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建築が“炎上”する時代を引き受ける覚悟

複雑に絡み合った社会の問題を「建築」で解く

2016年5月30日(月)

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 「このままでは、建築家が世の中の流れから取り残される可能性がある」そう危機感を口にするのは、建築そのものが厳しい批判にさらされている状況を誰よりも感じているから。社会が直面する複雑に絡み合った問題を解決するために、建築家には何ができるのだろうか。

(前回から読む

オリンピックに対しては、個人的にどんな思い入れがありますか?

:ぼくが建築家の道を志した原点は、1964年の東京オリンピックにあります。オリンピックのために建てられた、丹下健三の設計による「国立代々木競技場」の「代々木第一体育館」と「代々木第二体育館」のデザインが、小学生だった自分にとって、あまりに衝撃的で、あまりにカッコよかった。すべてはそこから始まりました。

隈 研吾(くま・けんご)
1954年、横浜市生まれ。1979年、東京大学工学部建築学科大学院修了。米コロンビア大学客員研究員を経て、隈研吾建築都市設計事務所主宰。2009年より東京大学教授。

1964年というと、10歳になる頃ですね。

:ぼくが生まれ育った場所は、横浜市の大倉山というところです。子供のころの大倉山は、周囲のそこかしこに田んぼと畑があり、郊外というよりも田舎というか農村の風情が色濃く残っている場所でした。東京オリンピック前には、新幹線の建設が急ピッチで進められ、田んぼの中にコンクリートの高架橋がどんどん立ち上がっていました。その眺めは子供心にも輝かしいもので、「すげえな……」と感激しながら、田んぼに行って工事を眺めたものです。

 代々木競技場では、いろいろなシーンを覚えています。第一体育館ではプールの上に高く天井を取ってあり、プールに浸かっていると、天窓から光がキラキラと水面に下りてくる。それまでに見たこともない神々しさに満ちていて、心を奪われました。第二体育館に行くと、今度はまた違った親密感がありました。第二体育館は内装が木で、雰囲気が温かいのです。木製の壁に外からの光が柔らかく当たり、壁面が赤く輝いている光景は今でもよく覚えています。

「建築」そのものが世界中で“炎上”の対象になる

そういった個人的な思い入れがあったとしても、いったん白紙撤回された新国立競技場を設計するのは、まさに“火中の栗”を拾うようなものではないでしょうか。

:もはや建築プロジェクトは、世界中で“火中の栗”なんです。税金のムダ遣いであるとか、環境破壊であるとか、常に厳しい批判が市民から寄せられています。アメリカでも、ヨーロッパでも、中国でもそうです。ぼくらの世代の建築家は、日本でバブルが弾けてしまったので、海外に出なきゃならなかった。だから建築家というのは、「エラい先生」ではなく、「火中の栗を拾うことを運命づけられた悲しい人たち」です(笑)。

海外では建築家は市民から尊敬されているのかと思っていました。

:予算の超過やスケジュール遅延に対しても厳しい目が向けられています。だから、利害関係者に自分がどう説明するかは重要です。「これがデザインだ、どうだ」といった芸術家目線でいくと、とても理解は得られない。みんなの批判をニコニコしながら全部聞いて、疑問に対してわかりやすく説明する以外に誠意を示す道はないのです。

 例えば、地域の再開発プロジェクトでしたら、「この立地は今、こういうことで課題を抱えています。それをぼくはこのように解決したいと考えています。みなさんの場所が今よりもずっとよくなっていくことを願っているのです」と、それこそ子供のような説明を、一から順番にします。そうやって腹を割って、素直に話をすると、プロジェクトを批判していた住民も、やがて納得し、応援してくれるようになるんです。

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「新国立競技場をつくる」のバックナンバー

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「建築が“炎上”する時代を引き受ける覚悟」の著者

隈 研吾

隈 研吾(くま・けんご)

建築家

1954年、横浜市生まれ。東京大学工学部建築学科大学院修了。米コロンビア大学客員研究員を経て、隈研吾建築都市設計事務所主宰。2009年より東京大学教授。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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