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「認知症700万人時代」にどう立ち向かうべきか

避けられない認知症「破壊的増加」、今こそ抜本的対策を

2017年3月17日(金)

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 形あるものはいずれ終わりを迎える。人の人生も星の一生も始まりがあれば終わりがあるのは世の理であって、この宿命から逃れることはできない。高齢社会と一口に言っても、人が亡くなることは自明として、人がどう終末を迎えるのか、周りがどう送るのかが高齢社会問題に対するひとつの視点だ。幸せを感じて安寧のうちに幕を閉じることができる人を増やせる社会が望ましいことは言うまでもない。人が人として生きていくにあたって、その最期にあたっては人として尊厳ある終わり方を迎えたいと願うのもまた、意識という恵みを持つ存在であるが故の理であろう。

 本稿では認知症が引き起こす社会問題について、主に都市政策にまつわる視点から取り上げる。いままでも、高齢社会を考えるにあたって重要なパートであった認知症を患う高齢者は重要だという認識は強かったが、九州大学久山町研究を通じて2025年に日本で認知症が700万人を超える推計が発表[1]され、概ねその進捗通りの認知症を患う高齢者の増加が確認されるようになると、対策の遅れや不徹底が改めて浮き彫りになる面も出てくるようになってきた。

医療、地域、家庭でどう受け止めるか

 とりわけ、日本社会における認知症の破壊的な増加は、一口に高齢化社会現象と片付けることのできない強いインパクトを持つ。それは、高齢に差し掛かった一個人が生産をやめ社会に富を生み出さなくなることだけでなく、それを支える医療や地域、家族のリソースを消費し続けることになるからだ。介護も終末期医療の問題も、突き詰めれば「人間としての社会性を失いゆく高齢者をどのように社会は受け止めるべきか」という深淵な事実に向かい合わなければならない。

 その立脚点として、少なくとも2012年(平成23年)の段階ですでに自律的な生活に支障をきたしている認知症有病者が日本に462万人存在する[1]。このうち、精神科など医療機関に入院して治療を受けている人数は22万人ほどで、その過半は入院後一か月ないし半年しないうちに退院して家庭や地域に舞い戻ることになる以上、不便を感じながら自宅で家族や施設で暮らしている高齢者がそれだけいるということになる。つまり、だれか健常者の手を借りながら暮らしている認知症患者が生きていくためには、生活力や所得の乏しい本人だけでなく、本来であれば働きに出るなどして生産的な活動をしていたかもしれない誰かを巻き込んで暮らしている可能性がある。

 調査結果によって推計値や結論に差はあるが、厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成25年)では認知症高齢者の家族との同居は61.6%(うち、子供や子供の配偶者の合計は33.0%)、事業者は14.8%である。自立した生活を送れている認知症患者の割合は少ない。老齢に差し掛かって伴侶・配偶者からの支援(26.2%)以外の人の手を借りて暮らしている高齢者は、年金など社会保障の収入とは別にそれだけの生産可能人口からの支援を受けながら生活していることになる。逆算すると、2012年すでに300万人ほどの日本人が認知症患者の生活支援を何らか行いながら暮らしており、2025年にはそれが500万人以上になるのであって、人口のおよそ4.6%が認知症患者を家族に持ち生産性を発揮せずに患者本人が亡くなるまで暮らしていく構図が浮かんでくる。

 一連の調査において、特に認知症との関わり合いの深い疾患として糖尿病が挙げられている。認知症有病率が2012年以降一定であると仮定した場合、推定認知症患者数は2025年に675万人とされる一方、将来糖尿病の頻度が2012年以降20%上昇すると仮定した場合、将来の認知症患者数は2025年には730万人に達すると推計されている[2]。また、主たる認知症の症状であるアルツハイマー病の患者数は、各年齢層の認知症有病率が一定と仮定した場合は2025年466万人と推計され、将来の認知症患者の過半がアルツハイマー病となる予測になり、認知症予防や治療にあたっては、このアルツハイマー病由来の認知症状を緩和したり、何らかの改善を促す施策を積極的に取らなければ大量に発生する認知症患者由来の高齢者問題が続発してしまうことになる。まさに認知症対策の策定と実施は高齢化する日本社会の急務と言えよう。

 また、軽度認知障害(MCI)を認知症予備軍として見込む調査も多い一方、かかりつけ医や物忘れ外来など軽度認知障害である所見がないまま、何となく家族が高齢者の物忘れに認知したころには相当程度の認知症状の進展が起きているケースも無視できない割合存在する。特に若年性認知症では本人の自覚もないうちに急速に進む症例は多数報告されており、効果的に把握したり、症状を認識して防ぐ治療を行うということがなかなかむつかしい。

 もっとも重要な政策の骨子は、2015年(平成27年)に取りまとめられた「認知症施策推進総合戦略」、通称「新・オレンジプラン」だ[1]。ここでは「認知症高齢者等にやさしい地域の実現には、国を挙げた取組みが必要」としたうえで、国家が策定する認知症対策の7つの柱に沿った政策パッケージを構成しているのが特徴であり、全体としては認知症に対する理解を促す普及・啓蒙と、認知症の事前・事後の治療など医療に関する政策支援、そして認知症患者を家族に持つ人たちに対するケアという色分けがなされる。本稿で前回述べた通り、認知症を発症後、本人が意図せず犯罪を犯してしまうケースが後を絶たないことも踏まえて、医療、地域、家庭で高齢者を受け止める中で認知症問題が一際クローズアップされざるを得ない。

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「「認知症700万人時代」にどう立ち向かうべきか」の著者

山本 一郎

山本 一郎(やまもと・いちろう)

個人投資家、作家

IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、など著書多数。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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