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19歳でがん、山下弘子の旅立ち

第28回 数年来の友人を失ったいま

2018年4月17日(火)

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ずっとヒヤヒヤしていた登頂

 結果的には、特にトラブルは起きずに登頂をすることができたのですが、途中私はずっとヒヤヒヤしていました。肺転移もあり、抗がん剤治療中の登山だったからです。とはいえ私にできることなどほとんどありません。やったことと言えば、持参したサチュレーションモニターでSpO2(動脈血酸素飽和度)をしょっちゅう確認(平地では96~98%ですが、富⼠⼭では健常⼈でも80%台まで下がります)し、3人分くらい持っていった酸素を吸わせながら、様子をうかがっていたことくらい。帰り道、どうしても歩けなくなり、馬に乗せてもらうサービスを利用したのを覚えています。その時、鞍に乗ったら馬糞が手についたらしく、下山後大笑いしながら私に話してきたのを覚えています。とにかく前向きで、明るい子でした。

 彼女はその後、いくつかの臨床試験に参加し、最終的には参加できる臨床試験がなくなってしまいました。本人もブログやツイッターで発信していましたが、それからいくつか保険適用外の治療を行っていました。

 保険適用外と聞くと我々医療者は「え、大丈夫?」と思ってしまいます。が、担当していた先生方はみな素晴らしい先生方でしたし、結果的に弘子さんの予後をかなり延長してくれました。感謝しかありません。国内の医師から、その先生方を攻撃するような発言があるたびに彼女は悩んでいました。「ねえ、なんであんなこと言うの?」と。その度に私も返答に困りました。

「80歳まで生きる!」と言っていた彼女

 標準治療が終わってしまった後の患者さんに対して、我々がんの専門家は無力です。いえ、正確に言えば「標準治療が全て無効になってしまったが、もっと積極的治療をしたい」患者さんには無力、ですね。彼女はまさにここに当てはまりました。そういう人がどこに行けばいいのか。おそらくほとんどの場合、自由診療のがん治療を行っているところへ行っているでしょう。その中には、インチキで超高額なところもあります。この人たちのきちんとした受け皿がないのは、非常に大きな問題だと思っています。「エビデンスがあるのは緩和ですから、緩和へ行きましょう」では、納得いただけないでしょう。

 話を戻します。彼女は、ツイッターやブログにもどんどん自分で病状を綴っていました。腫瘍マーカーが上がり1万を超えた、骨の転移が痛い、医療用麻薬が処方されてショックを受けた、などなど……。少しずつ調子が悪くなっていく彼女は、それでもずっと「私は絶対治る! 80歳まで生きる!」と言っていました。本気で思っていたので、私も本気で「治るよ!」と言いました。

コメント5件コメント/レビュー

「ねえ、私どこまで頑張らなきゃならないのかな」
 そう言う彼女に一度だけ、私は言いました。
「辞めてもいいよ。死んじゃっても、いいんだよ。俺は怒らない」

この会話ほんとうですか?
無神経だと思いました。あなた(医者)が怒るかどうか、もう「死んでもいい」
とか、そういうことを弘子さんが聞いたんじゃないと思います。
わかりませんか????
弘子さんは私は直接の知り合いではありませんが、ずっとずっと彼女の
ブログを拝見し、心の中で応援してきました。
亡くなってすぐ記事にするのではなく、もっと推敲するべきでしたね。
所詮、患者の気持ちなど医師は理解できないのでしょうね。(2018/04/17 11:24)

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「19歳でがん、山下弘子の旅立ち」の著者

中山 祐次郎

中山 祐次郎(なかやま・ゆうじろう)

外科医

1980年生まれ。聖光学院高等学校を卒業後、2浪を経て、鹿児島大学医学部医学科を卒業。その後、都立駒込病院外科初期・後期研修医を修了。2017年2~3月は福島県広野町の高野病院院長、現在は郡山市の総合南東北病院で外科医長として勤務。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

「ねえ、私どこまで頑張らなきゃならないのかな」
 そう言う彼女に一度だけ、私は言いました。
「辞めてもいいよ。死んじゃっても、いいんだよ。俺は怒らない」

この会話ほんとうですか?
無神経だと思いました。あなた(医者)が怒るかどうか、もう「死んでもいい」
とか、そういうことを弘子さんが聞いたんじゃないと思います。
わかりませんか????
弘子さんは私は直接の知り合いではありませんが、ずっとずっと彼女の
ブログを拝見し、心の中で応援してきました。
亡くなってすぐ記事にするのではなく、もっと推敲するべきでしたね。
所詮、患者の気持ちなど医師は理解できないのでしょうね。(2018/04/17 11:24)

実は私、山下さんの隣の家に住むものです。

ブログをいつも拝見して、陰ながら応援していたのですが
訃報を聞き、残念で悔しく寂しくてなりません。

彼女が高校生の頃には、私の娘と遊んでくれましたし、
成人式の朝見た振袖姿が眩しかったのを今でも思い出します。

最後の入院となった日に、家の前に救急車がとまり、山下さんが
運ばれるのも見ていました。あれが最後のお別れになるとは。。

山下さんの頑張り、前向きさ、明るさに勇気をもらい、思い切って
行動する大切さを学びました。

昨日「尿によるがん検査の実証実験」のニュースも見ました。
全てのがんが治る時代になってほしいと切に願います。(2018/04/17 11:12)

ひょんなきっかけから山下さんのつぶやきを読むようになっていました。症状について淡々と説明され,本当に重い病気なのかと思わせるような語り口に驚いてもいました。今年に入って急に書き込みが減り,パタリと途絶えたと思ったらご主人からの経過報告。何とか持ち直してと,本当に影ながら応援させていただいていましたが・・・

このコラムは日経メディカルオンラインに投稿された時点で拝読していました。中山先生もさぞかし落胆されたことでしょう。ご主人の心中もさぞやお辛いことと思います。ひろこさんのご冥福をお祈りいたします。

がんが簡単に治せる時代が来ることを願います。(2018/04/17 09:36)

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野口 悠紀雄 早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問