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「母なる大地」と「科学の父」

2016年7月5日(火)

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 私が勤務する産業技術総合研究所は、その名の通り、産業技術に関連する研究開発を中心に活動を行っている。大学よりも産業に近く、企業よりも基礎・応用に近いという位置付けの研究所である。

 その産総研に、少し異色の研究領域が存在する。地質調査総合センターと計量標準総合センターである。地質調査総合センターは1882年設立の地質調査所、計量標準総合センターは1903年設立の中央度量衡器検定所をルーツとしており、公的研究機関として100年以上の歴史を有している。読者の皆さんには、どんな研究をしているのか、ピンとこない方もいらっしゃるかもしれないが、実際、私も産総研に来てから、この2つのセンターの役割について、改めてその詳細を知った。

人々の生活を豊かにする地質学

 古来より人々は、周りの自然環境と向き合い、生存に適した土地や地形を経験的に学んできた。言ってみれば、地質の研究とは、これら人間のすべての営みの源である「母なる大地」を知ることであり、人間にとって最も基盤的な研究の1つである。

 そもそも地質学という学問が確立されたのは19世紀始めのヨーロッパだと言われている。それは過去の地質現象を探求して地球の歴史を紐解くというものであったが、その手法は地下資源の探査に極めて有効であった。折しも、18世紀に起きた産業革命により、先進国は石炭をはじめとする大量の資源を必要としていたため、各国は競って「採る」ための地質調査機関を設立していった。

 地質学は、過去の堆積物や地殻変動など、地球の歴史を研究している。それは、前述のように、資源探索に貢献してきたわけである。しかし、今日にはそれ以上に重要なこととして、故きを知り、それを基に未来を予測することで、人々の生活を守り、自然と共生し、将来の生活を豊かにする。地質学にはこのような役割が期待できる。

貞観地震(869年)による津波堆積物の剥ぎ取り標本

 2004年から2010年にかけて、地質調査総合センターの研究グループは、東北地方太平洋岸で、これまであまり注目されていなかった津波堆積物の調査を行い、500~800年間隔で巨大地震があり、当時一般的に考えられていたより、はるかに広範な地域が津波に襲われていたことを突き止めた。そして、東北地方で、これまでの想定を超える大規模な津波を伴う超巨大地震が発生する可能性があることを報告していた。

 国がその報告を踏まえて、将来の巨大地震・津波の可能性に言及した評価を2011年春に公表する予定であったのだがその矢先、東日本大震災が発生してしまった。過去を知り将来に生かすことを信条としている研究者にとっては痛恨の極みと言うべき経験であった。

 その後、これが教訓となり、国の中央防災会議において、地震、津波の規模などの想定に関わるこれまでの考え方が改められ、産総研もより積極的に情報発信に取り組んでいる。産総研は、2014年9月に発生した御嶽山の噴火では、火山噴火予知連絡会のメンバーとして活動し、また、今年の4月に発生した熊本地震においても、直後から調査研究を行い、情報を発信し続けている。

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「「母なる大地」と「科学の父」」の著者

中鉢 良治

中鉢 良治(ちゅうばち・りょうじ)

産業技術総合研究所理事長

1977年、東北大学大学院工学研究科博士課程修了。同年、ソニー入社。2005年、同社取締役代表執行役社長に就任。2013年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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