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「カッコ悪くていいじゃないですか!」

相模屋食料・鳥越淳司社長(最終回)

2016年10月24日(月)

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 2005年7月、前代未聞、ロボットがおとうふをつくる「相模屋食料第三工場」が稼働した。人の手を介さないから、おとうふをアツアツのままパッキングができ、風味がよい。さらには雑菌が繁殖しにくく消費期限が伸びた。それまでおとうふは毎日、小売店に運んでいたが、相模屋のおとうふは長持ちするから、大きなトラックで小売店に運べる。すなわち流通効率がよくなり、小売店はますます相模屋の商品を仕入れるようになった。こうして、鳥越はおとうふの市場を一気に変えていった。

 彼は「その過程で“常識のアップデート”を繰り返すことが重要だった」と話す。

 「以前はできなかったことが、自分でも気付かないうちにできるようになっている場合があるんです。例えば “3個パック”のおとうふがあります。個食化が進み、小分けにしたおとうふの方が使い勝手がよいため生まれた商品です。実はそれまで“3個パック”は絹のなかでも『充填とうふ』と呼ばれる商品しかなかったのですが、気付けば、木綿もつくれるようになっていたんです」

 「充填とうふ」は、豆乳とにがりをパックに封入し、熱を加えて固めればできあがり。全自動でつくれるから、3個パックにしても手間がかからず値段が高くならない。そして鳥越は、自動車や電車に乗っている時、たまに「常識のアップデート」を行う。昔はできなかったことができるようになっているのではないか? と検証する作業だ。すると彼は「木綿も全自動でつくっているんだから、うちなら木綿の3個パックもつくれるじゃないか!」と気付いた。

 新しいことを始めて成功すると、それにつれ、目の前に続々と「できること」が現れるのだ。

 だが、彼の話を総合すると別の感想もある。たしかに「常識のアップデート」は大切だ。しかし、多くの人はそもそも最初の飛躍――例えば「おとうふの生産にロボットを導入しよう」といった飛躍ができずにいるのではないか? 

 出会いの履歴書、第6回、鳥越氏インタビューの最終回は、彼独特の「新しい自分との出会い方」について記したい。

相模屋の「木綿3個パック」。「木綿VS絹 3個パック」も

背負っていた三重苦

 いったん、話を第三工場設立時に戻したい。

 この時、彼はいわば“三重苦”を背負っていた。まず、資金がない。次に、機械ができるかどうかわからない。最後に、その機械を運用できるかわからなかった。

 まずは資金だ。結果的に、地元の金融機関から年商を超えるほどの額を借りられたことを考えると、鳥越はよほど特別な事業計画書でもつくったのだろうか? いや、彼は「むしろできはよくなかったかもしれません」と話す。

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「「カッコ悪くていいじゃないですか!」」の著者

夏目 幸明

夏目 幸明(なつめ・ゆきあき)

企業ジャーナリスト

1972年生まれ。愛知県出身。早稲田大学卒業後、広告代理店入社。退職後、ビジネス系の記事を中心に経済ジャーナリストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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