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ビジネスとは文理共創の世界

2016年5月10日(火)

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(写真=アフロ)

 産業技術総合研究所(産総研)に移って間もなくのころ、ある大学から講演の依頼を受けた。1、2年生を対象にした「文理融合」の講義として、学外の人に話をしてもらうというプログラムだった。講演が近づき大学側から題目を決めて下さいと催促されたので、できるだけ学生の注目を引こうと奇をてらい、「文系はバカか?」でどうかと返答をした。勿論パラドックスである。

 ある程度物議を醸すかもと予想していたのだが、果たせるかな、担当の方から「この題目は困るので、できれば変更願いたい」と返事がきた。知り合いの大学教授に、どうしたものかと相談したところ「これはこれでいいタイトルじゃないか、君らしくていい。これで先方がまずいというならお断りすればよい」と逆に励まされた。早速、先方には「駄目とおっしゃるなら、講演はお受けしません」と返答したところ、「再度検討させてください」と回答保留。数日間返事がなく、どんな検討をされているのかと気になっていたのだが、その後、「そのままでお願いします」との連絡を受けた。

 理系の中には、文系科目はどうも扱いにくいという理由で理系に逃げ込む人が結構多い。文系科目は人や地域や時間などが研究の対象で、研究成果は人によって異なる。その点、理系科目は、普遍的でかつ単純な結果が得られるから、一度この世界に踏み入れると気分的にもスッキリして居心地も悪くない。ただ理系は、「理(ことわり)」を追求するあまり分析的になりがちで、結果が統合されることも少ない。

 余談だが、今日の理系学会は細分化され過ぎ、学会の数は、研究者の総数を上回るほどだと言う人もいる。また、「統合」は既に分析した結果を寄せ集めたものとみなされてしまい、学問の対象になりにくいという側面も持つ。「モノづくり」系の学問がアカデミアでは広がりを見せないのは、このあたりに原因があるのかもしれない。

 一方、文系科目の「文」は「あや」であり、人の交わりを中心とする社会や経済を研究対象とするものである。理系人間はこれが苦手であり、このような分野は文系にまかせてしまえとばかりに、自らは理科の世界に閉じこもってしまう。ところが、最近では、モノづくりとかビックデータとかIoT(モノのインターネット)とか、とかく数学、物理、化学に基づいた技術で経済効果を上げようとするものだから、この分野の研究者が重宝される。もちろん、こうした研究者の能力と役割は重要だ。しかし、それだけでうまくいくとは考えにくい。理系と呼ばれている世界をよくよく見てみると、実は文系的な能力がないと解決できないものが少なくない。

 実際、理系を職業にして分かることなのだが、技術者としての仕事や、技術マネジメントにもたくさんのジレンマやトレードオフがある。これらを解決しないことには理系ワールドでも生きてはいけない。理系の仕事が高度化すればするほど、文系の人達が苦労している社会や経済の課題に直面する。文系には、いずれ自分達の力が必要となることをあらかじめ分かっているからだろうか、理系が活躍する世界に自ら入り込んでくることはせず、理系の人達からのアプローチや協力の要請を待っている人達が多い。その結果、文系の人達は、世の中のより重要な課題に取り組んでいるように、私には見える。

 私が講演したかった内容は、要約すると次のようなものである。

 世の中は理系の方が優秀だと思われがちだが、決してそんなことはない。信じられないような理系バカもいる。しかも、よく見ると世の中は文系社会だと言っても過言ではない。技術者として入社してもマネジメントに関わるようになってくると次第に文系要素が増えてくる。経営トップにでもなれば、たとえ理系出身でも直接技術に関わることは稀である。

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「ビジネスとは文理共創の世界」の著者

中鉢 良治

中鉢 良治(ちゅうばち・りょうじ)

産業技術総合研究所理事長

1977年、東北大学大学院工学研究科博士課程修了。同年、ソニー入社。2005年、同社取締役代表執行役社長に就任。2013年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師