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東京時間と地方時間―東京スタンダードとの離反

2017年2月21日(火)

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 気が付けば、製造業だけでなく、地方は流通業、サービス業という地域密着型の産業においても「らしさ」を徐々に失い、東京スタンダードによる画一化が進んで行った。新幹線の駅で降りていつも感じることは、駅名の表示がないとどこの駅前なのかがわからないということである。駅前の一番目立つところにある店は、大体、全国チェーンの飲食店やコンビニだ。地方のお店は、路地を少し入ったところに遠慮がちに残っていたりする。駅前の一丁目一番地を押さえるだけの経済力は、地方産業からは失われていったのだろうか。

止まらない地方の衰退

 1990年代に入り、日本の製造業はグローバル競争の中で、次第に韓国や中国企業にシェアを奪われるようになる。プラザ合意以降の円高定着と相まって、企業の事業戦略の中で、地方工場はその存在価値を急速に失い始める。企業は生き残るために、地方の工場を閉鎖し生産を海外に移転、それに伴う人員整理にも踏み切った。自分もかつてこのプロセスを進めた一人として、忸怩たる思いは今でも心に重く残っている。

 製造業の生産再編に伴う工場閉鎖が地方に与える影響は大きかった。働く場の減少は、消費の低迷につながり、大店法改正による大規模店舗の地方進出も相まって、少なからぬ地方商店が廃業に追い込まれた。商店街にはシャッターが下り、全国チェーンの郊外スーパーに人が集まり、コンビニエンスストアが一日中明かりを灯している。そのような光景が日本中いたるところでみられるようになった。

 私と同年代の人には共感していただけると思うのだが、子供の頃、生活必需品は自分の近所の商店街で大体手に入った。特別なものが必要な時だけ、近くの大きな町に買い物に行けばよかった。ところが今田舎に帰ると、昔あった店はほとんどない。生活に必要な品物ですら近所では買えず、自動車で遠くのスーパーまで買いに行かなければならない。時代は進んだのに、生活の便利さは後退しているかのような印象を持つ。

 地方の人たちも、東京スタンダードに従うことが自分たちの利益には合致しないかもしれないことに、早いうちから気づいていたように思う。1970年代後半には、「Uターン現象」という言葉も生まれた。それまでは、地方から東京へ勉学に出てそのまま職に就くというコースが就職の王道であったのに、東京の大学を出て地方に帰る若者が増えてきたことを意味するものだった。80年代後半からは、地方や故郷を大切にという言葉が頻繁に語られるようになった。実際に80年代終わりには、国から各市町村に1億円のふるさと創生資金が配られ、それを基金として村おこし、町おこしの活動も盛んに行われた。

 その結果、一部地方の産品が全国区となり、いくつかの地域では観光産業の成長につながった。しかし、その試みも多くの自治体では成功に結び付かず、地方経済全体としては、縮小傾向が進んでいった。そしてその後も東京との格差、地方の中での中央組織とローカル組織の格差、地方コミュニティの老齢化と衰退は止まらない。

 日本の産業が競争力を持ち、人口も右肩上がりで増えている時代には、東京スタンダードによる経済循環はうまく機能した。しかし、この二つの条件が共に失われた今、この循環は機能不全に陥っているように見える。地方の人たちは、そのことを強く感じているようだ。これまで東京のニーズのままに人を送り出し、生産設備を設け、要求される効率性で製品を作り続けた。その結果、地方はどうなったのか。東京の都合で作られた工場や仕事の場は、いつの間にか減少してしまった。地方の産業は、東京スタンダードに押されて停滞し、復興の兆しは見えない。働く場所は依然として広がらない。労働人口は更に減る一方で、コミュニティは弱体化してしまった。このまま、東京の後を追い続けて、「東京時間」をベースにしたライフスタイルを送ることがよいのだろうか。そう考える人が増えているように思える。

地方の人は残業しない?

 昨年のことになるが、インターネットサイトで「なぜ地方の人は残業しないのか」と題する記事を読んだ。筆者は東京でビジネス経験を経て、宮崎県の地方自治体でマーケティング専門官をされている方だった。近時、人件費削減を目的として、IT企業を中心にコールセンターやウェブの管理運用を地方都市に移管する動きが強まっている。しかし、コスト削減は思うように進んでいないと言うのだ。そしてその理由として地方の人は残業をしないため、結果的に計画より社員数が増え、想定していた人件費削減が実現していないからだと分析している。

コメント14件コメント/レビュー

別に日本だけではなく、世界中どこの国でも中央都市の人口密度の高いところでは時の流れは速く、そこから離れれば、時の流れはゆっくりになって行く。その離反はいい悪いの問題ではなく、受け入れて生きていけばよいだけのことである。肌に合わなければ移動(引越し)すればよいのである。文中に出てきた玉村豊男のように。いつの時代もどこからが東京(中央都市)でどこからが地方なのか、人口密度だけの問題でもなく、どこにどのような機能を配するか、どこでどのようなビジネスができるか等、複雑な要素で後に人々がなんとなく認識するものに過ぎない。江戸初期までは現在の東京なんてそれこそ弩田舎だったのだし、現在はそれなりの住宅地になっている世田谷だって戦後くらいまでは何にも無い弩田舎だったのである。未だに練馬以西は田舎である。東京と一括りにするのではなく、適切な表現にしたほうが良い。ホワイトカラーの多いビジネス街周辺であれば、東京だけが忙しいというわけではない。(2017/02/28 14:46)

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「東京時間と地方時間―東京スタンダードとの離反」の著者

中鉢 良治

中鉢 良治(ちゅうばち・りょうじ)

産業技術総合研究所理事長

1977年、東北大学大学院工学研究科博士課程修了。同年、ソニー入社。2005年、同社取締役代表執行役社長に就任。2013年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

別に日本だけではなく、世界中どこの国でも中央都市の人口密度の高いところでは時の流れは速く、そこから離れれば、時の流れはゆっくりになって行く。その離反はいい悪いの問題ではなく、受け入れて生きていけばよいだけのことである。肌に合わなければ移動(引越し)すればよいのである。文中に出てきた玉村豊男のように。いつの時代もどこからが東京(中央都市)でどこからが地方なのか、人口密度だけの問題でもなく、どこにどのような機能を配するか、どこでどのようなビジネスができるか等、複雑な要素で後に人々がなんとなく認識するものに過ぎない。江戸初期までは現在の東京なんてそれこそ弩田舎だったのだし、現在はそれなりの住宅地になっている世田谷だって戦後くらいまでは何にも無い弩田舎だったのである。未だに練馬以西は田舎である。東京と一括りにするのではなく、適切な表現にしたほうが良い。ホワイトカラーの多いビジネス街周辺であれば、東京だけが忙しいというわけではない。(2017/02/28 14:46)

東京の人が地方を語るとき、地方都市居住者は何か違和感を感じる。地方ってどこを想定しているのだろうかと。
関東都市圏には3700万人、それ以外の都市圏には5100万人が居住している。
一定規模の地方都市であれば、家の隣に畑があるわけでもなく、さほどスーパーが離れた場所にあるわけでもない。東京以外で、そのような場所に5100万人が住んでいる。
しかし、東京から地方を語るときにはそれらの人々はスルーされているような印象を受ける。
「地方」で一括りにするのは大雑把すぎないか。(2017/02/27 13:29)

筆者は、今後起こるかもしれない日本版トランプ現象でも、地方が中央に対して蜂起するという状況を想定されているようだが、地方や地方都市にまだまだ人口が残っているアメリカと、すでに三大都市圏の人口が過半数を超え、さらにその割合を増していくであろう日本ではまったく状況が異なる。

今の日本では一票の格差もあって、国による都市→地方への富の再分配が是認され、奇妙なバランスがギリギリ保たれているが、未来のポピュリズム下の日本では国民投票や首相公選制などを通じ、都市部住民の意向が過激に遂行される可能性は否定できない。そうなったときに日本の地方がどうなるか……想像するまでもないし、地方出身者の自分にとっても実現してほしくない、最悪のシナリオと思う。(2017/02/26 21:17)

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