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実はど田舎ほど起業に向いているのです

第19回:早稲田大学ビジネススクール 入山章栄准教授(後編)

2016年6月23日(木)

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 “起業大国”の米国でニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授を務め、『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』などの著書もある入山章栄氏。都心より地方で起業したほうが勝算が高くなる理由を、米国・シリコンバレーとの比較で語る。(聞き手は、トーマツ ベンチャーサポート事業統括本部長、斎藤祐馬氏。前回の記事はこちらをご覧ください)

斎藤:前回は、地方で起業する際のハンディキャップを解消する取り組みについてお話しました。でも実は、地方ベンチャーにとっての重荷は、商圏を拡げることができて、東京のベンチャーキャピタル(VC)から出資を受けて、ネットワークさえ確保してしまえば、ないも同然なんです。その他のことは、地方にいて時々、東京へ出張して対応すればいいわけですから。

入山:ハーバード大学ビジネススクールのポール・ゴンパース教授とジョー・ラーナー教授らの共著『ベンチャーキャピタル・サイクル』によれば、米国でVCと投資先との物理的な距離はだいたい60マイルくらい、約100㎞ということでした。広大な土地を持つ米国では近いイメージかもしれないけれど、日本で100㎞といったら結構な距離です。

 でも、現代は交通インフラが発達しているから、行こうと思えば週1~2回のペースで上京できる。フィジカルのカベというか、物理的な距離は米国よりも日本の方が低いのかもしれません。地方に拠点を置いて、その優位性を生かすビジネスを考えられますよね。

地方のベンチャーのあり方について、米国と日本を比較して解説する入山・早稲田大学ビジネススクール准教授(写真:菊池一郎、以下同)

斎藤:地方の有利な面は2つあると思います。1つはストーリーを組み立てやすいことです。「この街に1000人の雇用をつくる」とか、「故郷で10年で100個の事業を立ち上げる」などと言うと共感を得やすい。特に、東日本大震災以降、「共感できるストーリー」が求められるようになっています。みんなが応援したくなる仕組みを作り、周りを巻き込む力が重視されているんです。

入山:起業には明確なビジョンや強いモチベーションが必要ですよね。地方の人たちは、「ここが好き」という単純な理由でやれる。それが一番、強いわけです。低価格メガネチェーン「JINS」を経営するジェイアイエヌの田中仁社長も、出身地の群馬県で起業家を育てるイノベーションスクールを立ち上げました。第3回で登場したライフスタイルアクセント(熊本市、山田敏夫社長)も、「熊本を盛り上げたい」という気持ちが強い。みんな、やっぱり故郷への思いってすごくあります。

斎藤:むしろ、東京のベンチャー企業のほうが、その場所で事業をする蓋然性が少ないので、アピールしにくいんです。

入山:東京のベンチャー企業はある意味、甘やかされているかもしれないですね。資金の調達先や手段がたくさんあって、営業先もたくさんある。人口が多い分、商圏も広い。“東北の雄”とよばれるアイリスオーヤマの大山健太郎社長は「東京は(餌が豊富にある)いけすだ」などと言うそうですが、確かに都心の起業家は恵まれ過ぎているという面があるかもしれません。

地方の強みはライバルがいないこと

斎藤: 地方の有利な面のもう1つは、ライバルが少ないということです。ある県で小学生向けにITとものづくりを融合させた習い事教室を運営している会社があります。プログラミングをしたり、3Dプリンタを使ったり、ロボットを作ったりして注目を集めています。こちらの代表はトーマツ ベンチャーサポートで学生アルバイトを経験しており、地方出身者が東京で1年くらい修業をして戻ると、圧倒的な力でトップに立てるという例ですね。

入山:概念的に言うと、東京は立地というリソース(資源)があるけれど、コンペティション(競争)がすごく厳しい。逆に地方はリソースさえ確保できれば、ドミネート(支配)できるチャンスがあって、いきなり勝つことも不可能ではないという仕組みなんですね。

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「実はど田舎ほど起業に向いているのです」の著者

斎藤 祐馬

斎藤 祐馬(さいとう・ゆうま)

トーマツ ベンチャーサポート事業統括本部長

1983年愛媛県生まれ。慶應義塾大学を卒業後、2006年にトーマツに入社。、2010年にトーマツ ベンチャーサポートを事実上立ち上げた。公認会計士でもある。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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