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ゴジラ対「ビジネススーツ・ビルディング」

ランドマークが消えた東京にゴジラが立つ

  • 五十嵐 太郎(東北大学大学院教授 建築史・建築批評家)

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2016年9月2日(金)

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日経ビジネスオンラインでは、各界のキーパーソンや人気連載陣に「シン・ゴジラ」を読み解いてもらうキャンペーン「「シン・ゴジラ」、私はこう読む」を展開しています。※この記事には映画「シン・ゴジラ」の内容に関する記述が含まれています。

©2016 TOHO CO.,LTD.

都市破壊の想像力

 「シン・ゴジラ」の映像としてのクライマックスは、通常の映画とは違い、ラストではなく、ゴジラが覚醒した中盤に訪れる。

 多摩川を防衛線とする自衛隊の作戦には反撃することなく、ただ歩き続けるだけだったゴジラが、米軍の攻撃には突如激昂し、身を悶え、口から火炎を吐いて、停電になった闇の東京を焼く尽くし、熱線によって超高層ビル群を切り裂き、爆撃機B-2を破壊。やがて完全に停止する。これまで「新世紀エヴァンゲリオン」の使徒や「風の谷のナウシカ」の巨神兵によって凄まじい破壊を描いてきた庵野秀明節が全開の、絶望的なまでに美しく、崇高なシーンだ。アニメで目撃した廃墟の風景が、実写の映画で再現されている。

 しかし、なぜわれわれは恐ろしく感じるのか。それは東日本大震災の後に日本で制作された初めてのゴジラであり、当然それを踏まえた作品になっているからだ。すなわち、われわれはわずか5年前、あのときに体験し、目撃したカタストロフを思い出していた。

 映画の序盤、海から出現し、無数の船舶をひっくり返しながら橋を壊して、呑川を溯上した後、蒲田で上陸して品川に向かう際にも、次々と路上の自動車を横方向に押しだしていく。これは巨大津波が東北地方を襲った風景そのものである。3.11以前のゴジラにはなかった破壊の想像力だろう。

 そして二度目の上陸、鎌倉から武蔵小杉を経て、都心に入ったゴジラは電線をなぎ倒し、一帯が停電になる。避難していた人々が一斉に悲鳴をあげる。おそらく、これは震災の夜、不安に怯えながら、明かりを失った東京を歩いて帰宅した記憶に接続するだろう。ゴジラが移動した経路沿いに放射線量が上昇し、人々がネットを通じて情報を交換する様子も、福島原発の事故直後に起きたことだ。ハリウッド映画のように、しつこいくらいにビルを破壊するシーンを見せなくても、映画の外部にある現実の記憶に触れることで、大きな効果をもたらしている。

 「シン・ゴジラ」は1954年に発表された第1作の「ゴジラ」が与えた恐怖を現代に甦らせた傑作だが、最初の「ゴジラ」を見た当時の日本人は、9年前まで経験した空襲の恐怖や焼け跡を想像したに違いない。そうした視点で振り返ると、アメリカ版の「GODZILLA ゴジラ」(20149も、最後にサンフランシスコでゴジラとムートーが対決する場面は、9.11の同時多発テロによって、世界貿易センタービルが倒壊する風景を想起させるものだった。

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