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「装具をつけない」選択をした私は幸運だった

一度つけてしまうと、克服の機会は失われがちに

2017年11月1日(水)

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写真は「短下肢装具」という短いタイプの装具だが、麻痺が強い脳梗塞患者の初期の治療用としては、ふくらはぎ全体をカバーする「長下肢装具」という長いタイプが使われることも。 ※ 写真はイメージです(画像:PIXTA)

たった一度だけ涙を流した時のこと

 不覚にも思わず涙を流したことが一度だけあった。初台リハビリテーション病院に入院して間もない頃だ。

 初台のリハビリスタッフはチーム制をとっている。メインの担当者以外に3名の理学療法士が私の情報を共有し、バックアップしてくれる体制だった。

 「装具は使用しない」

 このコンセプトはチーム全体で了解されていた。ところがある日、チームの責任者が「一度だけこれをつけてみてくれ」と言い出した。彼は足底から太ももの付け根まで、右足全体を包み込む皮製の装具を手に持っていた。

 膝関節にあたる部分はズボンのベルトのように緩めたり、きつく締めたりして可動域を調整することができる。足首や膝が突然ガクリとして私が転倒しないよう、彼は膝部分を強く締め、右足を一本の棒のようにガッチリとかためた。

 「平行棒を左手で持ったまま、それで歩いてみましょう」

 なんなく歩けることはわかっていた。初台へ転院する前、急性期病院のリハビリでも、平行棒を支えにさえすれば、四苦八苦しながらも、装具なしでの歩行練習が出来ていたのだから、装具で右足をガンダムのように固めてしまえば当然歩ける。

 涙の理由はこの後だ。

地獄の淵で思いがけず、吉兆に出くわした

 その理学療法士は、膝関節部のベルトをほどき、膝が自由に動けるようにすると、平行棒から手を放し、フリーハンドで自分の方に歩いて来いというのだ。これには驚いたというか、恐れ慄(おのの)いた。

 「いくらなんでも無理だ」

 体幹もすっかり弱くなり、姿勢の制御もままならぬ状態だったから、平行棒から手を離せば転倒すると思い込んでいた。しかし右足は“ガンダム”だ。恐るおそる右足を出してみると、魔法にかかったように、スッとでた。今にして思えば、カラダのバランスも悪いし、右足もきれいに前に出せず、外側からぶん回すようになっていたであろうことは容易に察しがつく。

 だが1メートル、2メートルと、歩けている現実は、地獄の淵で思いがけず、吉兆に出くわしたようなもので、その瞬間、それまで感じたことのなかった感情が一気に込み上げてきたのである。根拠などあるはずもないが、なぜかその瞬間、私には「歩けるようになれる」という確信が熱い感情となって込み上げてきたのだった。

病院のリハビリルーム。 ※ 写真はイメージです

コメント5件コメント/レビュー

短下肢装具と長下肢装具の区別もきちんとついてないですが大丈夫ですか?
長下肢装具はももまで固定するタイプです。
短下肢装具と言っても様々なタイプがあります。
参考:鉄道弘済会義肢装具サポートセンター
http://www.kousaikai.or.jp/support/knowledge/brace.html
取材して執筆している記事ならば、きちんと調べて執筆すべきでは。
編集部も本人の体験談だからと内容をチェックしないでそのまま掲載しているのですか?
患者の体験談とはいえ、取材に基づく執筆というスタイルで患者や家族に誤解を招くような医療関係の記事を掲載するのは問題ないのですか?(2017/11/05 09:01)

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「「装具をつけない」選択をした私は幸運だった」の著者

財部 誠一

財部 誠一(たからべ・せいいち)

経済ジャーナリスト

1980年、慶應義塾大学を卒業し野村證券入社。出版社勤務を経て、1986年からフリーランスジャーナリスト。BSイレブンの「財部誠一の『異見拝察』」などTVやラジオで幅広く活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

短下肢装具と長下肢装具の区別もきちんとついてないですが大丈夫ですか?
長下肢装具はももまで固定するタイプです。
短下肢装具と言っても様々なタイプがあります。
参考:鉄道弘済会義肢装具サポートセンター
http://www.kousaikai.or.jp/support/knowledge/brace.html
取材して執筆している記事ならば、きちんと調べて執筆すべきでは。
編集部も本人の体験談だからと内容をチェックしないでそのまま掲載しているのですか?
患者の体験談とはいえ、取材に基づく執筆というスタイルで患者や家族に誤解を招くような医療関係の記事を掲載するのは問題ないのですか?(2017/11/05 09:01)

十分な理解が出来てないものに口出しをしてくる行政、誰に何の得があるのでしょう?
日本人の健康寿命は右下がり確定ですね。(2017/11/02 10:41)

以前、こちらにも執筆されていた伊東 乾さんが、BJで書かれていた記事と符合するところがあると思い納得のいく記事でした。
伊東さんのお母様が脳梗塞で入院されたとき、足に麻痺が出たそうですが、脳と足の感覚を衰えさせないように、すぐさま低周波治療器(肩こり解消器具)をたくさん買われて、ベットに横たわっている1~2週間ずっと足に刺激を与え続けたそうです。伊東さん自身は、ご自分の研究の中から別の神経回路を有効にするための神経の訓練的な意味合いがあるとの趣旨であったと理解していますが、その後、お母様は正常に歩けるように回復されたとのこと。

すべてがうまくいくかはともかくリハビリにおいて神経回路の再構築というのは重要なヒントと家事ている次第です。(2017/11/02 08:54)

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