• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

巨大な金塊にまつわる人の縁

2016年10月4日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

モンスターゴールドが展示されているつくばの産総研 地質標本館

 以前、このコラムでも書いたのだが、私が勤めている産業技術総合研究所(産総研)は1882年設立の地質調査所をルーツとしている。地質調査所は産総研の一部となって、現在は地質調査総合センターとして調査活動を行っており、研究活動の傍ら、採集した岩石、鉱物、地質標本などを展示した地質標本館(つくば市)を運営している。ここは、研究者だけでなく、一般の方にも見学して頂いている。

 あまり知られていないのだが、実はその標本館に、世界最大級の自然金が展示されている。宮城県気仙沼市北部の鹿折(ししおり)金山で明治37年(1904年)に発見されたものだ。その大きさから「モンスターゴールド」と呼ばれている。標本館で展示されているものは、発見当時のモンスターゴールドの大きさの6分の1程度であるが、それでも日本で産出された自然金の標本としては最大(362グラム)である。

海を渡った巨大な金塊

 なぜ、6分の1しか残っていないのかについては後述するとして、モンスターゴールドは、発見されたその年に、アメリカのセントルイス万国博覧会に出品されている。はるか東洋の国から海を渡ってきた巨大な金色の塊は、定めし来場者の目を奪ったに違いない。ちなみに、この博覧会でモンスターゴールドは、何等賞に相当するかは良くわからないが銅メダルをもらっている。頂いたメダルと賞状は、現在、気仙沼市の市長室に保管されている。

 この年、セントルイスでは万国博覧会の併設イベントとして、アメリカ大陸初のオリンピックが開催されている。万博とオリンピックを併設イベントとして開催するとは、驚く話だ。その一方で、アジアでは、日本とロシアとの間で日露戦争が勃発している。

 日露戦争のとき、日本軍は旅順を巡る攻防で、ロシア軍と激しい戦いを強いられている。司馬遼太郎の『坂の上の雲』によれば、日本軍の敗色濃厚と思われていたそのころ、首相の桂太郎が、鹿折鉱山の話を聞きつけ、高含有率の金鉱が発見されたことを、戦地にいる総司令官大山厳に知らせるよう指示をしている。「夢の金山は、採掘量40億円」と伝えられていたから、これが本当なら日露戦争の軍費は十分にまかなえられる。

 これは朗報だった。早速総参謀長の児玉源太郎が大山に報告した。ところが、これを聞いた大山はクスッと笑い、これは桂さんの政略に違いないと思い、取り合わなかったという。実際に採掘するとなれば多額の資金を要する。当時の政府がこの金山に大金を割けるはずがないと大山は見抜いていたのである。

 鹿折鉱山は、慶長年間に仙台藩主伊達政宗により開山され、一時期荒廃していたのだが、明治20年に再開発が始まった。その後、早稲田大学の徳永重康教授が地元のパートナーと共にこの金山の権利を買い取り、開発、経営にあたっていた。そんな中、明治37年、徳永氏は「計らずも、金の“大直り”を発見した」のである。「大直り」というのは鉱山で成分が多く含まれる塊のことであり、徳永氏自身がこの「大直り」をモンスターと称した。

 そして、前述のセントルイス万博で「ナゲットモンスター」と称して出展している。「ナゲット(Nugget)」とは「金塊」の意味である。余談だが、今日ファストフード店で提供される、あのチキンナゲットとは、さしずめ金塊の形をしたフライドチキンを意味し、日本風に言えば「から揚げ鶏肉大直り」である。モンスターゴールドの写真をよくよく見ると、確かにチキンナゲットに見えてくる。

コメント0

「中鉢良治の「人在りて、想い有り」」のバックナンバー

一覧

「巨大な金塊にまつわる人の縁」の著者

中鉢 良治

中鉢 良治(ちゅうばち・りょうじ)

産業技術総合研究所理事長

1977年、東北大学大学院工学研究科博士課程修了。同年、ソニー入社。2005年、同社取締役代表執行役社長に就任。2013年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック