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本当に「同盟」になり始めた日本とインドの関係

2017年10月13日(金)

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 安倍晋三首相は10月8日、インターネットテレビに出演して「日本とインドは同盟国といえるぐらいの関係になっている」と明言した。その理由として、日印米3か国の海洋共同演習マラバールを挙げた。話の流れでそれ以上の説明はなかったのだが、この発言は日印の最新の動向をよく示している。日印間には、日米同盟のような深い関係はない。それでも過去数年、とくにここ数か月、日印間の防衛協力が明らかに進展しているからだ。最近の動向は、以下に挙げる3つの点で、日本とインドが「同盟」状態になりつつあることを示している。

「同盟」の要諦は危機に臨んだ時の協力

 「同盟」関係にあるか、そうでないかを分ける指標は何だろうか。最も重要な指標は、条約が結ばれているかどうか、ではない。戦争や危機の時に味方であるかどうかである。

 実際、条約を結んでいても味方とならない場合があり得る。例えばイタリアは、第1次世界大戦の時、ドイツやオーストリアと同盟を約束する条約を結んでいたにもかかわらず、オーストリアに宣戦を布告した。イタリアは第2次世界大戦でも、途中までは日独と一緒に戦ったが、その後政権が交代すると、連合国に加わった。戦争や危機に臨んだときの態度は、同盟の最も重要な側面である。

 この観点から見た時に、日印「同盟」関係をはっきりと示したのが、6月16日から8月28日まで続いた、インドと中国の危機に際しての、日本政府の態度だ。危機が起きた地域はドグラム高地といい、中国とブータンの双方が領有権を主張している。インドにとっては、インド「本土」とインド北東部をつなぐ細い鶴の首のような部分に、クサビのように突き刺さる地域で、防衛上の要地である。そのため、この地域は長年、安全保障上の問題になってきた。そのような敏感な地域で、中国軍は戦車の重量に耐える道路の建設を開始したのである。

図:位置関係図
※筆者作成

 当初、中国軍による建設を阻止すべくブータン軍が(たった8人で)割って入ったが、中国軍に追い返された。そこで、ブータンの安全保障を担うインドが軍を派遣して道路建設阻止に着手した。そこから73日間に及ぶ、にらみ合いの状態に入ったものである。

(写真:ロイター/アフロ)

 インド軍が数百人規模だったのに対し、中国は1万2000人、戦車150両、さらに火砲もそろえた大陣容を派遣した。さらに中国空軍も新型戦闘機による飛行を大幅に増やしたほか、周辺のチベット地域では大量の物資を運びこんで大規模な軍事演習も実施。中国軍の広報官は1962年に中国がインドを負かしたことを思い出すよう言及、明確に戦争を示唆した。これに対抗してインドも、ドグラム高地周辺の3個軍団4万5000人が陣地を構築。さらに4000㎞に及ぶ印中国境(含:実効支配線)全体でも警戒態勢に入ったため、印中が武力衝突する可能性が高まったのである。

 日本はこの対立で存在感を示した。戦後の日本の対応としては驚くべきことかもしれない。7月には、ヘリ空母「いずも」をインド洋に派遣。インド空母、米空母とともに大規模な海洋共同演習「マラバール2017」を実施して、日印米の協力関係の強さを示した。この派遣は、印中の危機が起きる前から決まっていたものだ。しかし、中国のメディアが「インドは日米に期待するな」と報じたのは、ヘリ空母「いずも」の存在を気にしている証といえる。

 さらに8月18日、日本の平松賢司駐印大使が、力による現状変更を非難すると発言した。これは一般論をいったにすぎない。しかし、インド政府は当時、「力による現状変更を迫っている」と中国を非難しており、日本大使の発言は、その論理を受けたものであった。

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「本当に「同盟」になり始めた日本とインドの関係」の著者

長尾 賢

長尾 賢(ながお・さとる)

未来工学研究所研究員

2001年、学習院大卒。自衛隊、外務省勤務後、学習院大学大学院でインドの軍事戦略を研究、博士取得。現在、未来工学研究所研究員と日本戦略研究フォーラムの研究員、学習院大学東洋文化研究所客員研究員。専門は安全保障、インド。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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