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どう使う? ロボットと人工知能

2016年9月20日(火)

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多様で高精度な作業を繰り返し行える汎用ヒト型ロボット「まほろ」

 産業技術総合研究所が企業と共同で開発した「まほろ」というロボットがある。汎用ヒト型ロボットと呼んでいるが、人間が行う様々な動きに対応しているという意味でヒト型ではあるものの、見た目は人間ではない。双碗多関節のアームで、精緻で多様な動きをするロボットだ。このロボットは、主として新薬開発や遺伝子解析などのライフサイエンスの現場で使われることを想定して設計され、産総研発のベンチャー企業がシステム販売を開始している。

 開発の中心となった産総研の研究者は、元々タンパク質の研究が専門だ。タンパク質の解析は、ピペッティングと呼ばれる作業を含め、多くの手作業が必要とされ、これに費やす研究者の手間と時間が膨大だと彼は言う。加えて、劇薬や細菌等の接触という危険性もはらむ。そのような苦労をして繰り返す実験も、手作業の限界で実験結果がばらつくこともあり、信頼性を確保することが困難だ。

 彼は、この状況に強い危機感を持ったと言う。このままでは、優秀な研究者の時間と労力が実験に取られ、本来彼らがすべき創造的な研究活動に使える時間が無くなってしまう。その上に、バイオハザードのような危険が伴うとなれば、ライフサイエンスの研究分野から、若い才能が育たない。彼はそう考え、何としてもこの実験プロセスの自動化を進めたいとロボットの開発を進めた。まさに「必要は発明の母」である。

 彼が中心となって開発したロボットの特徴は次のようなものである。

  • 実験室における人間の動作のほとんどを確実に行える
  • 作業を繰り返し行い、実験を長時間続けることができる
  • 様々な環境下で実験ができる。例えば、無酸素状態であっても作動し、劇薬や細菌等を扱う現場でも作業ができる
  • 人の手によらないため、実験精度が格段に上がる
  • このロボットを、同じプロトコルで動かせば、世界中で同一の実験ができる
  • クラウド環境でネットワーク化すれば、研究室から離れた場所、例えば自宅からでも研究活動ができる

 このロボットに付けられた「まほろ」という名前は、研究者にとってより良い研究の場を実現したいとの彼の思いから、「理想郷」を意味する日本の古語「まほろば」から取ったと言う。

ロボットは人間と競わせない

 彼のロボット開発にかけた思いは、今後、ロボット・人工知能をどう使うか? を考える上で、示唆に富んでいる。彼の考え方の基本は、人間の能力を生かすことにあり、ロボットを人間と競わせることではない。人間と共生し、共創することにある。人間より細密な作業が得意なロボットができれば、それはロボットにさせればいい、力の強いロボットが登場すれば、人間は力仕事をしなくて済む、そう考える。ある種の労働からの人間の解放だ。そうすれば、人間の本来持っている創造力を生かし、より高度な業務を行うことができる。

 彼の描くロボットのいる世界は、人間との協業が実現し、人間とロボットが共生する世界だ。

 この考え方に私も賛成だ。ロボットが人工知能を持ち、人間の仕事を行い、生活に入り込むことになれば、共生のためのコンセプトを確立し、ルール作りを進めていく必要がある。そのことについては、今後専門家を中心に議論を重ねてほしいと思うが、個人的には、以下の考え方が重要になると思う。

コメント3件コメント/レビュー

筆者の意見に賛同します。人工知能は計算機能で、所謂、一意性が保障された出来事に対して有効な手法です。筆者が述べている、芸術など感性に関わる物事は、一意性が保障されておらず、取り巻く環境や条件によって変化をきたすものです。つまり換言すると、評価者が正解を決定するとも言えます。その意味で、今のところ、人間のみが可で、人工知能では不可と言えると思いました。人工知能が主体となる世界が、もし構築されてしまったら、評価者は人間ではなくなるので、そのとき、初めて人間と同じ、もしくは越えたと言えるのではないでしょうか?(2016/09/21 12:15)

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「どう使う? ロボットと人工知能」の著者

中鉢 良治

中鉢 良治(ちゅうばち・りょうじ)

産業技術総合研究所理事長

1977年、東北大学大学院工学研究科博士課程修了。同年、ソニー入社。2005年、同社取締役代表執行役社長に就任。2013年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

筆者の意見に賛同します。人工知能は計算機能で、所謂、一意性が保障された出来事に対して有効な手法です。筆者が述べている、芸術など感性に関わる物事は、一意性が保障されておらず、取り巻く環境や条件によって変化をきたすものです。つまり換言すると、評価者が正解を決定するとも言えます。その意味で、今のところ、人間のみが可で、人工知能では不可と言えると思いました。人工知能が主体となる世界が、もし構築されてしまったら、評価者は人間ではなくなるので、そのとき、初めて人間と同じ、もしくは越えたと言えるのではないでしょうか?(2016/09/21 12:15)

パラリンピックを見ていて、近い将来、義手や義足がロボット化するのだろうと思いました。両足の義足がロボット化すると、記事にあるアンドロイドが9.0秒で走るのに似たような世界となるでしょう。その際、著者が指摘する「感動」がどのようになるのか。身障者には両足がロボット化して自由に歩けるのは朗報だと思います。それを使った競技は不可となりましょうか。。。車椅子が不要な世界は理想的だと思うのですが。。。パラリンピックの記録が健常者の記録の数倍上をいくという世の中はダメですかね。。。(2016/09/20 17:13)

2045年にコンピュータが人間を超えるとの予想も有りますが、現在の最高のコンピュータが人間の脳の極一部の限られた機能を模擬するのにも苦労している状況と、ムーアの法則に陰りが見られことから、人間の脳と体の総合作用で生まれる感性をコンピュータが模擬する時期は、永遠に来ないのかも知れません。この意味で、人間とコンピュータの得意とする分野を棲み分ければ、より高度で新たな仕事を生み出し、明るい未来が開けてくる可能性は高いと思われます。ここで気になるのは、「善意でコンピュータ利用が行われれる」という保証がないことです。天才的な詐欺師やアジテイター、独裁者、キラーロボットを生み出すことにAIが悪用されない様、新たな規制と監視機関、高い技術者倫理が求められてくると思われます。(2016/09/20 09:58)

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