後遺症で「箸の持ち方」も分からず驚愕した

リハビリは脳に「思い出させる」ためのトレーニング

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2015年2月に脳梗塞を発症、翌月に急性期病院からリハビリのための病院に転院し、スパルタ式のリハビリを始めた。 ※写真はイメージです=以下同 (写真:PIXTA)

アスリートのリハビリは筋トレだが……

 リハビリテーションは英語ではrehabilitation。「re」は「再び」という意味の接頭語であり、「habilitation」は「任官」を意味する。

 つまりリハビリテーションは失った職位に返り咲くとか、失った権威を取り返すことを意味しており、端的な日本語訳をあてるなら「復職」とか「復権」となる。

 取材をして、原稿を書き、テレビや講演活動でアウトプットする──。

 まさに「復職」であり「復権」こそが私のリハビリのゴールセッティングであり、それを目指す執念こそがリハビリ訓練の原動力のすべてだった。

 だが2015年3月、初台リハビリテーション病院に入院直後の私の現実は、右半身麻痺。歩けないばかりか、右腕は亜脱臼状態でまるで動かない。声量はないしスムーズに口を動かすこともできなかった。ゴールへの道筋は暗闇に閉ざされ、ゴールテープを切る自分の姿をイメージすることすらできなかった。

 多くの人はリハビリと聞けば、怪我からの復帰を目指すアスリートの筋トレの様子を想起しがちだが、脳梗塞のリハビリの複雑さたるやその比ではない。アスリートのリハビリは筋トレで完結するが、脳梗塞のリハビリは脳トレだ。単純なガンバリズムが一切通用しない、複雑系の作業なのである。

脳に箸の持ち方を「思い出させる」

 人間の様々な身体は司令塔である脳からの命令によって動く。ところが脳梗塞は脳細胞を死滅させ、脳から司令塔の機能を奪ってしまう。脳梗塞のリハビリは、手足を強制的に動かすことによって末梢から刺激を与え、脳に再学習させることに他ならないが、私の実感に沿っていえば「思い出させる」作業なのである。

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著者プロフィール

財部 誠一

財部 誠一

経済ジャーナリスト

1980年、慶應義塾大学を卒業し野村證券入社。出版社勤務を経て、1986年からフリーランスジャーナリスト。BSイレブンの「財部誠一の『異見拝察』」などTVやラジオで幅広く活躍中。

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