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言葉を失えば「思考」もダメージを受ける

一体と信じ込んでいた舌も、右半分だけが麻痺した

2017年12月5日(火)

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思いを声に出して伝えられないことは「恐怖」

 シャ乱Qのボーカリストにして作詞・作曲家、モーニング娘などのプロデューサーとしても知られるつんくさんは2014年10月に声帯を摘出して「声」を失った。「声」か「命」か。咽頭癌になった音楽家の、究極の選択を迫られた末の決断だった。歌うことも、タレントに威勢よく指導することもできないことは、音楽家として致命的だ。いやそれ以前に、思ったことや感じたことをごく自然に声に出して伝えられなくなることは、恐怖以外の何物でもない。

 今後はテクノロジーの進化によって、たとえ声を出せなくても人とコミュニケーションすることは出来るだろうという考えは、お門違いも甚だしい。言葉と思考は一体だ。声に出して話すことによって「思考」そのものが輪郭を整える。人前で話しながら、その途中で自分の考えがまとまり、より鮮明になった体験を誰でも持っているに違いない。逆に言葉を失えば「思考」そのものもダメージを受けると言っていいだろう。

声を出せなくなり言葉を失ってしまうと、「思考」そのものもダメージを受けてしまう。(写真:PIXTA)

 報道によればつんくさんは、大変な努力によって食道発声法を身につけつつあるという。何が何でも自分の声を取り戻したいと願う思いの強さ、またその辛さは当事者にしかわからないが、その一端を脳梗塞の後遺症によって私も垣間見た。

麻痺は右か左の半身のどちらかに“きれいに”現れる

 脳梗塞の後遺症は右か左の「半身麻痺」となって現れる。

 体の中心線を挟んでものの見事に、麻痺が右半身か左半身に、きれいに分かれる。私の場合は右半身麻痺だったが、これが例外なく、右半身すべてが麻痺するから驚いてしまった。例外があっても良さそうなものだが、そうはいかない。表情筋も影響を受けるから、じっと顔を見つめると、顔の右半分がなんとなくいつもと違って見える。我ながらびっくりしたのは、口や舌の動きにも麻痺が出ていたことだ。にわかには信じがたがったが、左右の区別などない、一体のものと信じ込んでいた舌までも、右半分が麻痺していた。だから口から舌を突き出すと、舌先が大きく左側に寄ってしまうのだ。

 その結果、言葉を明瞭に話すことができなくなってしまった。さらに声量も落ちた。大きな声を発することが出来なくなってしまったのだ。

コメント2件コメント/レビュー

私の場合は心筋梗塞で心停止し、脳への酸素供給が途絶えために記憶障害となりました。特に、一時記憶の部分、恐らく海馬の辺りにダメージを受けたようで、コンピュータでいうとアドレスが途中で書き換わるようなことが起こって、例えばテレビで見ていたことが、自分自身の記憶に置き換わってしまうこともありました。その経験からすると、筆者の付けたタイトル、『言葉を失うと「思考」はダメージを受ける』というのはかなり軽いもので、本当に言葉を失う、つまり脳に言葉が存在しなければ思考などできなくなります。言葉そのものを失わなくても、記憶のアドレスが途中で不明になるだけでも、考えていたことがなんだか分からなくなったり、思考していたものが後から加わった記憶に置き換わったり等して、やはり思考ができなくなります。その経験からすると、言葉を発する機能が脳梗塞でダメージを受けると、人とのコミュニケーションがうまくいかず思考の伝達が行えない、だから思考していないことになるということは想像できました。
私の方は、発症後、10年以上が経過しているので、元の様に思考を進めることはできませんが、それでも、このようなコメントが書ける程度の思考はできるようになりました。人間の補修作用は結構すごいなというのが、現在の感想です。(2017/12/05 18:44)

「財部誠一 脳梗塞からの帰還」のバックナンバー

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「言葉を失えば「思考」もダメージを受ける」の著者

財部 誠一

財部 誠一(たからべ・せいいち)

経済ジャーナリスト

1980年、慶應義塾大学を卒業し野村證券入社。出版社勤務を経て、1986年からフリーランスジャーナリスト。BSイレブンの「財部誠一の『異見拝察』」などTVやラジオで幅広く活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

私の場合は心筋梗塞で心停止し、脳への酸素供給が途絶えために記憶障害となりました。特に、一時記憶の部分、恐らく海馬の辺りにダメージを受けたようで、コンピュータでいうとアドレスが途中で書き換わるようなことが起こって、例えばテレビで見ていたことが、自分自身の記憶に置き換わってしまうこともありました。その経験からすると、筆者の付けたタイトル、『言葉を失うと「思考」はダメージを受ける』というのはかなり軽いもので、本当に言葉を失う、つまり脳に言葉が存在しなければ思考などできなくなります。言葉そのものを失わなくても、記憶のアドレスが途中で不明になるだけでも、考えていたことがなんだか分からなくなったり、思考していたものが後から加わった記憶に置き換わったり等して、やはり思考ができなくなります。その経験からすると、言葉を発する機能が脳梗塞でダメージを受けると、人とのコミュニケーションがうまくいかず思考の伝達が行えない、だから思考していないことになるということは想像できました。
私の方は、発症後、10年以上が経過しているので、元の様に思考を進めることはできませんが、それでも、このようなコメントが書ける程度の思考はできるようになりました。人間の補修作用は結構すごいなというのが、現在の感想です。(2017/12/05 18:44)

初台リハビリセンターは元職場近くの懐かしい呼称です。私も2年半前に、小脳梗塞で入退院したので財部さんの苦悩は、他人ごとではありません。時たまこの連載を拝見して、文章が鋭いと感心しております。幸い私は体の麻痺も言葉も失わなかったのですが、亡くなった父は元教員であったのに、喉頭がんで声を失う代わりに、家族の為に生きる道を選択しました。財部さんも後遺症に負けずに、これからもご活躍される事を念じております。(2017/12/05 10:23)

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三品 和広 神戸大学教授