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『春と修羅』から見えてくるシン・ゴジラの核心

宮沢賢治と牧悟郎を結ぶもの

2016年9月8日(木)

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日経ビジネスオンラインでは、各界のキーパーソンや人気連載陣に「シン・ゴジラ」を読み解いてもらうキャンペーン「「シン・ゴジラ」、私はこう読む」を展開しています。※この記事には映画「シン・ゴジラ」の内容に関する記述が含まれています。

 映画「シン・ゴジラ」の物語の核心の1つは、冒頭にある。

 これを観る時点で、観客はこの物語がどう進行するのかを知らない。知らないままに、あからさまで、あまりに断片的なヒントを提示される。

(©2016 TOHO CO.,LTD.)

 そのシーンを振り返ろう。東京湾を無人で漂流するプレジャーボートに海上保安庁の職員が乗り込んでいく。その職員が撮影しているビデオカメラの映像が映し出されているという体裁だ(上図)。船の名は「GLORY MARU」。揃えて置かれた靴が残されており、テーブルの上には折鶴と詩集『春と修羅』が置かれている。船内の様子を映した数秒後、撮影している職員の悲鳴と衝撃とともに映像は途切れる――。

 映像を途切れさせた衝撃は、ゴジラ出現のそれであること。そして、消えた船の主が、ゴジラ誕生に深い関わりがある元城南大学統合生物学教授の牧悟郎氏であること。物語が進行していく中で、この冒頭の映像が示す事実が徐々に明らかにされ、物語の最大の謎の1つである「ゴジラはいかにして生まれたのか」に対する解にたどり着くためのヒントであることが匂わされる。

 この作品を複数回観る人が少なくないのは、物語に散りばめられたヒントを、中盤以降に明かされる情報を踏まえた上でもう一度観てみたいと思わされるからだろう。

 だが、意地が悪いことに、冒頭のシーンは、最後まで作品を観た者をしても容易に読み解けるように作られてはいない。と言うよりも、ひとつの正解に収斂されず、多様な「読み」に開かれている。だから、以下、ここに示すのは正解ではなく、与えられたテクストに対して可能な読みの1つの可能性であることをお断りしておきたい。

 ここで特に着目したいのは、クルーザーから忽然と姿を消す牧元教授がテーブルに置き去った1冊の詩集、宮澤賢治の『春と修羅』だ。

 岩手に生まれ、昭和初期に37歳で夭逝した天才詩人が残した唯一の詩集――作者が「詩集」と呼ばれることを嫌い、「心象スケッチ」という呼称にこだわったことを考慮すればこれを詩集と呼ぶことに抵抗はあるが、便宜上、ここでは「詩集」とする――が、この物語において意味するものとは何か。

 物語に交錯するもう1つの創作物『春と修羅』を読み解きながら、「シン・ゴジラ」の核心に挑んでみたい。

同時代に理解されなかった「春と修羅」

 「シン・ゴジラ」のエンドロールに、「資料協力」として日本近代文学館刊行の復刻版『春と修羅』が挙げられている。同じものと思われるものを入手した。復刻元の奥付に「大正十三年四月二十日発行」とあり、定価は2円40銭。著者は「宮澤賢治」、発行所には「関根書店」の名がある。賢治の地元である岩手県花巻で印刷されている。

復刻版『春と修羅』。1972年に日本近代文学館から「精選 名著復刻全集」として刊行されている。撮影に使われたのもこれだろう。本物の初版本は100万円近い値が付くとされている。

 大正13年は1924年。時代を超えて物価を比較するのは難しいが、当時の米価が10kgで3円50銭前後だったことを基準に、あえて乱暴に今の貨幣価値に換算すると、2000円から3000円程度になるだろうか。1000部刷られたが、売れたのは100部程度だったとされている。残りの在庫は賢治が引き取った。中原中也など文壇の一部に評価はされたが、この岩手に生まれた夭折の詩人は、同時代的にはほぼ理解されなかったと言っていいだろう。

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「『春と修羅』から見えてくるシン・ゴジラの核心」の著者

池田 信太朗

池田 信太朗(いけだ・しんたろう)

日経ビジネスオンライン編集長

2000年に日経BP入社。2006年から『日経ビジネス』記者として、主に流通業界の取材に当たる。2012年『日経ビジネスDigital』のサービスを立ち上げて初代編集長、2012年9月から香港支局特派員、2015年1月から現職

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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