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リハビリに全力、不安が増幅していく病院の夜

いざ始めてみるとこれが本当にキツかった

2017年5月31日(水)

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 一般の人のスポーツジムでのトレーニングと、脳梗塞のリハビリの根本的な違いは、神経伝達の方向が真逆であることだ。

 脳梗塞の麻痺は運動神経をつかさどる脳細胞が死滅し、司令塔の機能を失うことによって手足が動かなる。話がしづらくなるのも、頬や舌に正しく動かせという信号を脳が送れないことによって起こる。つまりリハビリとは、筋トレではなく、脳トレなのである。手や足を動かすことで末梢の神経に刺激を与え、神経回路を遡って、脳を再教育するのだ。

 入院中にこんな光景も目にした。

 私と同世代の男性だったが、全身麻痺で話すこともできない。目の動きだけでかろうじて意思の疎通を図るという重度の麻痺で、私の胸は張り裂けた。当然の事ながらリハビリも寝たきりで行われていた。ところがある日、ストレッチャーに乗せられてリハビリルームに現れた。すると理学療法士が4人がかりで、彼の体を起こし、床に立たせたのだ。理学療法士たちは汗だくになりながら、時間にして30秒か1分か、決して長い時間ではなかったが、とにかく彼を自分の足で立たせたのだ。

末梢神経から刺激を入れて、脳を再教育する

 それがどれほどの意味を持っているのか? 私はその中の1人の理学療法士に尋ねてみた。

 「二足歩行が人間の特徴です。寝たきりの状況であっても、自分の足で立ち、足の裏から刺激を入れることがとても重要なんです」

 まさにリハビリの原点だが、手足を動かして刺激を入れさえすればよくなるというほど単純ではない。私の腕は、手首と肘をつなぐ内側の筋肉が拘縮(過度に緊張)していたために、手のひらが真上を向くように返すことができなかった。手先を動かすためには、手先から肘、肩甲骨、肩まわりの複雑な筋肉の、ある部分は緊張をゆるめ、またある部分は鍛えるという非常に複雑なリハビリに、長い時間をかけて取り組まなければならなかった。

 実際にリハビリをやると、手や腕の改善を図る作業療法の疲労度が一番激しい。とにかく頭が疲れる。末梢から刺激を入れて脳を再教育することを実感するのが作業療法だった。

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「財部誠一 脳梗塞からの帰還」のバックナンバー

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「リハビリに全力、不安が増幅していく病院の夜」の著者

財部 誠一

財部 誠一(たからべ・せいいち)

経済ジャーナリスト

1980年、慶應義塾大学を卒業し野村證券入社。出版社勤務を経て、1986年からフリーランスジャーナリスト。BSイレブンの「財部誠一の『異見拝察』」などTVやラジオで幅広く活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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