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妄想:ゴジラが来たら東京都はこう動く(前編)

2016年9月26日(月)

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日経ビジネスオンラインでは、各界のキーパーソンや人気連載陣に「シン・ゴジラ」を読み解いてもらうキャンペーン「「シン・ゴジラ」、私はこう読む」を展開しています。
※この記事には映画「シン・ゴジラ」の内容に関する記述が含まれています。

内閣法第14条
 内閣官房に、内閣官房副長官三人を置く。
 (略)
 3 内閣官房副長官は、内閣官房長官の職務を助け、命を受けて内閣官房の事務(略)をつかさどり、及びあらかじめ内閣官房長官の定めるところにより内閣官房長官不在の場合その職務を代行する。

 『シン・ゴジラ』のストーリーの骨格は、法律でできている。

 主人公である矢口蘭堂内閣官房副長官(長谷川博己)の職務は、この内閣法14条に記載されている通りであり、映画評として誰もが口にする「リアルさ」は、ここに極まる。すなわち、ゴジラが現れてヤシオリ作戦を完遂させるまで、矢口の動きは最後まで、この条文に裏付けられているのだ。

ゴジラ上陸でまず最初に対応するのは国なのか、自治体なのか。c2016 TOHO CO.,LTD.

 庵野秀明氏の脚本は、「法治国家において、ゴジラに対して現行法でこれだけの対処が可能であり、これだけの限界がある」というシミュレーションを行っており、これがシン・ゴジラの脚本の背骨をなしている。

 もっとも、石破茂元防衛相が指摘するように、蒲田に上陸したゴジラ第2形態を「有害鳥獣」としながら自衛隊が防衛出動して火器を使用するとした設定はおかしいのではないか――。

 だが、そんな議論を、口角泡を飛ばして行いたくなるぐらい、庵野脚本はわが国が動く「しくみ」をよく研究し、危機に対して、日本がどう「即応」するのかをエンタテイメントとして描き出している。本作でゴジラは、第1形態から第4形態まで急激に進化していくが、実は内閣の危機管理もまた、事態の進行にともなって、あたかも「進化」するように規模を拡大していく。そのような様が見事にシミュレーションという手法で描かれているのである。

映画では描かれなかった、自治体の対応

 一方で、『シン・ゴジラ』では、自治体――すなわち東京都の「即応体制」についてはほとんど描いていない。作中では東京都庁第一本庁舎の防災センターで指揮を執る小塚東京都知事(光石研)が対処に戸惑う姿が映し出される。知事が自衛隊に治安出動を要請する重要な決断のときにも、米国はじめ世界各国がゴジラへの対処方針を決めた際に反対するくだりでも画面には登場せず、「こう言っている」とセリフで処理されてしまう。

 だがしかし。本当にゴジラが現れたなら、その東京都こそが最初に事態を把握し、前面に立って危機への即応体制をとり警察力・消防力を動かす自治体なのである。首都・東京都は人口、財政とも他の自治体を引き離す大きな力を持ち、よく「小規模な国家並み」だと言われる。警視庁、東京消防庁と飛び抜けた規模・能力の自治体警察・消防を擁し、震災対策を軸に危機管理体制を構築してきた。

 その内容は「東京都地域防災計画」にまとめられている。「震災・風水害・火山・大規模事故・原子力災害」に分かれ、東京都の防災ホームページで誰でも見ることができる。

 私は、東日本大震災直後の福島県郡山市に入り、原発事故で避難してきた人たちが2000人も詰め込まれた避難所「ふくしまビッグパレット」を取材した。通常は見本市の会場として使われるコンクリートの床に人びとが段ボールを敷いただけで横になっている様子をこの目で見、我慢強く、不平不満を口にしないように見える福島の人たちが、話をして感情の襞を一枚めくると、「見えない放射性物質」への恐怖におののく声を自分の耳で聞いた。

 一方で、避難元の町役場が、会議室を使って必死にその機能を果たそうと努力している姿も強く印象に残った。暴れる「フクイチ」への対応は国の直轄下で、東京消防庁をはじめ自治体消防、自衛隊による「決死隊」が組織されて行われていたが、別の意味で人びとを守るのは基礎自治体(市町村・特別区の最小単位)なのだと痛感した。

 4月頭、東京に戻った私は、月刊誌『東京人』2011年7月号の震災特集のために、東京都・警視庁・東京消防庁が実際に行った東日本大震災対応と首都直下型地震が襲った場合の即応体制について取材した。東京では、1923年に起こった関東大震災からの「69年周期説」に基づいて、1970年代から独自の震災対策を進めてきたが、阪神大震災をきっかけに直下型地震対策に舵を切り、即応体制を整えていた。それが地域防災計画となり、東日本大震災では十分に働いていた。

 シン・ゴジラは、見る人の経験・知識・問題意識によって、多様な読みが引き出せる映画だという。私もそう思う。そこで私は、映画と同じ手法で、「実際にゴジラが上陸してきた場合、東京都はどんな動きをするのか」を、これまでの取材を基に映画本編のストーリーに沿ってシミュレーションしてみたい。その下敷きになるのは「東京都地域防災計画 大規模事故編」である。

 まあ、言ってみれば妄想をするわけである。

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「妄想:ゴジラが来たら東京都はこう動く(前編)」の著者

髙瀬文人

髙瀬文人(たかせ・ふみひと)

フリージャーナリスト/編集者

1967年宇都宮市生まれ。法政大学法学部卒業後、三省堂や日本評論社を経て2008年に独立。月刊『FACTA』で司法や事件の記事を、『東京人』にルポルタージュから趣味性の高い記事までを執筆。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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