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「叱るということ」―我が師に学んだ人材教育

2016年6月21日(火)

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1977年3月、下飯坂研究室卒業時の写真。前列中央が下飯坂先生、その後ろが筆者

 東北大学では、私は下飯坂潤三先生にご指導をいただいた。先生は、工学部資源工学科の鉱物処理工学講座を担当されていた。学生達は先生のことを親しみを込めて「坂(ザカ)さん」と呼び、下飯坂研究室のことを「坂(ザカ)研」と呼んでいた。

 ご自分の研究室の学生や院生が寸暇を惜しんで実験をしていることが自慢で、実験室をよく巡回された。そんな折、私はいつも間が悪く、テニスをしていたり、将棋を指していたり、花札をしていたりで、先生が望まれる研究一途の学生像とは真逆の姿を見せていることが多かった。また、先生と目が合ったのに会釈をしなかったりとか、先生がご不満に思うタネは枚挙にいとまがなく、しょっちゅう叱られた。

 原因はその都度異なっていたが、どうも中鉢は人への配慮が足りないということが、その根本にあったようだ。先生は、それを「やさしさ」と表現し、「やさしくなければ研究者として大成しない」とまでおっしゃっていた。つまり、やさしくなければ人の言うことを素直に聞けないし、注意も散漫になり、デリケートな実験もできない。重要な結果が出ても見逃してしまう。これが先生の持論であった。

 当時の私はそんな先生の箴言も耳に入らず、やさしさと研究に何の関係があるのか、先生が何と言おうと自分は一流の研究者になってやるんだ、と内心では考えていた。今思えば、きっとそれが態度にも表れていたのだろう、どう見ても、鼻持ちならない存在だったのである。

 私は、先生に仲人をしていただいて、大学院生時代に結婚した。結婚披露宴のご挨拶でも、先生は「やさしくなければ研究者として大成しない」の持論を披瀝された。その上で「新郎は少しやさしさに欠けるところがあるので心配である。研究者としての将来もさることながら、家庭生活においても大事なことなので、よく心掛けられたい」というような趣旨のことを話された。これを聞いた私の父などは式の終了後、「お前、大丈夫か?」と真顔で心配したほどである。

 先生は、私が慢心することを戒めるため「叱る」ことが多かった。その回数とそれに費やした時間を思うと、先生が「叱る」という行為に使われた情熱の総和は膨大である。私が今、逆の立場になったとしても、あれほどまでに弟子を叱るエネルギーがあるとは思えない。叱るには気力、体力が充実していなければいけないし、相手に対する愛情も必要だ。そして何より叱れば、自分も気分が悪くなってしまう。

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「「叱るということ」―我が師に学んだ人材教育」の著者

中鉢 良治

中鉢 良治(ちゅうばち・りょうじ)

産業技術総合研究所理事長

1977年、東北大学大学院工学研究科博士課程修了。同年、ソニー入社。2005年、同社取締役代表執行役社長に就任。2013年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長