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言葉を失えば「思考」もダメージを受ける

一体と信じ込んでいた舌も、右半分だけが麻痺した

2017年12月5日(火)

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 もともと私の声は良く言えばハスキーという表現になるのだろうが、要はしゃがれ声であった。活舌もいい方ではなかったが、困ることはなかった。

 だが脳梗塞によって⾔葉をコントロールする⼒を失ってみると、そのありがたみが身に染みた。幸いなことに、⽇常⽣活に必要な最低限のコミュニケーションはできたものの、思った事を思ったとおり声にすることができなくなってしまった。⼝が回らないうえに、声量が乏しい。話すのに努⼒が必要になってしまったのである。

テレビの対談番組など、出来るわけがない

 ジャーナリストとして最重要の仕事は取材だが、じつのところ取材はいくら経験を積んでも難しい。取材の成否は事前の準備できまる。取材の技術は1割ほどで、9割は下調べなど事前準備で決まるというのが私の信念である。だが取材は臨機応変に対応できるかどうかが勝負になる。相⼿の話を聞きながら、その真意を探りつつ、次にぶつけるべき質問を懸命に思案しなければならない。事前準備は重要だが、取材時にはあえてそれを忘れ、相⼿と向き合った瞬間に集中する。真剣勝負の取材こそがジャーナリストの醍醐味である。

 しかしこれがけっこう疲れる。1回1時間で1日2人まで。どんなに頑張っても、1日に3人が気力、体力の限界だ。精も根も尽き果ててしまう。

 脳梗塞により自分が発する言葉に不具合を感じるようでは、とうてい取材などできはしない。同様にテレビの対談番組も出来るわけがない。「声」を失いはしなかったが「取材」する力は完全に失ってしまったというのが、私の偽らざる気持ちだった。

自分が発する言葉に不具合を感じるようでは、取材はさらに難しいものになる。(写真:flynt/123RF)

コメント2件コメント/レビュー

私の場合は心筋梗塞で心停止し、脳への酸素供給が途絶えために記憶障害となりました。特に、一時記憶の部分、恐らく海馬の辺りにダメージを受けたようで、コンピュータでいうとアドレスが途中で書き換わるようなことが起こって、例えばテレビで見ていたことが、自分自身の記憶に置き換わってしまうこともありました。その経験からすると、筆者の付けたタイトル、『言葉を失うと「思考」はダメージを受ける』というのはかなり軽いもので、本当に言葉を失う、つまり脳に言葉が存在しなければ思考などできなくなります。言葉そのものを失わなくても、記憶のアドレスが途中で不明になるだけでも、考えていたことがなんだか分からなくなったり、思考していたものが後から加わった記憶に置き換わったり等して、やはり思考ができなくなります。その経験からすると、言葉を発する機能が脳梗塞でダメージを受けると、人とのコミュニケーションがうまくいかず思考の伝達が行えない、だから思考していないことになるということは想像できました。
私の方は、発症後、10年以上が経過しているので、元の様に思考を進めることはできませんが、それでも、このようなコメントが書ける程度の思考はできるようになりました。人間の補修作用は結構すごいなというのが、現在の感想です。(2017/12/05 18:44)

「財部誠一 脳梗塞からの帰還」のバックナンバー

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「言葉を失えば「思考」もダメージを受ける」の著者

財部 誠一

財部 誠一(たからべ・せいいち)

経済ジャーナリスト

1980年、慶應義塾大学を卒業し野村證券入社。出版社勤務を経て、1986年からフリーランスジャーナリスト。BSイレブンの「財部誠一の『異見拝察』」などTVやラジオで幅広く活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

私の場合は心筋梗塞で心停止し、脳への酸素供給が途絶えために記憶障害となりました。特に、一時記憶の部分、恐らく海馬の辺りにダメージを受けたようで、コンピュータでいうとアドレスが途中で書き換わるようなことが起こって、例えばテレビで見ていたことが、自分自身の記憶に置き換わってしまうこともありました。その経験からすると、筆者の付けたタイトル、『言葉を失うと「思考」はダメージを受ける』というのはかなり軽いもので、本当に言葉を失う、つまり脳に言葉が存在しなければ思考などできなくなります。言葉そのものを失わなくても、記憶のアドレスが途中で不明になるだけでも、考えていたことがなんだか分からなくなったり、思考していたものが後から加わった記憶に置き換わったり等して、やはり思考ができなくなります。その経験からすると、言葉を発する機能が脳梗塞でダメージを受けると、人とのコミュニケーションがうまくいかず思考の伝達が行えない、だから思考していないことになるということは想像できました。
私の方は、発症後、10年以上が経過しているので、元の様に思考を進めることはできませんが、それでも、このようなコメントが書ける程度の思考はできるようになりました。人間の補修作用は結構すごいなというのが、現在の感想です。(2017/12/05 18:44)

初台リハビリセンターは元職場近くの懐かしい呼称です。私も2年半前に、小脳梗塞で入退院したので財部さんの苦悩は、他人ごとではありません。時たまこの連載を拝見して、文章が鋭いと感心しております。幸い私は体の麻痺も言葉も失わなかったのですが、亡くなった父は元教員であったのに、喉頭がんで声を失う代わりに、家族の為に生きる道を選択しました。財部さんも後遺症に負けずに、これからもご活躍される事を念じております。(2017/12/05 10:23)

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