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ゴジラは庵野自身であり、現天皇でもある

文芸評論家・加藤典洋氏に聞く(後編)

2016年9月15日(木)

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日経ビジネスオンラインでは、各界のキーパーソンや人気連載陣に「シン・ゴジラ」を読み解いてもらうキャンペーン「「シン・ゴジラ」、私はこう読む」を展開しています。
※この記事には映画「シン・ゴジラ」の内容に関する記述が含まれています。

(前編から読む

ゴジラとは一体?

 色んなものでありうる。日本人の「無意識の器」みたいな存在だといってよい。でも、今回はこれに加えて、これまでにない新しい意味をもつようになった。なんだと思いますか?

わかりません……

加藤典洋(かとう・のりひろ)
文芸評論家、早稲田大学名誉教授。1948年山形県生まれ。東京大学文学部卒。『言語表現法講義』や『敗戦後論』などで数々の文学賞を受賞。村上春樹など文学作品の分析から、戦後日本の思想・文学史まで幅広く専門とする。近著に『日の沈む国から――政治・社会論集』(岩波書店)。

 この映画に、宮沢賢治の詩集『春と修羅』が出てきますね。「いかりのにがさまた青さ/四月の気層のひかりの底を/唾(つばき)し はぎしりゆききする/おれはひとりの修羅なのだ」という詩句で有名です。『ボヴァリー夫人』を書いたフローベールという小説家が、「ボヴァリー夫人は私だ」といっているのですが、それと同じで、ゴジラは、その「修羅」でもある。つまり、作者の庵野(秀明総監督)ですね。彼は、あの映画で、「ゴジラは私だ」と言っている(笑)。

えっ。

 『シン・ゴジラ』には、ほぼ悲惨な姿の死体、負傷者が出てきません。1度だけ瓦礫の下に埋もれた犠牲者が見えたという話がありますが、それも、血は流れず、身体の一部が見えるだけのようです。これは災害時の日本のテレビ・新聞報道を正確になぞった表現ですね。明らかに意図的な演出でしょう。ではこれはなぜか。死者たちと負傷者たちはどこにいったのか。日本の主要メディア・エンターテインメント界の表現は、いまや自主規制の極致にあり、見えない文化的コードの制圧下にある。私はこれをひそかに「電通文化」と呼んでいますが、庵野さんはその強い文化的隷属のなかで魂を削ってきた表現者です。

死体は出てこない。血も流れない

どういうことですか?

 死体はいっさい出てこない。血もどこにも流れない。汚濁、見たくないものは全部、視界から隠され、抑圧されている。その抑圧されたものが全部、ゴジラに集約されている。そしてそのゴジラが、すべての画面に現れないものの体現者として、大量の血を流し、苦しみながら歩む。あれは野村萬斎の動きを記録してCG化したらしいですね。お金がかかっています(笑)。まさに「修羅」が「四月の気層のひかりの底を/唾し はぎしりゆきき」しているのです。

映画には、人間の死体や負傷シーンは登場しない。そのかわりにゴジラだけが大量の血を流し、咆哮する。(©2016 TOHO CO.,LTD.)

 あの映画の冒頭、ゴジラの名付け親ともいうべき牧悟郎博士という人物が登場して、まず、失踪しているのが発見されます。そしてそこに『春と修羅』の詩集が一つのメッセージとして置かれています。その牧悟郎博士の写真が一度出てきますが、これは先にあげた国難映画『日本のいちばん長い日』の1967年の旧作を作った岡本喜八監督なんですね。「私は好きにした、君らも好きにしろ」みたいな書き置きもそこに一緒に見つかる。つまり、これは「はい、そうしますよ」という庵野総監督のメッセージでもあります。

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「「シン・ゴジラ」、私はこう読む」のバックナンバー

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「ゴジラは庵野自身であり、現天皇でもある」の著者

藤村 広平

藤村 広平(ふじむら・こうへい)

日経ビジネス記者

早稲田大学国際教養学部卒業、日本経済新聞社に入社。整理部勤務、総合商社インド拠点でのインターン研修などを経て、企業報道部で自動車業界を担当。2016年春から日経ビジネス編集部。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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