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「戦略的忍耐」は、オバマの美しい空言でした。

第3回 オバマの失策と米財務省の焦り

2018年3月23日(金)

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(写真:ロイター/アフロ)

(前回から読む

清野:北朝鮮のインテリジェンス能力は非常に高い。前回の最後では、そのお話にびっくりしました。私だけかもしれませんけれど、なんか、北朝鮮を「ヘンな国」として、みくびる意識を持ちがちですので。

手嶋:残念ながら、北朝鮮は核ミサイルの開発にいたるプロセスでは、一手も読み誤っていないといっていいでしょう。米国が中東での戦争に、持てる力のすべてを注いでいる現状では、超大国といえども北朝鮮とコトを構える余裕はあるまいと、北の独裁者は精緻に読み切っていたのですから。

清野:そうした構図は、米朝トップ会談が取りざたされるようになった今も変わっていないのでしょうか。

手嶋:大きな流れは変わっていません。北朝鮮は、米国を射程に入れた核・ミサイルを早期に完成させて、体制護持の守り札にしようとしているのです。

清野:手嶋さんに教えていただく中で、今更ながらに調べてびっくりしたことが、もう一つあります。北朝鮮と国交を結んでいる国って、世界で160カ国以上もあるんですね。

手嶋:日本、米国、イスラエル、フランス、エジプトなど、国交のない国は、むしろ極めて少数派です。

清野:英国、ドイツ、カナダ、オーストラリアといった有力な国、それから中東、東アジアのほぼ全域と国交がある。「北朝鮮は世界の中で一人淋しく孤立している」というイメージが大きく崩れました。

手嶋:日本では、足元の東アジアの「今」をきちんと教える教育――この連載流にいうと「直近・現代史教育」がなされていないことの証左ですね。

東アジアに目を向けた唯一の情報機関

清野:そんな素人の私でも、超軍事大国である米国が中東にかまけているうちに、東アジアに不穏な動きが勃発しかねない、ということぐらいはわかります。

手嶋:国家という巨大な組織は、外交機能や情報機能を備えていながら、存外、危機対応は十分でないことも現実です。そして、当時の大統領であったバラク・オバマは東アジアの戦略的空白を放置し、何もしない言い訳を「戦略的忍耐」などと言葉でごまかしていたのです。

清野:オバマはリベラルの象徴で、スター性、話題性があって、カッコよくて、スマートな大統領……ではなかったんですかね?

手嶋:バラク・オバマという政治家については、私は彼が世に出始めたころから知っています。民主党の"ライジングスター"として世に出た時は、確かに輝いていました。それだけに、安全保障分野での凋落ぶりは残念でなりません。

手嶋 龍一(てしま・りゅういち)
NHKの政治部記者として首相官邸、外務省、自民党を担当。ワシントン特派員となり、冷戦の終焉、湾岸戦争を取材。ハーバード大学CFIA・国際問題研究所に招聘された後、ドイツのボン支局長を経て、ワシントン支局長を8年間務める。2001年9.11の同時多発テロ事件では11日間の昼夜連続の中継放送を担った。2005年NHKから独立し、日本で初めてのインテリジェンス小説『ウルトラ・ダラー』(新潮社)を発表。姉妹篇『スギハラ・ダラー』と合わせ50万部のベストセラーに。近著に『汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師-インテリジェンス畸人伝』(マガジンハウス)。最新刊は、主要国が少数の政治指導者に強大な決定権を委ねる危うさを警告した『独裁の宴-世界の歪みを読み解く』(中公新書ラクレ・佐藤優氏と共著)。現在は、大学や外交研究機関で外交・安全保障を中心に後進の指導に取り組む。

 話を戻しますと、米国政府には、CIA(中央情報局)、NSA(国家安全保障局)、DIA(国防情報局)、FBI(連邦捜査局)など多くの情報機関がありながら、CIAも、NSAも、DIAも、中東での対テロ戦争に目を奪われて、東アジアが長くお留守になっていました。

 ただし、そうした情報コミュニティの中でたった一つ、異を唱えた反逆児がいたのです。

清野:それはどこですか?

手嶋:ちょっと意外に思われるかもしれませんが、米国財務省の系譜に属するインテリジェンス機関がそれです。

コメント8件コメント/レビュー

国連の5つの常任理事国は、独占的な核兵器の保有を保証され、国連決議を単独ですら阻止出来る『拒否権』まで付与されているにも拘らず、責任を全うしていない。米国も含めた、こんな無責任な常任理事国の特権は奪った方が良い。5カ国以外で、今はインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮までもが核兵器を保有しているが、常任理事国が新規の核保有国を阻止する積極的な動きを見せたのは最後の北朝鮮だけの様だが、それですら中途半端に終わった。常任理事国は武力に訴えても阻止するくらいのことをしないで特権だけを握り続けるなど許される事ではない。オバマは常任理事国内でも中国の南シナ海での人工島の埋め立て工事を放置し、3つの空港付き軍事基地を作らせてしまった。米国ですらこんな役立たずの常任理事国なのだ。(2018/03/25 12:47)

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「「戦略的忍耐」は、オバマの美しい空言でした。」の著者

清野 由美

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト

1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

国連の5つの常任理事国は、独占的な核兵器の保有を保証され、国連決議を単独ですら阻止出来る『拒否権』まで付与されているにも拘らず、責任を全うしていない。米国も含めた、こんな無責任な常任理事国の特権は奪った方が良い。5カ国以外で、今はインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮までもが核兵器を保有しているが、常任理事国が新規の核保有国を阻止する積極的な動きを見せたのは最後の北朝鮮だけの様だが、それですら中途半端に終わった。常任理事国は武力に訴えても阻止するくらいのことをしないで特権だけを握り続けるなど許される事ではない。オバマは常任理事国内でも中国の南シナ海での人工島の埋め立て工事を放置し、3つの空港付き軍事基地を作らせてしまった。米国ですらこんな役立たずの常任理事国なのだ。(2018/03/25 12:47)

オバマ大統領は、議会がねじれてなにもできなくなりました。
ノーベル平和賞や、広島での核廃絶演説、それにもまして、
当選前の公約、いずれにしても美辞麗句はお上手であるが
現実世界に即していないというのは、悲惨きわまりないこと
と理解いたしました。(2018/03/25 01:48)

清野さんの受け答えがとてもツボで、手嶋氏のシビアな話がすんなり入るようにしてくれています。

私は北朝鮮は自国の小ささを自覚した上で、史記の頃からつかわれていた「相手国に入り込み、情報撹乱、世論工作をして内側から崩す」方法を行っているんじゃないでしょうか?
韓国はそれで具体的な罪状がハッキリしないまま世論をパククネ政権打倒に誘導し、北朝鮮は自国に都合の良い大統領に替えることに成功したように見えます。
で、その成功体験を日本でも試してるように思えなくもない…妄想と思いたいのですが、あの韓国のローソクデモにはなぜか日本のJR労組やユニオン各支部のオレンジ旗、赤幟が参加していたこと、それらの団体が今どの政党を支援し、何をしているか?を考えると、どうにもモヤモヤが晴れません。(2018/03/24 00:17)

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