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環境問題、今なら間に合う

2016年5月24日(火)

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 18世紀後半に始まった産業革命以降、企業は、競って石炭や石油、鉄鉱石などの地下資源を採掘し、動力や電力を駆使して、蒸気機関車、自動車、飛行機などを生産した。それに伴い、生産とロジスティックスにおいても一大革新が起こり、次々と多くの産業が生み出されていった。こうして、石炭などの地下資源を「採る」産業、この資源を使って「作る」産業、そしてその製品を「使う」産業が創出され、経済は飛躍的な発展を遂げてきた。

 ところが皮肉にも、これらの産業がそれぞれ廃棄物を生み、「棄てる」という負の産業連関までつくってしまった。この産業連関は「棄てる」が未解決のままであるが故に、今日では不都合なものに見えるが、このプロセスは開発途上国では今なお有力な成長戦略なのである。

 私が大学で資源工学を学んだ1960年代後半~70年代は、日本では既に鉱山業は衰退しつつあるころであった。また、公害など、技術革新や高度成長の負の遺産も次第に露呈し、大きな社会問題ともなっていた。当時激しかった学生運動は、こうした社会的状況とも無関係ではなかった。

 そんな中、私が入った学科は、元々鉱山工学科と称されていたのだが、既に鉱山業の先行きを見越していたのか、資源工学科と改称されていた。ここでは資源不足時代における研究の新たな方向性を求めて新規テーマへの取り組みを進めていた。私が選んだ研究室は元来「浮遊選鉱」が専門だったのだが、当時は廃水処理技術や人工鉱物を利用した材料開発を行っていた。私自身はというと、電子材料としてのセラミックスを研究テーマとした。その後、時代の波は、さらに研究の方向性に影響を与え、学科の名称は資源工学から、地球工学、そして環境科学研究へと変わっていった。

有効な新エネルギーとして期待されるメタンハイドレートの産出試験装置

 70年代前半、ローマクラブの『成長の限界』という本が話題になり、ベストセラーとなった。この本が提起した資源の枯渇と急激な人口の増加は、地球規模の問題として、世界の人々に認識されることとなった。このころ既に、資源工学科の卒業生で鉱山会社に就職する者はほとんどなく、多くは土木、建築、化学プラント会社など鉱山業ではない他の分野に就職していった。私は、先生の紹介で、エレクトロニクスのメーカーを選んだ。入社試験の面接で、希望の仕事を問われた時、「公害防止関係」と答えたところ、面接官の役員から「我が社に公害問題はない」と言われてしまい、面食らったことを覚えている。

 その後、資源枯渇の議論など環境問題の顕在化に伴い、国連にブルントラント委員会が設立され、持続可能な社会の実現を求める提言(1987年)が行われた。その中で「将来世代がその欲求を満たす能力を損なうことなく、現代社会の欲求を満足させる節度ある開発をすべきである」ということがうたわれた。この委員会は日本政府の提案によって設けられたものであるが、今日、持続可能な社会の実現が世界的に関心を集めている現状を鑑みると、日本は当時、この課題の先進国として、先鞭をつけていたのである。ローマクラブの提言も、ブルントラント委員会の提言も、経営の観点から言うならば、時々のP/L(損益計算書)だけに目を奪われるのではなく、B/S(貸借対照表)をきれいにせよという警鐘とも見て取れる。

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「環境問題、今なら間に合う」の著者

中鉢 良治

中鉢 良治(ちゅうばち・りょうじ)

産業技術総合研究所理事長

1977年、東北大学大学院工学研究科博士課程修了。同年、ソニー入社。2005年、同社取締役代表執行役社長に就任。2013年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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