は、当初、貧富の格差や移民流入に対する、一部の白人労働者層の怒りや不満を煽ることで、反体制一本やりの選挙戦を続けていました。ところが選挙戦が進む中で、その怒りや不満は白人一般大衆へと裾野を広げ、ある種の「世直し運動」になってしまいましたという認識です。

 トランプ氏自身、「これは選挙キャンペーンじゃない。ムーブメント(運動)だ」とまで言い切っていました。「保守対リベラル」といった座標軸では表せない社会現象となってしまったのです。

 「錦の御旗」は、Against Institution、つまり反既成体制・反既成制度、反ポリティカル・コレクトネス*でした。

*:ポリティカル・コレクトネス(Political Correctness=PC)という言葉は、社会学者アレン・ブルームが1987年に著した「The Closing of American Minds」(アメリカン・マインドの終焉)の中で最初に使った。人種的差別や宗教上の差別を全面的に否定する正義を正当化すること。例えば米国の公立学校ではキリスト教の行事であるクリスマスを公的行事にすることは禁じられている。「クリスマス休暇」も「ホリデー休暇」と呼ぶ。

 選挙キャンペーンがいつの間にやら一種のムーブメント(運動)になってしまった点。つまり「トランプ現象」とは、トランプ氏個人から乳離れして一人歩きし、巨大な社会現象になってしまったのです。

反自由貿易、反移民、反大企業、反インテリ、反軍事介入

「トランピズム」には政治理念があるのでしょうか。

高濱:ある識者によると、トランプ氏の主張は以下のように整理されます。

  1. 1)自由貿易は中産階級層の雇用を奪い、収入減につながる。

  2. 2)大企業や金融機関は信用できない。大企業の持つ影響力を極力、制限すべきだ。

  3. 3)(メキシコやアジアなどからの)移民及び移民政策は信用できない。移民は基本的に制限すべきだ。

  4. 4)自由貿易は米勤労者の雇用を奪い、賃下げにつながる。北米自由貿易協定(NAFTA)からは撤退。環太平洋経済連携協定(TPP)は破棄すべきだ。

  5. 5)米国は国際社会での役割を可能な限り減らし、米軍派遣や他国への介入をできるだけ避けるべきだ。米国は(中東やアジアなど)他国の戦争への介入を避けるべきだ。

  6. 6)北大西洋条約機構(NATO)には懐疑的である。(日本や韓国やドイツなど)同盟国を含む他国および国連などの国際機関が米国に対して抱く「真意」(Motive)には疑念がある。

  7. 7)米政府は米産業や雇用を保護するために関税障壁を設けるべきだ。

  8. 8)富裕層、既成の政治家、インテリやメディアは信用できない。

( "Is Trumpism the Future of American Politics? " Richard Back, empresa-journal.com., 8/30/2016)

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「次期大統領を生んだ「トランピズム」の正体」の著者

高濱 賛

高濱 賛(たかはま・たとう)

在米ジャーナリスト

米政治・経済・社会情勢を日本に発信している。1969年、米カリフォルニア大学卒業、読売新聞社に入社。米特派員、総理官邸・外務省担当キャップ、デスクを経て、調査研究本部主任研究員。98年からUCバークレー校上級研究員。同年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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