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[318]妄想は人を前向きにする原動力だ

2015年11月12日(木)

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長い喪失の後にハッピーエンドの小説を

Q島地さま、長い喪失体験の先にハッピーエンドが待っていた、というような筋の小説か歴史ものをご存じないでしょうか? あれば是非、ご紹介いただけないでしょうか。過去20年、喪失体験からの回復に費やしてきました。そしてそのことに、強い徒労感を感じています。堕胎、親の自殺、離婚といった月並みなものです。本当は喜びも楽しみも、同じかそれ以上に味わってきたはずなのですが、今は徒労感が勝っていて、持て余しています。どうか、島地さまの眼鏡に叶うような先人の知恵をお授けいただけないでしょうか。優しい嘘でもいいんです。

(41歳・女性)

ミツハシ:今週は人生の中で大切なものを次々と失い、それが重荷となって自分を苦しめる女性からの相談です。そうした相次ぐ喪失の末に、それでもハッピーエンドを迎える小説や歴史ノンフィクションでおススメはないかとのことです。

シマジ:うーん、何を持ってハッピーエンドとするかは人によって違うんじゃないか。それだけに、これは結構難しい相談だな。

ミツハシ:たしかに何をしてハッピーエンドと感じるかは人によって違うでしょうね。先日、落語好きの友人と「文七元結」は果たしてハッピーエンドなのかという議論になったんですよ。

シマジ:それはまたマニアックな話題だな。

ミツハシ:文七はかの三遊亭圓朝が創作した大ネタ中の大ネタと言われる噺で、歌舞伎でも「人情噺文七元結」として演じられています。(中村)勘三郎が主役長兵衛を演じた舞台を、山田洋二が監督を務めて映画作品にもなったのでご存じの方も多いと思います。笑いあり涙ありの名作で、私も古今亭志ん朝や、いまなら立川談春の「文七」は大好きです。

 破滅型人間の長兵衛の魅力は別として、彼と彼の家族がハッピーエンドを迎えられたのは、長兵衛が苦境を乗り越える努力をしたわけではなく、焼けっぱちに行動して、それがたまたま良い方の目が出たにすぎないと感じます。長兵衛の直情径行も博打好きもたぶん変わっちゃいない。だとすると「文七」のハッピーエンドはかりそめのハッピーエンドでしかありません。そこだけを切り取り一作として観客を泣き笑いさせるのが落語の力であり、ゆえに全く人生訓にならないところが落語の魅力ですが……。

シマジ:長いなミツハシ。要するに何が言いたいんだ。

ミツハシ:要するに、人生に「ひとまずハッピー」はあっても「ハッピーでエンド」なんてことはないのではないかと。

前を向いて歩いていくために必要なのは希望だ

シマジ:その通りだよ。人生は恐ろしい冗談の連続だ。禍福はあざなえる縄の如く、人間万事塞翁が馬であり、一寸先は闇である。

 「桃太郎は見事鬼を成敗し、お爺さんとお婆さんと幸せに暮らしたとさ」。そんなはずはないだろう。若くして鬼退治の功を上げた桃太郎は当然ちやほやされる。鬼から巻き上げたうなるほどの金銀財宝もあるから、地道に働く必要などこれっぽっちもない。若く未熟で無駄に腕力のある乱暴者が富と名声を手に入れて暇を持て余したなら、その後は目に見えている。

ミツハシ:桃太郎破滅編。

シマジ:破滅の底から這い上がる再生編もあるかもしれんがな。

ミツハシ:亡国の憂き目に合った鬼ヶ島の復興と復讐、宝物の分け前に預からなかった猿、犬、雉による桃太郎ネガティブキャンペーン、お供になれなかった兎と亀が猿、犬、雉への嫉妬からまさかの桃太郎擁護へ、揺れる村人と謎の老人ウラシマの登場。次週必見。

シマジ:気が済んだなら、先に進むぞ。

 人生がかくも恐ろしい冗談の連続である以上、人がそれでも前を向いて歩み続けるために必要なのは希望だ。闇の中でも一条の希望があれば、人は生きていける。ゆえに俺が相談者に勧めたいのは『モンテ・クリスト伯』(アレクサンドル・デュマ著、岩波文庫など)だ。

ミツハシ:なるほど。「待て、而して希望せよ」ですね。

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「[318]妄想は人を前向きにする原動力だ」の著者

島地 勝彦

島地 勝彦(しまじ・かつひこ)

コラムニスト

「週刊プレイボーイ」の編集長として同誌を100万部雑誌に。各誌編集長を歴任後、2008年11月集英社インターナショナル社長を退き、現在はコラムニスト。シガーとシングルモルトとゴルフをこよなく愛する。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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